今から50年以上前、「中央公論」誌上に発表された「大東亜戦争肯定論・林房雄著」が最近になり、文庫本として出版されました。文庫本とは言え五百頁の大作、難解な文章に手を焼きつつも何とか読破しました。
 林氏によれば1853年、ペリー総督率いる黒船が来航して幕府に開国を求める以前から、欧米列強の船が日本周辺を跋扈し、日本に対して開国を求めていたそうです。
 欧米列強はアジア・アフリカなどほとんどの国を植民地化し、最後に残った日本もあわよくば植民地にするか、それが無理なら不平等条約締結を目論んでいたそうです。
 中国(当時は清国)が欧米列強に半植民地化された現実を見た明治政府は危機感を覚え、そうはなるまいと富国強兵を進めた結果、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦には勝利しましたが、泥沼の日中戦争が太平洋戦争に発展、ここですべてを失った日本は他国に占領統治される史上初の体験をするのです。
 林氏は、ペリー来航当たりから太平洋戦争までの約百年間を「東亜百年戦争」と称し、日本は一貫して欧米列強を相手に戦い、最後に負けはしたが、世界をおおった植民地主義にとどめを刺すための努力であり、その奮闘ぶりは「偉大な行為」として将来必ず賞賛されるでしょうと、結んでいます。
 確かに歴史、特に明治以降の近・現代史は一連の流れがありましたので、その意味ではうがった見解として理解できましたが、満州事変以後の中国大陸への進出及び東南アジアンへの進出には多分に侵略性がありますので、林氏の見解は五分五分かと思っています。