
英国で23日に実施されるEU離脱の是非を問う国民投票に対する先行き警戒感を背景に、リスク資産から資金を引き揚げる動きが強まった。外国為替市場では安全資産とされる円が買われ、一時東京市場としては約1年8カ月ぶりに1ドル=105円台を付けた。対ユーロでも大幅に円高が進んだ。
国債も逃避資金の受け皿となり、長期金利の指標となる新発10年物国債の流通利回りは一時マイナス0.165%まで低下(価格は上昇)し、前週末に続き過去最低を更新した。
株式市場では、円高を受けた輸出企業の採算悪化が意識され、自動車や精密機器の値下がりが目立った。景気動向に業績が左右されやすい鉄鋼株なども大幅に下落した。日米の金融政策を決める会合が今週相次ぐため、「投資家が買いを見送った」(大手証券)ことも株安に拍車を掛けた。
13日の東京株式市場では、日経平均株価の終値が前週末より600円近く下落し、1万6000円割れ寸前に迫った。英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票を23日に控え、神経をとがらせる投資家が多く、1ドル=105円台後半まで進んだ円高と相まって株価下落が加速した。市場関係者の間では「EU離脱が決まった場合、日経平均がさらに1000円以上値下がりすることも考えられる」(大手証券)と警戒を強める声も上がっている。
週明けの東京市場では、英国での一部アンケート調査でEU離脱派が残留派を10ポイント近く引き離したと伝えられたこともあり、動揺が広がった。離脱が現実になれば「投資家の多くは経済的な混乱を想定し、短期的にリスク回避の姿勢を強める」(銀行系証券)との見方が支配的だ。
英国の欧州連合(EU)離脱懸念を背景としたリスク回避の動きが加速している。14日の東京株式市場では日経平均株価が4月12日以来約2カ月ぶりに1万6000円を割り込んだ。欧州ではユーロ圏で安全性が高いとされるドイツ国債に資金が集中、長期金利が初めてマイナスとなり、外国為替市場でも円高が進んだ。
日経平均の終値は前日比160円18銭安の1万5859円00銭に下落した。出来高は概算で19億7600万株。
一方、安全資産とされる債券は値上がりし、長期金利の指標となる10年物国債の利回りは3営業日連続で過去最低を更新した。
世界的な株安が続く中、東京株式市場では自動車や電機など輸出関連株を中心に値下がりした。日経平均の下落は4営業日連続。
市場関係者の間では、「株価下落と円高が続けば、日銀が15、16日に開く金融政策決定会合で追加金融緩和に踏み切る」(国内運用会社)との見方も浮上。マイナス金利幅の拡大が業績悪化を招く大手銀行株も軒並み売られた。
東京債券市場では一時、10年物国債の利回りが前日比0.010%低下(価格は上昇)のマイナス0.175%を付け、過去最低になった。
15日の東京株式市場は、為替相場の円高一服を好感した買い戻しが入り、日経平均株価は前日比60円58銭高の1万5919円58銭と、5営業日ぶりに反発した。ただ、英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票への懸念は強く、上げ幅は限られた。出来高は概算で19億3800万株。
東証株価指数(TOPIX)も5.18ポイント高の1277.11と5日ぶりに反発。
東京債券市場では、長期金利が4日連続で過去最低を更新した。英国のEU離脱懸念から投資家がリスク回避の姿勢を一段と強め、逃避資金が債券市場に集まり、長期金利の低下に拍車が掛かった。長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは、前日終値より0.025%低いマイナス0.195%まで低下(債券価格は上昇)した。
17日の東京株式市場は、円高の進行が一服したことを背景に買い戻しが優勢となり、日経平均株価が反発した。終値は前日比165円52銭高の1万5599円66銭。出来高は概算で23億9700万株。上げ幅を340円超に広げる場面もあったが、英国の欧州連合(EU)離脱問題への不透明感が根強く、取引終了にかけて伸び悩んだ。
東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=104円台後半、1ユーロ=118円台前半まで軟化。株式市場で輸出企業の収益悪化懸念が和らぎ、自動車など関連株が値上がりした。
英国でEU残留支持派の女性議員が銃撃され死亡したことで、市場では「残留支持に世論が傾く可能性がある」(銀行系証券)との思惑も広がった。これを受けて一時的に買い戻しが活発化したが、国民投票結果を「見極める必要がある」(大手証券)との声が多く、積極的な買いは手控えられた。