俺は生かされていると改めて実感させていただく日となった。
前座丸4年。
予定ではもう二つ目に上がっているはずなのに、
その気配は微塵もなく、
ただひたすら師匠に怒られ続け、
仕事もなく、
さらに追い打ちをかけるように前年10月から彼女が行方不明になっていた頃だった。
「もう、ダメかもな」と諦めていたころ今日のこの日を迎えた。
亡くなった方々は、俺の身代わりにしか思えなかった。
地震の最前線の防波堤となって、
残された人たちを守るようにして、消えて行ったとしか思えなかった。
29歳。
月10万稼ぐか稼げないかの頃だったけど、
前座としてだけど落語が出来る喜びと、
その先に見えるはずと確信した未来の予感だけで生きていた。
師匠には罵詈雑言を浴びせられながらも、
それが手ごたえとなっていた実感だけはあったっけ。
関西方面の友人、先輩後輩らの安否を確認し、
3学年下の落研のとん治君の被災を知り、虎の子の1万円を送ったっけ。
「被災した君より俺のほうが多分ビンボーだけど送るね」とメッセージを書いて。
命に別状はなかったからこそ言えたギャグだった。
なんだか、今日は子供が塾から無事帰ってきてくれただけでも嬉しいな。
幸せは探すものではないんだね。
やはり感じるものなんだね。
改めて合掌。