まず蛇口を閉めなければ、「殺処分ゼロ」のスタート地点には立てないのです。


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●「殺処分ゼロ熊本」の葛藤

 ここ何回かの記事で触れてきましたが、保健所や愛護センターには、毎日職員さんたちと共に、朝から晩まで泥まみれになり、体をはって収容犬たちの世話をしている保護現場の、無償の愛護団体やボランティアさんたちが活動しています。犬たちのウンチを拾い、犬舎の掃除をし、犬たちの散歩をし、山積みになった犬たちの食器を洗い、くたくたになった体で、犬猫たちの里親募集を呼び掛けています。

 

 熊本は、県も市も、殺処分ゼロを目指して、ぎりぎりのところまで踏ん張り、頑張り続けてきています。何度も何度も書いていますが、保健所もセンターも、超過密状態です。犬猫の収容が止まらないのは、保健所やセンターのせいではありません。殺処分がやむを得ないのは、保健所やセンターのせいではありません。

 県センターのfacebookでは、泣き言は一切なしで、明るい、楽しい話題に絞って投稿されていますが、現実には現場の人間たちの疲弊は言葉では言い表せないものです。元県センターボラとして私は、「こんなに大変な状況なんだ!」と繰り返し書いていますが、私が書かなければみんな黙ってひたすら耐えている。どんだけ辛抱強いひとたちなんだ、と私なんかは思います。そして超過密状態の中では動物福祉も不可能で、ストレスの中で生かされている犬たちの苦しみも想像を絶するものです。

 

●こんなあなたは「動物愛誤」

 そんな保護活動現場で体を張っているボランティアたちと、一緒にして欲しくない「愛護」の人たちが存在します。1)は実在の一般飼い主の事例ですが、2)と3)は、自分は動物愛護活動をしていると信じていると思います。

 

1)自分の犬猫を、「飼えなくなったから」と愛護団体に押し付けようとし、断られると逆ギレする人

2)愛護団体に向けて、「どうか助けてください!」ばかり叫んで自分はなにもしない人

3)保健所や愛護センターに「殺処分しないでください!」「助けてください!」と電話をかける人

 

 はっきりいって、反吐が出ます。

Twitterを見ると、保健所や愛護センターに電話をかけることを呼びかけているひとまでいます。#熊本 #殺処分 で検索すれば出てきます。

 そのせいで、熊本市愛護センターの電話はパンク状態となりました。

現場で毎日働かれているボランティアさんの緊急の電話も繋がらず、里親希望の方の電話も通話中で繋がらないという状況に陥っています。その間、犬たちの世話も出来ないでしょう。

 大分市動物愛護センターが、熊本市長から依頼があれば殺処分対象の犬を引き取るらしい!という情報まで拡散しており、大分市にも多大な迷惑がかかっていると推測されます。

 誰か問い合わせた人がいたんでしょう。

そして、「市長から依頼があれば」と言われたんですね?

あなたじゃなくて、市長が依頼するならば、ということでしょう。そして、熊本市長はそんな依頼をするはずがありませんので、体よく断られたことに気づきましょう。

 馬鹿な情報が、さも鬼の首をとったように拡散していく様は恐ろしいものがあります。

 

なにがしたいんでしょう。

「殺処分するな!」と叫ぶことはそんなに気持ちがいいですか。

現場を見たこともない、自分が保健所やセンターで犬たちの世話をするわけでも、犬を引き取れるわけでもないのに。

 

 中には、熊本から里親になってくださった方も混じっているようですが、それならば猶更、犬たちを必死で守っている現場の足を引っ張ってはいけない。

「私は熊本の現場、行ったことあります!」と言いますか。

何時間いたんでしょう。SNS映えする写真が撮れて帰りましたか?

最低でも1週間程度は連続してボランティアしてみたらどうですか。

365日、朝から晩まで、生身の犬猫たちの世話をしている現場のボランティアさんや職員さんたちと、腹を割って話をしてみたらどうですか。

そのうえで、現場の足を引っ張ること(電話攻勢)が正しい、と判断されるならもうどうしようもないでしょうね。

 

 繰り返しますが、熊本は県も市も、殺処分ゼロを目指しています。

殺処分をしないですむように、毎日毎日、努力してこられています。

譲渡会も開催しています。保護犬猫を迎えて!と呼びかけています。

 そのうえで、もうどうしようもない状況に陥っている。

それは出口の問題ではないでしょう。


まず蛇口を閉めなければ、「殺処分ゼロ」のスタート地点には立てないのです。



それなのに、なぜ、出口ばかりを苦しめるのか?

それは攻撃しやすいからです。攻撃が簡単だからです。苦しめやすいからです。

「攻撃していない。殺処分しないで、とお願いをしている」と言いますか?

攻撃と同じです。実際に迷惑をかけているのだから。

 

 街を綺麗にしようと、善意で空き缶を拾い続けている人間がいます。

そこへ、「あそこに拾ってるひとがいるから」と

どんどん空き缶を放り投げていく人間がいます。

拾い続けている人間はもうへとへとです。

自分の時間、体力、私財、多くのものを費やして拾っています。

それでも空き缶を投げつけていく人間は減りません。

これからも増え続ける対策のために少しでも減らそうとすると、

なにもしない人間が「減らすな!まだまだ拾え!拾い続けろ!」

と攻撃してきます。

「お前たちは拾い続けるんだ。私はなにもしないけれど」

 

素晴らしいですね、「殺処分ゼロ」。

 

「保健所や愛護センターに、殺処分をしないように電話をしましょう!」

この呼びかけに応じないでください。

現場で汗水流している人たちのことも、犬たちのことも考えていない。

自分の欲求を満たしたいだけ。

はっきり言って、ただの自慰行為です。

自慰行為を人前で晒していることと同じです。

そんなこと書いて恥ずかしくないのか?

ご冗談でしょう。やってるあなたに比べればマシです。

この呼びかけに応じることの恥ずかしさを、知ってください。

今後、呼びかけている人がいたら、「ああ、自慰行為の人」と思ったらいいと思います。

 

「殺処分ゼロ」の夢を叶えるためには、蛇口を締めなければどうにもならないことは明白です。

蛇口を締めることが出来ないのは、私たちすべての人間の責任です。

ペットショップで買う人を減らせない。

捨てる飼い主を減らせない。

避妊去勢しない人を減らせない。

無責任な餌やりを減らせない。

一方的に、行き場のない犬猫たちを請け負って限界に来ている出口を責めるのではなく、「蛇口を締める」活動に転換されることを切に望みます。

 

 以下、熊本市愛護センターで実際に活動されている愛護団体さんのブログリンクです。

自分たちがどれほどの迷惑をかけたのか、恥を知るべきです。

にゃわんさんは、私のように過激なことは書かれませんが、本当に迷惑を被っているのは、これまで10年かけて、じっくりじっくりと行政との信頼関係を築き上げてきた愛護団体さんたちです。今回の電話攻撃のせいで、今後、行政からの情報公開が制限されたら、救えるはずの命も救えなくなります。その責任をとれるのかどうか、よく考えて欲しいと思います。

 

お願いです(チームにゃわん