デンマーク・ハンドボール観察日記 -5ページ目

デンマーク男子、オリンピックで金メダル獲得!


OL2016

 

ヨーロッパ選手権であまりにも失望し、ハンドボール観戦の意欲も失いつつあってすっかりご無沙汰していたが、久々に感動したので投稿したいと思う。

 

デンマーク男子が、初めてオリンピックで金メダルをとった。

オリンピック前まで、いや、リーグ戦途中でも、今回もまたデンマークは振るわないだろうと悲観していただけに、決勝戦の奮闘ぶりに感動し、ハンドボールファンになって7年半にして初めて号泣してしまった。

 

デンマークは、20132014年連続で国際大会で決勝戦まで行きながら、最後に大敗するという無様な結果が続き、さらに20152016年と準決勝にさえ進まないという結果で終わっている。

しかも、オリンピックに至っては、20082012年とヨーロッパ選手権で優勝しながら、その半年後のオリンピックで準々決勝で敗退している。

もっとも、2013年からの世界選手権でもそうだが、オリンピックもリーグ戦のあとは直接トーナメント戦になるので少々トリッキーである。

オリンピックは特に12チームしか参加国がなく、トーナメント戦でいきなり8強なので、いくら一位でリーグ戦を突破したとしても、準々決勝で敗退する可能性だってなきにしもあらずである。

 

しかし、今回は、リーグ戦であきらかなグループ間の不均衡がみられ、それがむしろデンマークにとって幸いしたといえるかもしれない。

A フランス、デンマーク、クロアチア、カタール、アルゼンチン、チュニジア

B ドイツ、ポーランド、スウェーデン、スロベニア、ブラジル、エジプト

明らかにAグループのほうが強豪揃いにみえる。

しかし、そのかわり、トーナメント戦の初戦は一位チームさえ避けられればあとはほとんど違いはないと、グループで3位までに入れればいい、くらいに考えていたのだろうと思われる。

 

対カタール戦での苦戦は予定外だったかもしれないが、最終戦前にしてBグループでスロベニアが2位になる可能性が濃厚になると、むしろ3位になりたいと、リーグ戦最後の対フランス戦ではわざと負けたがっているのかと思うほどのやる気のなさで、第一キーパーのランディンも途中で交代したのである。

その甲斐あって3位になり、準々決勝で対スロベニア戦で楽勝し、念願だった準決勝に進んだ。

準決勝戦の対ポーランド戦は、デンマーク時間夜中1時半スタートで、ビデオをみながらなんとか起き続けで観戦し普通だったら寝落ちするのに、目がギラギラするほど常にデッドヒートを繰り返すエキサイティングな試合展開になったのである。しかも、最後の15秒でデンマークの1点リードでやっと眠れると思いきや、最後の3秒で同点にされ、延長戦へ。これもまた寝落ちすることはなかった。最初の5分で3点リードし、あとの5分で1点も入れなかったがなんとか守りきって、歴史的なオリンピック初の決勝進出になったのである。

 

ポーランドだったら勝つよね、と思っていたのにやはり苦戦したので、強豪フランスに勝てるとは到底思えなかった。しかもハンドボールファンになって7年半、一度もフランスに勝利したのをみたことがない。唯一2011年の世界選手権で延長戦にもつれこむ大接戦を繰り広げたが、それ以外は大体フランスの強さにひるむパターンだったような気がする。ちなみに、2007年からデンマークは一度もフランスに勝ったことがないらしい。

 

なので、別に勝たなくてもいい、せめて決勝戦らしい試合になってほしいと思っていたが、なんとデンマークはキーパー抜きの7人攻撃という作戦を導入したのである。

この大会では、キーパーのかわりに一人キーパーと同じ色のユニフォームを着る、というルールがなくなり、そのかわり誰もゴールに入ってはいけなくなったので、かなりリスキーな作戦である。ひとたびボールをとられてしまえば、誰もそれを止めることはできない。ひとり2分退場しているときにキーパー抜きになることは常套手段であるが、揃っているのにキーパーを外すことは滅多にない。

