おそらく安定剤と思われる薬を
飲み続けているハル。
それでもやっぱり上下する精神は
すぐに治るわけではなく、
体調良さそうな日、寝込む日
元気な日、動かない日
笑顔の日、しかめっ面の日
その繰り返しだ。
大好きな子供達と一緒にいても
眉がピクピクッと動く時がある。
イラッとしている証拠。
「さ、お父さんも疲れちゃったから
みんなでお昼寝しようね」
すかさず私が止めに入る。
「はーい!」
「お母さんもお昼寝しよ!」
「お母さんは…お裁縫しなきゃ」
「そっかあ」
「裁縫は俺の方が上手いぞ」
「はいはい、寝ろ寝ろ」
私はハルの顔色を伺いながら、
負担をかけないよう配慮しながら、
毎日を過ごす。
うーん…
このままでいいものだろうか。
いっそのこと、
元気な私がフルタイムで仕事をして
ハルには家でゆっくりと治療に
専念してもらう方がいいんじゃないかな…
専業主夫というやつね。
ハルが治ったら
また戻せばいいんだし。
パラパラと求人広告を眺める。
なにか、いい仕事があれば…
悪いことに。
仕事に復帰したハルの容態は
さらに酷くなったようで、
帰ってきても無言で
笑わない時間が多くなった。
休みの日は
大好きだった漫画もゲームも
一切手をつけず、
ひたすら布団に潜っている。
「ねえ、お父さんどうしちゃったの?」
子供達が揃って心配そうな顔をして
私に訊いてくる。
「ちょっと具合が悪いみたいでね。
大丈夫よ、すぐ治るから」
「そうなの…?」
子供さえ気付く この異様な状態で
私がいくら誤魔化したって
子供達は納得するはずがない。
このままでは
あの子達の為にもよくないなあ…
どうしよう。
ゴミを分別するために
ベッドの横のゴミ箱をひっくり返すと
ハルが飲んでいる
いろんな薬の包装シートが
パラパラパラと落ちる。
泣きそうになった。
こんなに飲みながら仕事をして
しかも、快復する兆しもないなんて。
…よし、決めた。
やっぱり私がフルで働こう。
気合いを入れて仕事を探し始めた。
求人広告から始まって
知り合いに訊いてみたり
道を歩きながら店頭の掲示板を見たり
なにかいい仕事は…
できればお給料がいい職種で…
【急募!事務その他 月給23万】
「えっ?事務で23万!?」
道の途中で大きい独り言を
言ってしまった。
こんな驚きの求人が
ビルの一階の壁に貼ってある。
なんだろう、この会社…
事務職で月23万なんて
絶対怪しいに違いない。
危ない危ない……
「あれ?お姉ちゃん?」
聞いたことがある声がして
振り向いた。
「ああ、やっぱりお姉ちゃんだ」
パート先の居酒屋に来る
建設業のおじさんだ。
「あれっ!どうしてここに?」
「そんなの俺の方が聞きたいよ。
ここ、俺んとこの会社だもの」
「えっ!」
この怪しい会社の!?
「おっ、なんだい、転職かい?」
ニィ〜と笑うおじさん。
ちょっと おじさんさ、
関係ないけど
まだ前歯が一本欠けてるじゃん…
歯医者に行けと言ったのに。