ヒゲを1週間ほど知らずに母にあった。
映画二百三高地を観た直後だったので、ヒゲの素敵な俳優さんたちに近づいたのではと、内心期待していた。
合ってすぐは、何も言われなかったが、晩御飯のときに、母はいよいよ我慢ができないといった感じで、「青カビチーズ」と言って笑った。
仕事柄外に出る機会のない私は、色白で、ヒゲもそこまで濃くはない。
白肌にまだらに生えるヒゲがカビのように見えたという。
恥ずかしいや憤りといった感情は一切なかった。
ただ、間違いなく自分の母親だなぁと、しみじみ思った。
その夜すぐヒゲは剃った。