案の定、空のゴールにボールをほうりこまれたり、すぐ速攻で攻められたりと不利な場面もみられたが、確かに7人入り、二人ポストバックがスクリーニングかけるだけあってスペースができやすく、今までのようにフランスのカラバティッチ兄弟センターディフェンスの壁を前に攻められない、ということはなく、まぁまぁ対等にデンマークもシュートを決めるのだった。

結果的に、17分ごろに2連続で空ゴールにシュートされてから6人に戻ったが、デンマークの本気さを見せるには充分効果のある作戦だったと思う。そのあとも、デンマークは変わらず攻め続け、前半は16142点リードで終わったのである。

後半もリードしたまま、48分でなんと5点差までひらき、これはこれはもしかして???という期待も芽生えた。残り3分で1点差まで縮まったときには、やっぱり逆転されるのかな?と思ったが、意外と落ち着いていて、攻めも守りもそつがなく、残り1分、2点差リードでデンマークボール、これは勝つだろうと確信した。残り30秒でメンサがシュートを決めて2825になったときに、涙が出てきた。残り5秒でCasper Mortensenが意味なしスライディングをし、2826で見事デンマークが勝利したのである。わたしは号泣号泣号泣であった。

 

ハンドボールをみて嗚咽するほどの大泣きしたのは、これが初めてである。

それは、ここ数年ずっとデンマークの負けメンタリティに辟易していたのが、この試合で久しぶりに勝つんだという気合いがみられて感動したからである。

今日読んだ新聞で、監督の「あれ(7人攻撃)は、計算された失敗と言われるかもしれないが、わたしはただ決勝戦の参加者で終わりたくなかった。本当に勝ちたかったし、それができるんだということを示すことができたと思う。」ということばをみて感動した。まさに、「決勝戦の参加者」は、2013年と2014年のことをいっているのだろう。2014年は生観戦したので、フランスに圧倒されるばかりでまったく勝つ気のないデンマークの姿勢を目の当たりにしただけに、まさにわたしが欲しかったものを監督はなんとか取り戻そうとしたんだな、と思った。

もっとも、客観的にいえば、フランス自体の力も2年前に比べてかなり劣ったと言わざるを得ない。39歳のキーパーと36歳のバックをフルで使うこと自体間違っている。

その点デンマークは左バック以外いい感じで世代交代できていて(さすがにKasper Soendergaard引退させようよ。。)、メンタリティさえ強化できればトップを維持できるであろう。

「Bチーム」ドイツの優勝

まさかまさかのドイツ優勝!

ただでさえこれといった選手がいないのに、主力2人も欠いて優勝どころか準決勝戦に進むことさえ予測していなかったので、予想外の快挙である。

意外とよかったドイツのキーパー、決勝で最優秀選手に選ばれたのだが、この夏にキールに移籍するそうで、Niklas Landinのスタメンの座も危ういのかも?と言われるようになったほどである。

まさにそのキール所属の主力選手二人しか知らなかったので、彼らが抜けてからはドイツをみても誰が誰だかまったく認識できず。それもそのはず、彼らのほとんどがチャンピオンリーグにも出ないようなブンデスリーガ中堅クラブ所属ばかりなので、みる機会がなかったのである。というか、上位クラブにいるいつもの代表スタメン選手の多くが故障で大会に出られずで、いわば「Bチーム」と揶揄され、本命から程遠かったらしい。

決勝戦の対戦相手スペインは好きなこともあるが、いずれも有名クラブ出身ばかりの逸材揃いで、デンマークの次に把握しているチームだが、ドイツ相手にウンともスンともいわず。。

おととしのデンマーク対フランス戦ほどとは言わないが、最初からまったく勝てる気配を感じさせないダメダメさだった。

 

それにしても。。。

今回は、本当に驚きの大会だった。というか、わたし的には失望の大会だった。

 

デンマークは、二次リーグ一戦目で対スペインで快勝し、一気に準決勝戦進出にはずみをつけたものの、2日後の対スウェーデン戦で、翌日のドイツ戦に備えるべく、Mikkel HansenNiklas Landinの出番を極力控えさせたため、勝てない試合ではないのにイマイチしっくりこないまま、結局引き分けで終わってしまった。今思えば、次のドイツ戦を捨ててでも、勝つ試合をするべきだったのだが、結果論である。

