決勝大会、
一番最初に会場にやってきたのは
三菱養和サッカークラブ巣鴨Jrの
大槻邦雄監督でした。
まだスタッフのミーティングが行われていた7時過ぎ、
1人じっとピッチを眺めていらっしゃいました。
三菱養和サッカークラブ巣鴨Jrは第1試合。
「関東のチームはどうしても夜型なので」
と朝一番の試合に力を発揮すべく、
この1週間は9時から練習を組み、
選手たちを慣れさせたそうです。
そのおかげでしょう。
しばらくしてやってきた選手たちは元気いっぱい。
監督が「みんな朝起きれたか?」と聞くと
「目覚ましですぐ目が覚めました」
と大声で答えていました。
すると監督は
「オレは自分から目が覚めたぞ!」
と胸を張っていましたが、
それって監督が一番張り切っていた
ということなのでしょうか……。
監督といえば、
ユニークな指導は
SSS札幌サッカースクールの
鈴木政裕監督。
初戦、0-1で負けて残り時間が少なくなる中、
ゴール正面で絶好のFKを得ます。
それまで何も言わずに座っていた監督が
すっくと立ち上がると大きな声で一言。
「おい!! リラックス!!」。
そこで選手たちはふと我に返ったのか、
見事にこのFKを決め、
その後逆転に成功しました。
大会中で一番目だった指示だったかもしれません。
目立ったといえば、
手の込んだドレッドロックヘアで輝いていたのが、
横河武蔵野FC Jrの長澤タファリ選手。
他のチームの選手から
「君ってモデルじゃないの?」
と話しかけられるなど人気ぶりでした。
その長澤選手、
朝9時30分の時点でもうヨーグルトを4つ食べ、
「一番美味しかったのはぷるぷるしていた桃でした」
とニコニコ答えてくれました。
この2日間にダノングループが用意したのは、
ヨーグルト8880個とエビアン3400本。
ヨーグルトは5種類で、
プレーン・加糖、
いちご、
もも、
バニラ風味、
それから前週に発売されたばかりの
フルーツガーデン。
この会場で人気だったのは、
バニラ風味とフルーツガーデンで、
いちごも安定した人気を誇っていたようです。
ヨーグルトもエビアンも
次々にみんなの喉に消えていきました。
もっとも、食べ過ぎを恐れて監督たちから
「試合の後だけ食べていい」
と言われていた選手も多かったようです。
選手たちはきっとヨーグルトを食べて
気持ちを切り替えていたのでしょう。
特にPK戦で失敗した選手は
責任を痛感して泣きじゃくる子が多かったので、
食べたほうがよかったでしょうね。
そのPK戦で失敗したけれど、
泣かずに前を向いたのが
大阪市ジュネッスFCの工藤優真選手。
凛々しい態度に感銘して話を聞いてみると
「悲しかったです……」
と最初に語った後、ぽろぽろと涙が。
みんなの前では我慢していたのですね。
でも落ち着いた後に、
「ボールを取られなくて
いいパスを出す選手になりたい。
あこがれの選手はシャビです」
と答えてくれました。
大阪市ジュネッスFCは
まだ勝ち上がったほうでした。
大会が進むにつれて
次々に敗退していくチームが増えます。
決勝大会では1日目で12チーム、
2日目の試合でも4チームが
来年のシード権争いから消えてしまいます。
ダノンネーションズカップでは、
そんなチームのみんなで
「DNCフレンズ サッカー交流会」
を開催しました。
他のチームの選手たちと新しいチームを作り、
ドリブル競争をしたり
ミニゲームやシュートアウトをして
順位を競うのです。
ポイントをためていって
優勝チーム28名には景品が渡されるとあって、
敗退が決まってしょげていた選手たちも、
この場に来ると元気を取り戻していました。
「この元気さがあれば
試合に勝てたと思うんですけどね……」
とぼやいている監督さんもいたくらい、
元気あふれるピッチでした。
この大会で一番元気あふれていたのは
ヴァンフォーレ甲府U-12だったかもしれません。
チームができて4年目、
去年は決勝大会に出たものの、
シード権は確保できず、
今年は予選大会からの参加となりました。
その予選大会でも
決勝大会進出チーム決定戦をPK戦の末落とし、
失格チームが出たために
決勝大会に進出できたのです。
一度は諦めかけた夢を
もう一度追いかけられるとあって、
欲のない子どもたちが
張り切ってプレーしていました。
そして勝ち上がり、
とうとうベスト4に進出です。
準決勝の相手は名古屋グランパスU-12。
日頃から交流のあるチームです。
2度リードされ、2度追いつきました。
そしてPK戦。
なかなか決着のつかない長い勝負になりましたが、
最後はセーブされて夢は潰えました。
「残念でした。
ここまで選手が頑張ってくれたので
先に必ずつながると思います。
こういう舞台で名古屋と
試合ができてよかったと思いますし、
光栄でした。
先輩たちが造ってくれたこの道を
後輩たちが乗り越えて行ってくれればいいと思います」
西川陽介監督は瞳を潤ませながらも
明るく話して3位決定戦の準備を始めていました。
勝者も輝くけれど、敗者も光を失わない
ダノンネーションズカップを象徴する
一コマだったと思います。
今年もそんなたくさんのストーリーが生まれた大会も
この日で終了。
そして新しいダノンネーションズカップ・ファミリーが
大阪、愛知、宮城、東京、
そして決勝大会の合計で
のべ2,594人生まれたのです。

