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「生命とは動的な平衡状態にあるシステムである」
生体を構成している分子は、すべて高速で分解されます。
食物として摂取した分子と置き換えられています。
身体のあらゆる組織や細胞の中身はこうして常に作り変えられています。
私たちの身体は数ヶ月前の自分とは全く別物になっているのです。
私たちの身体は変わりながら、一定の状態を保っています。
その流れ自体が「生きている」ということです。
これを「動的平衡」と呼びます。
人間は2万数千種類の部品で出来ています。
ミクロな部品が組み合わされて、動き、代謝し、生殖し、思考までする。
試験管の中に部品を集めても、生命は生まれないのです。
「生命とは何か?」
本書はその問いに答える内容です。
「生物と無生物の間」など、多数の著作を持つ著者のエッセイを集めた一冊です。
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■生命の3ポイント
①脳の機能
②神経活動
③生命活動
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●記憶とは何か
ビデオテープの存在を担保するような分子レベルの物質的基盤は、脳のどこを探してもない。・・・・・
それはおそらく細胞の外側にある。正確にいえば、細胞と細胞のあいだに。
神経の細胞(ニーロン)はシナプスという連繋を作ってお互いに結合している。
結合して神経回路を作っている。・・・・・
あるとき、回路のどこかに刺激が入力される。
それは懐かしい匂いなのかもしれない。あるいはメロディかもしれない。
刺激はその回路を活動電位の波となって伝わり、順番に神経細胞に明かりをともす。
●人間の脳についたバイアス
人類の祖先は過去何万年もの間、常に環境の変化と闘いながら生き残ってきた。
その時複雑な自然界の中から、何かの手がかりを見つけることが、生きのびていく上でとても大事だったのである。
その進化の過程で、私たちの脳にはランダムなものの中に、出来るだけ法則やパターンを見出そうとする作用が加わってきた。
私たちの脳にそういう水路がつけられてしまった。
●錯覚を生むメカニズム
それぞれの反応に固有の神経回路は生まれつき、もともと準備されていたものではない。
胎児期、脳ができはじめるとき、神経細胞は四方八方に触手を伸ばして手当たり次第連結を作り出し、出来る限り複雑な回路網を作り出す。・・・・
その後、母胎からこの世界に生まれると、この回路網は「刈り取られて」いく。環境にさらされて、その時使われる回路は太く強化され、使われない回路は消滅していく。・・・・
結果として脳の合理目的が生まれ、固有性を持つことになる。・・・・
それは生きていく上で、とても重要なことであるのだけれども、同時に私たちの脳が「錯覚」を犯す原因にもなっている。
●食物は情報を内包している
生命体は口に入れた食物をいったん粉々に分解することによって、そこに内包されていた他者の情報を解体する。これが消化である。
消化とは、腹ごなれがいいように食物を小さく砕くことがその機能の本質では決してなく、情報を解体することに本当の意味がある。タンパク質は、消化酵素によって、その構成単位つまりアミノ酸にまで分解されてから吸収される。
●生命活動とはアミノ酸の並べ替え
体内に入ったアミノ酸は血流に乗って全身の細胞に運ばれる。そして細胞内に取り込まれて新たなタンパク質に再合成され、新たな情報=意味をつむぎだす。つまり生命活動とは、アミノ酸というアルファベットによる不断のアナグラム=並べ替えであるといってもよい。
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環境にあるすべての分子は、生命体を通り抜け、また環境へと戻る流れの中にあります。
そこには平衡を保ったネットワークが存在していると考えられます。
この大きな流れの中にいることを自覚して、人間も生きなければなりません。
生命そのものが動的な平衡であるということは、
生命は構成分子そのものに依存しているのではないということです。
その分子の流れがもたらす「効果」であるということです。
生命現象とは構造ではなく「効果」なのです。
■目次
プロローグ 生命現象とは何か
第1章 脳にかけられた「バイアス」―人はなぜ「錯誤」するか
第2章 汝とは「汝の食べた物」である―「消化」とは情報の解体
第3章 ダイエットの科学―分子生物学が示す「太らない食べ方」
第4章 その食品を食べますか?―部分しか見ない者たちの危険
第5章 生命は時計仕掛けか?―ES細胞の不思議
第6章 ヒトと病原体の戦い―イタチごっこは終わらない
第7章 ミトコンドリア・ミステリー―母系だけで継承されるエネルギー産出の源
第8章 生命は分子の「淀み」―シェーンハイマーは何を示唆したか