俺は左翼も右翼も大嫌い。
偏ってれば、影で儲けようとしている連中に加担するだけだし。
それを考えると大学の農業経済論のゼミのT先生はリベラルだった。
俺は卒論で「長野の百姓一揆」を取り上げた。
長野は全国一百姓一揆が多発した地帯なんだ。
他のゼミ仲間はみんな当時の話題の
「日米牛肉オレンジ問題」
みたいな短期的なジャーナリズムに偏向した内容ばかりだったから異質だった。
「このテーマを取り上げただけ君を評価する」
という先生に
「それ、買いかぶりですよ」
と答えたっけ。
百姓一揆って、ドイツ農民戦争とかの比較しちゃいけないんだよね。
江戸時代は八割が農民で、支配階級である武士が一割ほか、工、商で一割という人口比率。年貢米という税収は、比較的安定していて、
とても農民が貧困とは思えずまただからこそ無知な層とは思えなかった。
あの百姓一揆の連判状とかに見られる辞世の句なんかは、
無学な人には絶対書けない句なんだよ。
あの頃の農民の知的水準の高さには舌を巻く。
青木村の義民伝の話なんか調べれば調べるほど驚くよ。
そこで気づいた。
「農民が貧困で無学な層だからこそ、革命的な行動が必要だった」
という従来の百姓一揆に対するアプローチは、
完全に「左翼学者のデマ」なんだと察知した。
それ、書いたら、マルクス経済論の先生なのに、Aをくれた。
すごい先生だ。
俺は一生頭が上がらない。
天下の大師匠 談志 の
無茶振りに耐えつづけた9年半で手に入れた、
”笑う”コミュニケーション術