そして、20時間しか休みがなかったデンマークに対し、まる3日も休んだドイツとでは、明らかに疲れの差がみられ、デッドヒートを繰り広げながらもデンマークのほうが劣っているように思えた。後半などは、走れなくて速攻がまったくできない有様。

そして最終的にはデンマークが根負けし、最後の最後で負けてしまった。

そのあとスペインが勝ったため、デンマークは準決勝に進出ならずだった。

 

そのときは、同じグループでスケジュールが違うなんて不公平だ、と思っていたけれど、一番の敗因は、デンマークの選手層が薄かったことであると思う。

バックの選手はMikkel HansenMads MensahMads ChristiansenMikkel Damgaardのヘビロテで、Rasmus Laugeでさえ出番は少なく、Pater Ballingに至っては一体あなたはいるんですか?というほど、最後の試合まで一度も出てくることはなかった。ポストバックのAlexander Lynggaardもしかりで、ディフェンス要員のKlaus Thomsenは一度も出番がないまま大会途中でデンマークに帰されてしまった。

ただでさえ少人数でまわしているのに、二次リーグは4日間に3試合というハードスケジュールで、選手たちも疲弊するはずである。

まぁ、より選手層の厚いスペインでさえ(バックはEntrerriosMaquedaCanellasGarciaDujshebaev5人がメイン。しかしポストバックはほとんどAguinagaldeのみ。)、デンマークと同じスケジュールで決勝まで行ったものの、最後の決勝ではボロボロだったので、やはり過酷ではあったのだろうが。

 

ポーランドと準決勝まであたらないグループの勝者デンマークとスペインだけがこのスケジュールだったので、これも準決勝で有利にするためのポーランドの陰謀だと思い、しかもフランスでさえ二次リーグの最終戦でノルウェーに負け準決勝に不進出になったので、これもポーランドの優勝に導くためにレフェリーにバイアスをかけさせたか?と勘繰ったが、なんと、ポーランド自身が対クロアチア戦で14点差で大敗を喫し、結局7位で終わったのである。

有力候補のフランス、ポーランド、デンマークが二次リーグで敗退し、スペイン、クロアチア、ドイツ、ノルウェーが準決勝に進出した。

ドイツも意外であったが、ノルウェーが二次リーグでフランスにさえ勝利しグループ1位になったのは大快挙というべきであろう。前回の欧州選手権では14位だったし、去年の世界選手権では予選さえ通過せず参加できなかった。というか、記憶にある限りノルウェーはそんな上位にあがってくるイメージはない。

結局4位でメダルは獲得できなかったが、これといった逸材がいるわけでもないのに、かなりいいまとまりをみせていたと思う。

 

しかし、やっぱりハンドボールは、「チーム」ゲームといえるのかもしれない。

スター選手に依存することなく、チームの力で戦ったドイツとノルウェーの躍進がめざましい大会だった。

おかげで、デンマークはオリンピックの予選グループ分けがかなり厳しいものになったが、予選では、一部の選手だけに依存するのではなく、より万遍なく選手をつかって「チーム」で戦ってほしいと思う。

デンマーク対スペイン

楽しみにしていた、デンマーク-スペイン戦、思ったよりもずっとエキサイティングだった。

早速元ハンドボーラーの秘書と話が盛り上がった次第である。

以前まで隠れオタクであったが、今や彼女の方がランチで話題にしたりするので、堂々とオタク話ができるのがうれしい。仕事中にも、ハンドボールのニュースをみせてくれるのがうれしい。。

 

一次リーグを終えた時点では、他グループの一位がポーランドになりそうだから、スペインに負けてもいいや。ドイツやスウェーデンには負けないだろうし、、と思っていたが、いろいろな事情でやっぱりスペインには絶対勝って欲しいと思うようになった。

 

1 なんとポーランドがノルウェーに負け、他グループは大混戦になり、どのチームが一位になるのかわからなくなった。フランスはポーランド戦以外すべて大勝しているので、おそらくノルウェーにも勝つだろうし、やはり一位になる可能性が大きくなってきている。

