「完全主義者」であったバルバラは、「録音の結果」が気に入らずに、吹き込み直すことも多かったのですが、「この時代」は特に、そういった曲が目立ちました。
この曲や、記事最後にも採り上げている、「le temps du lilas "リラの花咲く頃"」(1962)などは、「3種類」もの録音が残っています。また、「dis, quand reviendras-tu? "いつ帰って来るの?"」(1962-63)のように、「先」に録音されたものの方が、「現在」まで残っているというケースもあります。
https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12333404524.html?frm=theme(参考:「いつ帰って来るの?」の記事)
こちらの録音が、この曲の「最終決定バージョン」です(「大全集」ではなぜか、「補遺」の扱いです...)。
録音日は「不明」ですが、「最後」に録音されたことは間違いなさそうです(1963年)。
この曲を含む、「CBS」でのアルバムは、1964年6月にまず「モノラル」で発売され、次いで、1966年3月に、「ステレオ」で「再発売」されました。
こちらは、1963年3月26日に録音されたもので、上掲の「最終決定盤」同様、フランソワ・ローベール(1933-2003, ブレルの編曲・指揮者として「おなじみ」の方です)の編曲によりますが、出来が気に入らずに「NGテイク」となったものです。
とは言え、バルバラがフィリップス社に移籍後、CBS社の判断により、1965年に「商品化」されました。
タイトルが「attendons~(二人で待ちましょう)」となっているのが、「第1稿」によるもので、「3月12日」の録音だということです。
こちらも、上掲2種の録音同様、フランソワ・ローベールが参加しているものです。
1968年1月22日、「最初の出演」となった、オランピア劇場での公演「ミュジコラマ」(ラジオ局「ヨーロッパ1」主催)からの「ライヴ録音」です。
2012年に初めて「商品化」された音源です。
https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12492126311.html(前回の記事)
https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10097047678.html(これまでの記事)
さて、前々回から、この2日に日本でも「DVD」が発売された、映画「バルバラ~セーヌの黒いバラ」(2017年。マチュー・アマルリック監督)の劇中で歌われた(使用された)、バルバラ(1930-97)の名曲を紹介しています(この記事は、「DVD発売」の記事の「リブログ」となります)。
採り上げている作品は、次の3曲です。
「前々回」...「du boud des levres "口先だけで(くちびるの端に)"」(1968)
「前回」...「d'elle a lui "彼女から彼へ"」(1903-58)
「今回」...「attendez que ma joie revienne "わが喜びの復活"」(1963)
今回紹介する曲は、「attendez que ma joie revienne "わが喜びの復活"」です。
フィリップス社に移籍する前年、1963年3月にCBS社(現「ソニー・ミュージック・エンタテインメント」)に録音された名曲で、最終的には、「dis, quand reviendras-tu? "いつ帰って来るの"?」のアルバム(1964年モノラル/1966年ステレオで再発売 *上掲「最初の音源」参照)にも収録された、移籍前の「代表作」の1つです。
現在では、「オリジナル」のCBS盤が、「完全」な形で入手出来る見込みはもはやほとんどなく、「ダイジェスト版」の形で発売されている「後発盤」か、やはり、「大全集」で、ということにはなりますが、「バルバラファン」であれば、「必聴の1曲」であるとも思います。この機会に、ぜひ、お聴きください。
(注:バルバラが「パテ=マルコニ社」から移籍した「オデオン・レコード」は、1963年、「CBS社」に買収されました。この「オデオン・レコード」は、「フランスの法人」であり、同じフランスでも、エディット・ピアフが所属していたのは、旧「EMI社」傘下の「イギリスの法人」で、「ビートルズ」と同じです。それにしても、このあたりは...「ややこしい」...!?)
この作品、「attendez que ma joie revienne "わが喜びの復活"」は、上述のように、「録音」はされたものの、バルバラ自身によって「NG」とされたため(「1963年3月26日」のテイク)、その後しばらく、「レコードとしては存在しない曲」となってしまいました。
そこで、先に「レコード化」されたのが、同年4月29日に録音された、コラ・ヴォケール(1918-2011)のバージョンです。
こちらも、とても「味わい深い」名唱ですね。
このレコードには、「dis quand reviendras-tu? "いつ帰って来るの?"」も収録されています。
こちらは、バルバラや、ジャック・ブレル(1929-78)に憧れて歌手活動を始めたという、マリー=ポール・ベル(1946-)による歌唱です。
「派手さ」は感じられませんが、その「素朴さ」に、「不思議な魅力」を感じます。
Chante Barbara
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それでは今回も、この当時のバルバラの名曲を、いくつか紹介しておきましょう。
「j'entends sonner les clairons "恋の戦争"」。
原題は、「(弔いの)ラッパが響くのが聴こえる」という意味ですが、それは、「死んだ恋の歌」ということで、この曲も、「過去の恋」に関する「苦い思い」がこめられた作品です。
「tu ne te souviendras pas "覚えていないでしょう"」も同様で、この年のアルバムの「雰囲気」を「決定付けている」とも言えます。
この録音は、1962年2月17日、「エクリューズ(レクリューズ)座」での「ライヴ録音」(こちらは、「正真正銘」の「本物」!!)で、大変「貴重」です。
「スタジオ録音」も「素敵」ですが、この「美しい」ライヴ録音を、この機会にぜひどうぞ!!
