世界最大の製薬企業であるファイザーが、今年1月に日本の研究拠点閉鎖を発表し、380人に及ぶ日本トップクラスの創薬研究者たちがリストラされるというショッキングなニュースは記憶に新しい。
同社は教育にも熱心で、研究に携わっていた研究員以外にも、在籍させながら博士号を取得させるために大学に出向させていた社員なども多くいた。今回の件は、製薬企業に勤める研究者らに、大きな雇用不安を与える出来事であった。
この突然の閉鎖を受け、愛知県武豊町の中央研究所に所属していた約80人の研究員が「従業員による企業買収(EBO)」を行なって独立、ベンチャー会社を設立することがわかった。新会社は研究者らが多額の出資を行い経営の主導権を握る。初期はファンドからの出資で運転資金をまかない、事業が軌道に乗った数年後には株式上場を視野に入れている。
今回のEBOにはファイザー本社も間接的ながら参画し、EBOを行なった社員と本社が共に利益を得られる仕組みを作り出している。その仕組みはこうだ。
1.ファイザーが中央研究所を社員らに移譲。新会社を建てる。
2.ファイザー本社が所有している新薬候補物質のなかで、本社の重点研究項目に当てはまらない物質や、比較的リスクが高い物質など本社の方針に合わないものを新会社が譲り受ける(中央研究所は消化器分野や鎮痛薬に特に強く、この分野の研究を特に行なう可能性が考えられる)。
3.新会社に移った研究者たちがその物質の研究を続ける。
4.製品化が成功すれば、新会社は利益を得る。一方、ファイザーはライセンスフィーで利益を得ることができる。
米本社も、研究所閉鎖に伴う混乱や、他の社員らの雇用不安を避けるためにこの申し出に応じる方向。社員による企業買収(EBO)は、明光商会やポッカ・コーポレーションが行った例はあるが、日本では珍しいことだ。