『デウスの棄て児』の後、

『カルプス・アルピス』

を出しました。

 

小学館の漫画雑誌に

連載した小説に、

長いあとがきを

つけたもので

実は、このあとがきが重要、

あとがきの為に小説がある――

という変な作品です。

 

関西時代の

友人であった画家の田仲容子さんの

絵からインスパイアされて綴った物語。

 

田仲さんは

赤松玉女さん、マツモトヨーコさんと共に

アルテイジアというグループを組み

合同展覧会をやることもよくしていた。

 

僕は

赤松玉女さんの絵が好きで

常設してある四条の梁画廊という

現代美術のギャラリーに

高校生の頃から出入りし始め

自分もイラストを描いていたので

オーナーから

「個展をやってみない?」

言われ、1987年、

いきなし個展をやってしまったのでした。

まだ18歳、大学に入ったばかりでした。

 

その頃に田仲さんに出逢ってるのか

その後に出逢うことになるのかは

よく憶えていないです。

 

1996年、田仲さんは33歳の若さで

恋人と旅行した

中南米で事故に遭い、死去しました。

 

そのあたりは

あとがきにありますので

詳しく語りますまい。

 

 

今、思えば、蒼が基調の

不思議な浮遊を醸し出す絵と

同じよう、

生命力が希薄な人であった気もします。

 

しかし、

自分のあとがきを読み返すと、

厭世的でもなく、

生活力がないでもなく

逆に、生きることに常に前向きな

人であったのが解ります。

 

居を東京に移し、

売れている画家のアシスタントを

やり生活費を稼いだり、

ショボい公募展に

作品を出して、

賞金を得ようとしたり……。

 

田仲容子は天才――

と、早くから

評価を受けていたのに。

 

僕は何時だって、

すぐに死ぬことを考えてしまう。

 

生きているのが面倒臭くて、

この世界が

我慢ならないくらい、

煩く、厭らしく思え

一秒でも早く、

いなくなってしまいたい

そんなことばかり、

思ってしまう。

 

無計画に生きたのは

30歳まで生きている筈ないと

信じていたから。

その後40歳を迎える

筈はないと、

また、無計画に過ごし……。

そして、

50歳を過ぎました。

 

こんな僕が

生存しているのに

田仲さんは、いない。

彼女ばかりでなく、

もうこの歳になると

沢山の友人達が先に逝っています。

 

中井英夫は、晩年、

世界に反抗する為に長生きする

天皇よりも長く生きる――

それが

私の復讐だ――といいました。

 

 

彼女が死去したのを受け

仲間達が、画集を作りました。

暫くは、回顧展も

行われていた。

 

でも、もう今、

彼女の作品を観れらる

機会はほぼありません。

 

https://plaza.rakuten.co.jp/matsumotoyoko/diary/200411120000/

 

マツモトヨーコさんの

この記事(2004年)より後のものは

見付けられませんでした。

大々的に回顧展が開かれたのは

これが最後なような気がします(未確認)。

 

『それいぬ』を上梓する時に

友達ならシンボルマークを作れと

只でクウィーンスカルを描かせた

杉本ゆう子は同い歳なのに

とっくに死んでしまった。

癌でした。

 

どうして僕は生き残っている?

 

薬物で投獄されたり

破産して借金まみれになったり、

 

嗚呼、僕の読者だってもう

沢山、この世を

旅立ってしまっているのだ。

 

僕よりも

生きる価値のある人

否、生きることに価値を見出し

必死に生きてきた人が逝き、

そして、今、この時間にも

生と死の狭間で憂鬱と不安に苛まれ、

魂をすり減らしている

君がいるというのに、

僕ときたら、

確定申告をし、

還付金が戻れば、

何を買おうかと

ヤフオクを

閲覧し続けている。

 

もう最後だと

何時も作品を脱稿したなら

決意する。

死なずとも――いなくなろう。

誰も知らない処で

ひっそりと暮らそう。

 

それだけど、

また書いてしまう。

今年の冬は寒くて嫌だ

早く春になればいいのにと願うのだ。

 

中井英夫のように

世界に反抗する為に長生きする

決意も、持てぬまま

出版社から転送されてきた

バレンタインディの

チョコを貪り食っているのだ。

 

自己嫌悪を抱くこともせず。

 

 

荒廃した生活をみかね

約7年前、京都の実家に連れ戻されました。

それからすぐに、おかしな夢をみました。

 

巫女さんが告げる。

「神様からの伝言です。

もう少しだけ

貴方を贔屓し続けることにしました。

いわば、更新です」

 

恐らく、そういう訳で

僕は生きています。

 

頑張りもせず

殊勝な行いもせず

神様の贔屓に甘えて、

生きさせて貰ってます。

 

否、忘れられるのが嫌だから

まだ、生に

しがみついているのかもしれません。

 

死後に全集を出して貰うよか

来年のバレンタインにも、

チョコレートを一杯、貰いたい。

来年は55歳だけど、

まだ、ロリロリしていたい。

君からのお手紙も、読みたい。

 

 

 

 

『カルプス・アルピス』は

田仲さんの絵をカラーで多く

使っているせいか

文庫にならず、単行本も絶版、

数年前、小学館から

倉庫に余った最後の10冊を貰いました。

 

いい機会なので売ります。

 

プレミアは付けませんが

オマケ付きバージョンも出して

少し商売をします。

 

買いたい春のお洋服があるのです。

 

嶽本野ばら2022 カプセルコレクション

 

https://fril.jp/shop/novalaza