最近ハルの帰りが、
ものすごく遅い。
今まで咲希のお風呂は
ハルの担当だったが、
待ちきれないので
一緒にお風呂に入る。
「おとしゃ、まだぁ?」
「お父さんねー、遅いねー」
お喋りが上手になってきた咲希と
2人きりでいる時間が
さらに長くなった。
まあ、仕方ない。
ハルの会社に後輩が入ってきたり
新規のお客さんが増えて
毎日バタバタしてるらしいから。
「ただいまー」
「あっ!おとしゃ きた!」
パタパタと駆けていく咲希
「なんだ、まだ寝てなかったのか」
「おとしゃ、ぎゅー!」
「はいはい、ぎゅー!」
ハルにぎゅーと抱っこされると
咲希はとても幸せそう。
「お疲れ様、大変そうだね」
「うん、まあね」
スーツのジャケットを脱がせると
ゴトッ
なにかが落ちた。
「あっ、携帯…」
拾いあげた私の手が止まる。
待ち受け画面に
知らない女の顔があった。
「誰?」
「ああ、それ職場の子」
なんで待ち受けに?
「最近さ、悩み相談をされてて」
「へえ、こんな美人でも悩みなんか
あるんだねえ」
ふんわりとした前髪、
切れ長の大きい目、
カールされた長いまつげ、
笑った口元から八重歯が見える。
で、なんで待ち受けに?
「お昼はカフェでランチしながら
話を聞いたりしてるんだよ」
「えー、いいなー!」
カフェでランチだって。
羨ましい。
で、なんで待ち受けに?
「俺、学生の頃から人に相談されることが
多くてさ、どうしてだろうなあ。
人も女もめんどくさいから嫌いなのに」
「ハルは頼れる存在なんだよ、きっと。
で、なんで待ち受けに?」
「ああ、それ、その子が勝手にやったんだ」
はあ、勝手にですか…
「さて、お風呂に入ってくるか」
鼻歌を歌いながら
シャワーを浴びるハル。
ふーーーーーん………
「おかしゃ!」
「あ、はいはい。寝ましょ寝ましょ」
ベビーベッドで寝なくなった
咲希を抱っこして、
床に敷いた布団に潜り込んだ。
待ち受けの美人さんが頭から離れない。
「♪ ねんねんよ〜」
咲希のお腹をポンポンしながら思う。
まあ、あんな美人なら
待ち受けにしてても仕方ない。
美しいものは目の保養だ。
アイドルと同じ。
それはどうでもいいんだ。
それよりも、
カフェでランチが
羨ましくて 羨ましくて 羨ましくて。
えーと、なんだって?
チョロチョロする子供がいなくて?
ハルと2人で?
ゆっくりと?優雅に?
オシャレな店で?
美味しいランチ?
「なんだよ、それ」
思わず声に出してしまう。
想像するだけでムカつくわ。
私なんて、ランチどころか
ハルと2人きりでお出かけなんて
子供ができて以来、したことないよ。
しかも絶対ハルのおごりでしょ。
私なんて、おごりどころか
ハルから生活費をもらうのにも
心の中で土下座してるのに。
あーーーー!!!
羨ましい 羨ましい 羨ましい
妬ましい 妬ましい 妬ましい
腹立たしい 腹立たしい 腹立たしい
悲しい 寂しい
虚しい………
