こちらは、チリ出身の偉大なマエストロ、クラウディオ・アラウ(1903-91)による、「第6番」の名演奏です。

 

アラウは、1980年代にも、ベートーヴェン(1770-1827)の「ピアノソナタ全集」の録音に挑みましたが、残念ながら、「未完」に終わってしまいました。

 

「ピアノソナタ」のみで発売されたアルバムもいくつかありますが、この「第6番」(1988年4月録音)は、サー・コリン・デイヴィス(1927-2013)指揮、ドレスデン・シュターツカペルレとの「ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 op.37」(1987年2月録音)のCDに収録されています。

 

このCDは、現在では「入手困難」であり、その意味でも、大変「貴重」です。

 

「第1楽章」

 

「第2楽章」(*「聴きどころ」です!!)

 

「第3楽章」

 

 

「第9番」は、やはり偉大な「マエストロ」、アルフレート(アルフレッド)・ブレンデル(1931-, 演奏活動は、すでに「引退」されています)が、1990年代に完成させた「最後の全集」からどうぞ。

 

「第1楽章」

 

「第2楽章」(*こちらも、やはり「第2楽章」が「聴きどころ」となっています)

 

「第3楽章」

 

 

 

テーマが「ベートーヴェン」のこれまでの記事。

 

「記念サイト」もまだあります...。

 

 

さて、やはり、「月イチ」くらいでは書いておきたい「クラシック」の「名曲紹介」...。

 

 

しばらくは、やはり、「楽聖」ベートーヴェン(1770-1827)に「特化」して書いてみたいとも思っています。

 

 

曲目の「選定」は、今回も「悩みに悩み」ましたが、「一般」には、「あまり知られていない」かも知れない、言ってみれば、「隠れた名曲」にスポットを当ててみました。

 

 

今回紹介する曲は、「ピアノソナタ」の2曲。

 

 

ともに、「初期」の名作です。

 

 

まず、「第6番 へ長調 op.10-2」は、「3曲」から成る、「op.(作品番号)10」のピアノソナタの「第2曲目」です(「op.10-1」が「第5番 ハ短調」、「op.10-3」が、「第7番 ニ長調」です)。

 

 

この「op(作品).10」の3曲は、単に「出版の都合」により「まとめられた」だけであり、それぞれの曲は、とても「個性的」であるとも言うことが出来ます。

 

 

たとえば、「第5番」は、同じ「ハ短調」で書かれた、「有名」なピアノソナタ、「第8番 op.13 "悲愴"」(1798-99)と比較して、「小さな"悲愴ソナタ"」という風な呼ばれ方も、「欧米」の方ではされているようです。

 

 

また、「第7番」は、「ニ長調」らしい「雄渾」な楽想であり、「第5番」、「第6番」では「省略(?)」されていた「緩徐楽章」が「復活」して、再び「4楽章」ともなっており、ベートーヴェンの「弟子」でもあった、カール・ツェルニー(1791-1857)をして、「壮大にして重要な」とも評されています。

 

 

この「op.10」の3曲が書かれたのは、「正確には分かっていない部分もある」とはされていますが、ベートーヴェンに詳しい、グスタフ・ノッテボーム(1817-82)の研究によれば、1796年から、1798年の夏頃までには、「3曲とも完成したと見られる」ということです。

 

 

出版は、その1798年の9月に行なわれ、ベートーヴェンの重要なパトロンの1人、ブロウネ伯爵(1767-1827)の妻、アンナ・マルガレーテに「献呈」されています。

 

 

今回のこの「第6番」には、もちろん、「師」でもあるハイドン(1732-1809)の「影響」も色濃く見られると言えるのですが、「ユニゾン」で始まる「第2楽章 アレグレット」(「スケルツォ」に相当しますが、「緩徐楽章の代替」と言えなくもありません)は、「後期の作風」をも思わせる、「沈潜する楽想」(言い方「古い」?)であるとも言え、すでに、シューベルト(1797-1828)など、「ロマン派」を「予感」させる曲にすらなっているのです。

 

 

この楽章は「お薦め」です。

 

 

この楽章のみでも、ぜひ一度はお聴きください...。

 

 

ブレンデルの「全集録音」からもどうぞ...。

 

 

(参考記事)毎度おなじみ、「おやすみベートーヴェン」より。

 

 

続いて、「第9番 ホ長調 op.14-1」。

 

 

有名な「悲愴ソナタ」に続くピアノソナタで、やはり、1798年から99年にかけて作曲されたものと見られていますが、「作曲年代」については「推定」でしかなく、「着想」は、「もっと前」のことだとも言われています(1795年完成の、「ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op.19」と「同じ頃」)。

 

 

「op.14」の2曲のピアノソナタ(「op.14-2」は、「第10番 ト長調」)は、1799年12月に「出版」となり、ヨゼフィーネ・フォン・ブラウン男爵夫人に「献呈」されています。

 

 

この「第9番」は、1801年、または、1802年には、「弦楽四重奏曲」(Hess 34)にも「編曲」され、同様に、ブラウン男爵夫人が「献呈」を受けています。

 

 

このピアノソナタは、技術的にも「平易」であることから、実際に、「献呈」を受けた、ブラウン男爵夫人が「弾く」ことを「想定」して書かれたものだと考えられますが、それでも、「単なる練習曲」には終わっておらず、「最も内容の豊かな、優れた作品にもかかわらず、一般にはあまり認められていない曲」(アントン・シンドラー)という意見もあります。

 

 

「第6番」同様、こちらも、「3楽章」の構成となっており、やはり、「第2楽章 アレグレット」が、「一番の聴きどころ」として挙げられます。

 

 

その点では、まるで「双子」のようにも感じられるのですが(だからこそ、今回、「この2曲」を選びました!!)、この「第9番」の「第2楽章」も、後の「op.90のソナタ(「第27番 ホ短調」 特に「第1楽章」)」に通じるものがある(パウル・べッカー)と言われています。

 

 

「第9番 第2楽章 アレグレット」

 

晩年のアラウの録音もあります(1989年3月録音)。

 

 

(参考)ほとんど「後期」とも言える作風の、「ピアノソナタ第27番 ホ短調 op.90」(1814)。

 

 

「秋の日の落日」を思わせる作品です...。

 

 

「第1楽章」

 

「第2楽章」

 

 

(参考記事)「第9番」についても、「おやすみベートーヴェン」を。

 

 

せっかくの機会ですから、今回紹介した、クラウディオ・アラウによる「ピアノソナタ第6番」が収録されているCD、サー・コリン・デイヴィス(1927-2013)指揮、ドレスデン・シュターツカペルレとの「ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 op.37」の演奏(1987年2月録音)もあわせて載せておくことにいたしましょう。

 

 

「オケ」も「ピアノ」も、まさに「いぶし銀」の「名演奏」です。

 

 

(今回、「選曲」にあたっての「第一候補」は「この曲」でした...)

 

 

「第1楽章」

 

「第2楽章」

 

「第3楽章」

 

 

それではまた...。

 

 

(daniel-b=フランス専門)