やっぱりだ。
思った通り、お金はすぐになくなる。
コンビニでおにぎりを買うのをやめて
家で作るようにした。
長かった髪をハサミでバシバシと切り
おかっぱ頭にした。
これでシャンプーが節約できる。
豆苗を食べた後
根を水に浸して再生させた。
3回くらいは食べれた。
古くなったカーテンを切って縫って
自分のスカートを作った。
意外にカーテンだとバレない。
楽しく工夫!愉快に節約!
なんて、
自分を奮い立たせる。
週に1度、ハルから生活費をもらい
食料品、日用品、必要な雑貨を…
あ、そうだ
お米も買わなきゃいけない。
そうそう、
咲希にノートを買わなくちゃ。
実希の怪我の塗り薬も。
光希の服がボロボロになってきたな。
私の胃薬は…
高いから買えないや。
週末になれば
残金が小銭しかない時も珍しくなく
以前のように、
もやしと豆腐と卵がローテーションで
食卓に並ぶ日が増えた。
それでも
圧倒的にお金が足りない……
一度、私のお給料を
ハルの口座に入れなかったことがある。
その時ハルは
『あなたが俺に金の管理しろって
言ったんじゃん。おかしいだろ』
と言って怒った。
『車に使いたいんでしょ』
喉まで出かかった言葉をぐっと我慢して
「ごめん…」
下唇を噛んだ。
「あれ?なにしてんの伊藤ちゃん」
その声で我に返ると
会社の廊下にある
自動販売機の釣り銭口に
指を突っ込んでいる自分がいた。
「ははは!乞食じゃあるまいし」
職人さんに笑われる。
乞食………
そういえば
お金が落ちてないか
最近、ずっと下を向いて歩いていた。
「お母さん、アイス食べたい!」
「コンビニ行こ!」
3人分の出費は痛い…
でも、たかが300円で子供達に
『我慢しなさい!』
なんて言いたくない。
お金がないことは
子供達に気付かれたくない。
「ハル、ちょっとお願いが…」
意を決して言ってみる。
「なに?」
寝転んでいるハルの目は
ずっと携帯に注がれたまま。
「あの、お金が…足りなくてね」
「俺だってないよ」
そう言うと思った。
でも折れるわけにはいかない。
「あと3千円くらいあると…
助かるんだけど…な…」
「だから、ないってば」
バーーーーン!!!
壁を殴って
「ないわけないでしょ!!」
思いっきり怒鳴ってしまった。
「こんなんじゃ…生活できないよ!!」
ガバッ!!
立ち上がったハルが
おもむろに財布を取り出すと
ペシッ!!
千円札を床に叩きつけた。
「これでいいんだろ!!!」
ええっ…!?
ベッドに戻って背中を向け
何事もなかったように
再び携帯をいじり出すハル。
床に散らばった
千円札 3枚を
ただ茫然と見つめる。
なんなの、これは……
膝を折って
床に這いつくばり
お札を拾い上げた。
惨め。
なんて惨めな姿だろう。
『乞食じゃあるまいし』
情けなくて 情けなくて
もう涙も出やしない。
たったの3千円。
たった3千円の た め に
わ た し は こ ん な
あ あ あ
頭 が 真 っ 白 だ
ーーー気が付いたら
なにか喋っていた
「ざわ"る"な" わ"だじに"ざわ"る"な"」
痛い 腕が痛い
私の腕を掴むのは 誰 だ
「ざわ"る"な"!ばな"ぜ!!」
涙と鼻水で
顔がベチャベチャ
ドスン!!
床に倒され
体に鈍痛が走った
顔を上げると
男が私を見下げている
冷ややかな目
掴まれていた腕が
ジンジン痛い
左手に握られた
くしゃくしゃの千円札を見て
ハッ………
我に返った。