1977年11月19日放送のテレビ番組の映像です。
ベーシストのピエール・二コラ(1921-90)の他に、「セカンド・ギター」、ジョエル・ファヴロー(1939-)の姿も見えます。
こちらは1971年の映像だということで、原詩を書いた詩人ポール・フォール(1872-1960)の妻、ジェルメーヌ(1893-1980)の前で披露されました。
詩人ポール・フォールは、その妻に関する詩も書いています。
詩人への「オマージュ」ということで、その死の翌年に、「朗読」で録音されたものの1つがこちらです。
「Germaine Tourangelle "トゥールの女(ひと)ジェルメーヌ"」(1961年録音)。
こちらは、1961年5月26日のテレビ番組「ディスコラマ」の映像です。
「没後1年」のポール・フォールを記念して企画されたもののようで、スタジオには、詩人の「遺影」も掲げられています。
こちらは、1959年11月6日に「再録音」されたバージョンですが、現在では、こちらの方がよく聴かれているようです。
ブラッサンスは、「同じ曲が、違った風に聴こえるのは嫌だ」と、「再録音」を拒んでいましたが、フィリップス社の「大物プロデューサー」であったジャック・カネッティ(1909-97)が、「Philips-Realites」という「全集企画」で「新録音」を要請してきたため、ヒット曲「6曲」を選んで、「再録音」することにしました。
このバージョンが収録されたアルバムのタイトルは、「Georges Brassens, qui etes-vous? "ジョルジュ・ブラッサンス、あなたは誰?"」といいます。
こちらが「オリジナル録音」ですが、「1953年11月発売」と、ブラッサンスの録音の中では、「最初期」に属するものです。
ロック歌手ルノー(1952-)は、ブラッサンスの「没後15周年」に当たる1996年、「トリビュート・アルバム」を発表しました。彼は、幼い頃からブラッサンスに慣れ親しんでいたということで、このアルバムは、当時、大変「話題」となりました。
https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10098036054.html(これまでの記事)
「10月22日」は、シャンソン界の3大巨匠の1人、ジョルジュ・ブラッサンス(1921-81)の「誕生日」でした。また、そのちょうど1週間後の「10月29日」は「命日」でもあり、まさに「ブラッサンス・ウィーク」ということになります。
今回紹介する曲「la marine "海の匂い"」は、ブラッサンスの自作の詞によるものではなく、「師」と仰いでいる詩人、ポール・フォール(1872-1960)の詩に曲を付けた、大変「美しい」作品です。
「劇作家」でもあったポール・フォールは、1872年2月1日、歴史的にも重要な都市、「ランス(マルヌ県)」(「シャンパーニュ」の「一大醸造地」としても「有名」)に生まれました。
若い頃は、「演劇人」として、「劇作家」としての活動が「メイン」だったようですが、後に、「象徴主義」の「詩人」として、「ヴェルレーヌ(1844-96)の後継者」とも自負していたようです。
こちらは、そのポール・フォールが、その「想い」を吐露した詩、「l'enterrement de Verlaine "ヴェルレーヌの葬儀"」(1961)ですが、付けられたこの曲は、1957年作の名曲、「la marche nuptiale "結婚行進曲"」の曲を「転用」したものです(こちらも、上掲の「ディスコラマ」からの映像です)。
こちらが「原曲」、「la marche nuptiale "結婚行進曲"」です(1957年6月12日放送のテレビ番組より)。
なお、「l'enterrement de Verlaine "ヴェルレーヌの葬儀"」の「オリジナル録音」は、「朗読」となっています。
ブラッサンスは、他にも、ポール・フォールの詩に曲付けして歌っています。
「comme hier "昨日のように"」(1953-59)。
「le petit cheval( blanc) "小馬"」(1952)。
こちらは、1972年、ナナ・ムスクーリ(1934-)とのデュエットの映像です。
以下に、「la marine "海の匂い"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。
今回の訳詞は、1976年に発売された日本盤「ブラッサンスとパリの詩人たち」(FDX-223)に掲載のものをお借りしていますが(「文学的」にも、「味わい深い」訳詞だと思います)、「実際の歌」に合わせて、一部「修正」している箇所があります(「第2節」では、*印の歌詞で歌っています)。
ブラッサンスは、他にも多くの詩人の詩に曲を付けて歌っていますが、それは、「またの機会に」ということにしましょう。
それではまた...。
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la marine 海の匂い
on les r'trouve en raccourci
dans nos p'tits amours d'un jour
tout's les joies, tous les soucis
des amours qui dur'nt toujours
c'est la l'sort de la marine
et de tout's nos p'tit's cheries
on accoste, vite un bec
pour nos baisers, l'corps avec!
一日の愛の戯れのうち
永遠に忘れぬ愛の
喜びや苦悩のすべてが
走馬灯のごとくよみがえる
船乗りの運命
そして彼らの恋人たちの運命
口づけのため 素早く唇を寄せ
身を横づける
et les joies et les boud'ries
les fach'ries, les bons retours
on les r'trouve(y a tout ca) en raccourci
dans nos p'tits amours d'un jour
(des grands amours dans nos p'tits)
on a ri, on s'est baise
sur les neunoeils, les nenes
dans les ch'veux a pleins becots
pondus comme des oeufs, tout chauds!
喜び そしてふくれ面
怒り そしてお帰りだ
走馬灯のごとくよみがえる
一日の愛の戯れのうちに
*(すべてが走馬灯のごとく
われらの恋人の大いなる愛のうちに)
笑った 口づけを交わした
目や乳房の上で
髪ほつらせて口づけに包まれて
生みたて卵のようなお熱さだ
tout c'qu'on fait dans un seul jour
et comme on allong' le temps
plus d'trois fois dans un seul jour
content, pas content, content!
y a dans la chambre une odeur
d'amour tendre et de goudron
ca vous met la joie au coeur
la peine aussi et c'est bon
時間をうまくつくろって
たった一日にすることは
一日に三回以上
満足か 否か 満足か!
タールと甘い情事の匂い
部屋に満ち
心にゃ喜び満ちる
苦しみもまた しかし素敵なこと
on n'est pas la pour causer
mais on pens' mem' dans l'amour
on pens' que d'main y f'ra jour
et qu'c'est un' calamite
c'est la l'sort de la marine
et de tout's nos p'tit's cheries
on accost' mais on devine
qu'ca s'ra pas le paradis!
そこにいるのは 話すためじゃない
それでも情事の間も思考する
明日もまた 陽が昇ると考える
災難みたいなものと考える
それが船乗りの運命
彼らの恋人たちの運命
寄りそえど そいつは
天国にゃなり得ない
on aura beau s'depecher
fair' bon Dieu, la pige au temps
et l'bourrer d'tous nos peches
ca n's'ra pas ca et pourtant...
tout's les joies, tous les soucis
des amours qui dur'nt toujours
on les r'trouve en raccourci
dans nos p'tits amours d'un jour
時間をかせごうと
急いだって無駄なこと
すべての罪をかき込んだとて
何にもならないその上に
永遠に忘れぬ愛の
喜びと苦悩のすべてが
一日の愛の戯れに
走馬灯のごとくよみがえるのみ
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(daniel-b=フランス専門)