「モーツァルトのスペシャリスト」としても「有名」な、偉大な「マエストロ(巨匠)」、カール・ベーム(1894-1981)指揮による「歴史的な名演奏」です(「音量」にご注意ください)。

 

「1971年」と表記されていますが、「CD」ともなっている、同年の「ウィーン・フィル(po.)」とのものではなく、1956年の録音で顔合わせしている、「ウィーン交響楽団(so.)」を指揮しての演奏です。

 

ソリストは、グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ, 1937-)、クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ/アルト, 1928-)、ペーター・シュライアー(テノール, 1935-)、ヴァルター・ベリー(バス, 1929-2000)となっています。

 

こちらは、「レコード」として残された、「2種類」の音源ですが、そのどちらも、「歴史に残る名演奏」です。

 

前半は、「ウィーン・フィル(po.)」を指揮した「1971年」の録音で、「決定盤」との誉れの高い名演奏です。

 

ソリストは、エディット・マティス(ソプラノ, 1938-)、ユリア・ハマリ(アルト, 1942-)、ヴィエスラフ・オフマン(テノール, 1937-)、カール・リッダーブッシュ(バス, 1932-)となっています。

 

後半(1時間4分32秒頃から)は、「ウィーン交響楽団(so.)」を指揮した「1956年」の録音で、「歴史的ソリスト」の名唱も大変「印象的」です。

 

ソリストは、テレサ・シュティヒ=ランダル(ソプラノ, 1927-2007)、イラ・マラニウク(アルト, 1919-2009)、ヴァルデマール・クメント(テノール, 1929-2015)、クルト・ベーメ(バス, 1908-89)となっています。

「12月5日」は、「神童」と呼ばれた、モーツァルト(1756-91)の「命日」です。

 

そのモーツァルトの「最後の作品(絶筆)」であり、「最高傑作」とも呼ばれるのが、この「レクイエム ニ短調 K.626」(1791)です。

 

「音楽史」においても、ヴェルディ(1813-1901, 1874年作)、フォーレ(1845-1924, 1887年作)のものと並んで「3大レクイエム」と称されており、「演奏機会」も「極めて多い」作品です。

 

「レクイエム」とは、「ラテン語」で「安息を」を意味し、一般的には、「死者のためのミサ曲」を表します。

 

 

1791年8(7)月、「最晩年」のモーツァルトは、「見知らぬ男性」の訪問を受け、「匿名の依頼主」からの「レクイエム」作曲を依頼されます。

 

男は、「高額な報酬」の一部を「前払い」し去っていきました...。

 

当時のモーツァルトは、生活に困窮し、体調も崩しがちでした。

 

9月の終わりに初演の、ジングシュピール(オペラ)「魔笛 K.620」の完成を何とか間に合わせたモーツァルトは、「レクイエム」の作曲に取りかかりましたが、11月20日頃になると、「著しい体調悪化」のため、もはや、ベッドを離れられなくなっていました。

 

モーツァルトは、その「見知らぬ男」を、「死の世界からの使い」だと思い込み、「自分のためのレクイエム」として、「異常なまでの情熱」を燃やして「作曲」したのだと伝えられています。

 

そして、「12月5日未明」、この「レクイエム」の第8曲、「Lacrimosa "涙の日"」の「第8小節」までを書いたところでモーツァルトは力尽き、この世を去ってしまいました...。

 

 

大変「重要」な作品ですので、今年1月のシューベルト「冬の旅 op.89, D.911」の記事同様、「全曲紹介(14曲)」の後に、「まとめ記事」を書きたいと思っています(「全3回」の予定です)。

 

今回は、「入祭唱」である、第1曲目「Requiem aeternam "永遠の安息を"」から、「絶筆」となった第8曲目、「Lacrimosa  "涙の日"」までの詞(「ミサ典礼文」。「ラテン語」)を掲載することにします。

 

訳詞は、上掲の音源の1つでもある、「マエストロ」、カール・ベーム(1894-1981)の指揮による、1956年のウィーン交響楽団との演奏のCD(旧フィリップス。「日本盤」)に添付の、石井宏さんのものをお借りしています。

 

この「レクイエム」は、モーツァルトの「弟子」とされる、フランツ・ジュスマイヤー(1766-1803)によって「補筆完成」されたものが「最も有名」であり、「まとめ」にて、その点についても「詳しく」書いていきたいと思っています。

 

次回は、「奉献唱」である、第9曲目「Domine, Jesu Christe "主イエス・キリスト"」から、最終曲(「第14曲目」)「Lux aeterna "永遠の光"」までを採り上げます。

 

それではまた...。

 

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Requiem  レクイエム

 

Introitus  入祭唱

 

(1.)Requiem aeternam dona eis, Domine

et lux perpetua luceat eis

te decet hymnus, Deus, in Sion

et tibi reddetur votum in Jerusalem

Exaudi orationem meam

ad te omnis caro veniet

Requiem aeternam dona eis, Domine

et lux perpetua luceat eis

 

