翌日、約束の時間の15分前にアパートの前に着いた。
丸刈りの頭のまま仕事に行けるはずもなく、結局有給を使わせてもらい、休んでしまった。
それどころかこの約束が無ければ髪が伸びるまで部屋から出れなかっただろう。
なぜ警察に行かなかったのか、わからない。
だが、多大なるショックを受けたのに変わりはない。
持っている帽子の中で1番深さのあるクロッシェを被り、マスクをした状態で外に出た。
もし知っている人に会った時のため用の変装だ。
…私………なんでこんなに汗かいてるんだろう…
夏場といえど、日が暮れ始めているのに、背中はびっしゃりと濡れていた。
きっと、この後起こることを意識的に想像してしまっているからなのだが…、認めたくはなかった。
自分にこんな癖があったとは、知らなかったからだ。
部屋の前まで行き、チャイムを鳴らすかどうか迷っていると、ドアを開けて男が出てきた。
「チャイム鳴らしたらよかったのに」
部屋に入る様に促され、昨日の部屋にあがる。
昨日と違うことは、自分の意思でこの場にいると言うことだ。
「適当に座ってて」
「はい………」
しばらくして戻ってきた男の手には、昨日使っていたであろうバリカンが握られていた。
それを見た瞬間、心臓が、ドクンと跳ねた。
「こんなこと聞くの変なんだけど…なんできたの、しおりさん。僕のこと嫌いだよね?昨日僕がしたこと嫌だったよね?」
「あ、あの…………」
「ん?」
「なんで……あんなことしたんだろう…って、気になってしまって……それに………その…約束したし………」
「僕は君のことが好きなんだよね、しおりさんのことが……あなたの綺麗な姿を髪を誰かに見せるのが嫌だった……だって、事実見惚れてる人だっていたからね」
「そんなこと…………っ」
「僕以外の人を魅了した…それがしおりさんの罰。お仕置きをした、ってこと」
「……………」
「これから伸ばすなら僕のために伸ばしてくれなきゃだめってこと、わかってくれたかな?」
「…………………」
「どうしたの?」
「そしたら………伸ばさない場合って…………」
「………ふふ、しおりさん、もしかして……僕に刈ってほしいの?」
唐突にそう言われ、顔が熱くなる。
「そうかぁ…断髪フェチだったのかぁ…それも切られる方の」
「ふ、ふぇち…っ!?ちが……っ」
「想像したよりずっと変態だったんだね、しおりさん」
「ち、ちがう…そんなんじゃ………」
「んー…じゃぁ、帽子を脱いで。それから服もね。全部脱いで。それで僕にして欲しいことをお願いしてみてくれる?」
「…………えっ…」
-----つづく-----