 

2 ドイツ、意外に強い。ロシアには1点差で勝ち、ハンガリーには10点差で勝利。この時点で勝ち点は6ポイント。しかも、ドイツ戦はスウェーデン戦のたった20時間後にあるので、デンマークは疲労困憊で不利になる可能性がある。もしスペインに負けてドイツにも負けたら、当然準決勝には進めなくなる。

 

どうもUlrik Wilbekも文句言っていたが、グループ一位のデンマークとスペインだけが、一次リーグのあと3日間も休みがあって、二次リーグが日曜日、火曜日、水曜日という不利な日程になっていると。Ulrikははっきり言ってなかったが、ポーランドと準決勝で当たるであろうチームに過酷なスケージュールにさせておいて、準決勝で勝ちやすくするための作戦なのかなとも勘繰るほどである。

 

まぁそういうわけで、スペインは好きだけど、デンマークを本気で応援していたのだが、、、

スペインは予想以上に強かった。

ディフェンスとキーパーが極めていいと聞いていたが、その強さはわたしの予想をはるかに上回るほどであった。

確か前半だけのスペインキーパーの防御率は50%を超えていたと記憶している。でかいし、何よりも柔軟。バレリーナですか??と思うほど開脚レベルは格上。足を振り上げて限りなく頭に近づけられる柔らかさである。

スペインは、わたしの大大好きなCanellasはもちろんのこと、Raul EntrerriosMaquadaAguinagaldeTomasUgalde、守りにMorrosと最高のラインナップだったが、今回ばかりは彼らが憎かった。

ふだんはかっこよくて好きなRaulだが、序盤でいきなり3点も入れたのにもムカついた。

ディフェンスとキーパーのよさでデンマークは攻めがまったくいいところがなく、なんと珍しく前半23分でDamgaardが登場。それでも結局1114で前半が終了した。

 

後半は、なんとMikkel HansenDamgaardが一緒に登場。彼らは同じ左バックでポジションが同じなため、いつもは交代で出ていたのだが、今回はMikkel HansenがプレーメーカーでDamgaardと異例コンビでプレーしたのである。

すると、これがかなりいいコンビで攻めに勢いが増し、またディフェンスとキーパーLandinがよくなったこともあり、前半とは明らかに雰囲気が一変した。

ディフェンスもかなり動きがよくなり、50分くらいからはディフェンスでボールで奪い速攻、というのが続いた。

結局2723で勝利した。

 

これは、最近の中でも観ていてもっとも楽しい試合だった。

実力が拮抗していたこともあるけれど、はっきりいってデンマークはプレーはかなりパーフェクトに近かった。というか、今ある実力よりも少し上くらいいっていたかもしれない。

それぐらいみていてきもちいい試合だった。

デンマークは、もはや準決勝に行ける!くらいの雰囲気でメディアがにぎわっている。

 

しかしまた状況が変わってきている。

1 ドイツの主力選手、WeinholdDissingerが揃って故障し、以降試合には出れないそうだ。Weinhold68週間の故障とか。たまたま観ていたロシア戦で最後の最後で倒れて足をひきずるようにして退場していくのをみたが、まさかそんなに深刻とは思わなかった。

ドイツ戦、なんだかんだ有利になるかもしれない。

 

2 ノルウェー、なんとマケドニアに引き分け。たぶんフランスには勝てないだろうから、準決勝に進むのはかなり厳しくなる。

もしポーランドがクロアチアに勝ったら、ポーランドが一位通過で、フランスが2位、引き分けか敗退したら、たぶんフランスが一位通過で、二位がノルウェーである。

クロアチアに是非とも勝って欲しいが、今のクロアチアはかつての強さがない。。開催国のポーランドに勝利するのはかなり厳しいであろうし、ノルウェーがフランスに勝利するという奇跡が起きない限り、クロアチアが準決勝に進むのは難しい。そこまでのモチベーションをもって試合をしてくれるかはわからない。

 

しかし、またどんでん返しがあるかもしれないし、とりあえず二次リーグの2試合を楽しみにしたい。