1.主よ永遠の安息を彼らに与えたまえ

とこしえの光もて彼らを照らしたまえ

シオンにては主に聖歌をささげ

エルサレムにては祈りをささげまつる

われらが願いを聴きたまえ

すべての肉はみもとに参りまつる

主よ永遠の安息を彼らに与えたまえ

とこしえの光もて彼らを照らしたまえ

 

Kyrie  キリエ

 

(2.)Kyrie eleison

Christe eleison

Kyrie eleison

 

2.主よ、あわれみたまえ

キリストよ、あわれみたまえ

主よ、あわれみたまえ

 

Sequentia  続唱

 

(3.)Dies irae, dies illa

Solvet saeclum in favilla

Teste David cum Sibylla

 

3.怒りの日よ、その日

地上は灰に帰する

ダヴィデと巫女の予言のように

 

Quantus tremor est futurus

Quando judex est venturus

Cunta stricte discussurus

 

なんという恐怖の来ることか

審判が至り

ものみな厳しく試される時は

 

(4.)Tuba mirum spargens sonum

Per sepulcra regionum

Coget omnes ante thronum

 

4.ラッパは高らかに響きわたる

すべての国の墓の上に

すべての人を玉座の前に集め出される

 

Mors stupebit et natura

Cum resurget creatura

Judicanti responsura

 

死者も生者も驚きに打たれる

すべての生物がよみがえり

審判に答える時には

 

Liber scriptus proferetur

In quo totum continetur

Unde mundus judicetur

 

ひとつの本が持ち出され

そこにはすべてが書かれてあり

それに基づいてすべてが裁かれる

 

Judex ergo cum sedebit

Quiquid latet apparebit

Nil inultum remanebit

 

ゆえに審判者が席に着く時

隠されたものはすべて見出され

罪を免れるものはない

 

Quid sum miser tunc dicturus

Quem patronum rogaturus

Cum vix justus sit securus?

 

哀れなるわれは、なにをか言おう

いかなる保護者に頼むのか

正義すらが疑われる時に

 

(5.)Rex tremendae majestatis

Qui salvandos salvas glatis

Sauva me, fons pietatis

 

5.恐るべき威力の王よ

つぐないし者を自由に救いたもう方よ

憐れみの泉よ、われを救いたまえ

 

(6.)Recodare, Jesu pie

Quod sum causa tuae viae

Ne me perdas illa die

 

6.思い出したまえ、良きキリストよ

われはあなたの来臨の理由であることを

そして、その日、われを見放したもうな

 

Quaerens me sedisti lassus

Redemisti crucem passus

Tantus labor non sit cassus

 

審判の席に着き、われを探したまえ

十字架の受難にてわれをあがなわれしなれば

そのみわざを無になしたもうな

 

Juste judex ultionis

Donum fac remissionis

Ante diem rationis

 

正しき、懲罰の審判よ

われに赦免を認めたまえ

審判の日の前に

 

Ingemisco tamquam reus

Culpa rubet vultus meus

Supplicanti parce, Deus

 

われは罪人のように震える

赤き印はわが額にあり

ひれ伏す者をお赦しあれ

 

Qui Mariam absolvisti

Et la tronem exaudisti

Mihi quoque spem dedisti

 

マグダラのマリアを赦したまい

盗人の願いを容れられたあなたは

わが上にも希望を与えられた

 

Preces meae non sunt dignae

Sed tu bonus fac benigne

Ne perenni cremer igne

 

わが祈りはとるに足らずとも

あなたの憐慰(れんい)によって

われを永遠の劫火よりお救い下さい

 

Inter oves locum praesta

Et ab haedis me sequestra

Statuens in parte dextra

 

あなたの羊の群れにわれをお加え下さい

黒山羊よりわれをお分け下さい

あなたの右の手によって

 

(7.)Confutatis maledictis

Flammis acribus addictis

Voca me cum benedicutis

 

7.呪われた人々が入りまじって

灼熱の焔にさらされる時は

われを祝別された者の中にお呼び下さい

 

Oro supplex et acclinis

Cor contritum quasi cinis

Gere curam mei finis

 

われはひれ伏して祈り

こころは灰のようにくだけて

最後の時の平安を願うのみ

 

(8.)Lacrimosa dies illa

Qua resurget ex favilla

Judicandus homo reus

Huic ergo parce, Deus

Pie Jesu Domine

dona eis requiem

Amen

 

8.涙のその日

灰の中からよみがえり

罪人の裁きにかけられる日

神よ彼をあわれみたまえ

主なる良きイエス

彼らに安息を与えたまえ

アーメン

 

 

 

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(楽譜です)

(こちらは、「典礼文」など、「レクイエム」についての「基礎知識」をまとめた書籍です)

 

(daniel-b=フランス専門)