少し前の記事にも載せていますが、ここであらためてどうぞ。
「le temps du lilas "リラの花咲く頃"」です。
それでは以下に、「attendez que ma joie revienne "わが喜びの復活"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。
詞・曲ともに、バルバラ自身の手による作品ですが、上掲の録音(3種)を聴いていただくとお分かりのように、歌詞には若干の「変遷」があります。
ここには、「最終決定バージョン」を載せています。
この作品も、「美しい曲」とは裏腹に、「過去の恋」に関する「苦い思い」が込められていて、そのために、「新しい恋」に踏み出せないでいる女性の姿が、「ありのまま」に描かれています。
前回の記事の最後で紹介した「veuve de guerre "戦争未亡人"」(1958)同様、この曲も、1993年12月の「最後のシャトレ劇場公演」で歌われていました。
大変「感動的」なのですが、残念ながら、動画サイトでは、その音源を見つけることが叶いませんでした。
このアルバム(「ライヴ盤」)です。
この「ライヴ・アルバム」と、「最後のスタジオ盤アルバム」(1996)は、ついに「日本盤」が発売されることがありませんでした...。
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さて、私は、これまでにも書いている通り、次のサイトを参照していますが、そこで、大変「興味深い」記述を見つけました。
http://passion-barbara.net/(ファンサイト「passion-barbara」)
それによれば、この「レコーディング」の当時、バルバラの「隣り」のスタジオには、何と「エディット・ピアフ」(1915-63)がいて、「l'homme de Berlin "ベルリンの男"」のレコーディングを行なっており、2人は、「廊下」で「すれ違った」とも言うのです!!(「ホンマ」かいな!?)
その「真偽」のほどはともかく、「絵になる」、「夢のような」お話しですね。
このようなエピソードも、「ドラマ」に出来そうです...。
それではまた...。
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attendez que ma joie revienne わが喜びの復活
attendez que ma joie revienne
et que se meure le souvenir
de cet amour de tant de peine
qui n'en finit pas de mourir
avant de me dire je t'aime
avant que je puisse vous le dire
attendez que ma joie revienne
qu'au matin je puisse sourire
私の喜びが戻って来るのを待ってください
そして、あの思い出が消えるまで
あまりにも辛かったあの恋は
どうしても、終わろうとしてくれないの
私に「ジュ・テーム」と言う前に
あなたにそれを言えるまで
私の喜びが戻って来るのを待ってください
微笑むことの出来る夜明けまで
laissez-moi, le chagrin m'emporte
et je vogue sur mon delire
laissez-moi, ouvrez cette porte
laissez-moi je vais revenir
そっとしておいて 悲しみが私をさらって
妄想の中で流されていくのを
そっとしておいて この扉を開けてください
そっとしておいて 私は戻ります
j'attendrai que ma joie revienne
et que soit mort le souvenir
de cet amour de tant de peine
pour lequel j'ai voulu mourir
j'attendrai que ma joie revienne
qu'au matin je puisse sourire
que le vent ait seche ma peine
et la nuit calme mon delire
私の喜びが戻って来るのを待ちましょう
あの思い出が消えるように
あまりにも辛かったあの恋は
「死にたい」と思ったくらい
私の喜びが戻って来るのを待ちましょう
微笑むことの出来る夜明けまで
風が私の苦しみを乾かし
そして、私の妄想が静まる夜を
il est, parait-il, un rivage
ou l'on guerit du mal d'aimer
les amours mortes y font naufrage
epaves noires du passe
「浜辺」なのかも知れない
「恋の病が治る」という場所は
「死んだ恋」は、そこで沈没し
過去の黒い漂流物になる
si tu veux que ma joie revienne
qu'au matin je puisse sourire
vers ce pays ou meurt la peine
je t'en prie, laisse-moi partir
il faut de mes amours anciennes
que perisse le souvenir
pour que liberee de ma chaine
vers toi je puisse revenir
もしあなたが、私の喜びが戻って来るのを望むのなら
微笑むことの出来る夜明けを望むのなら
苦しみが消える国へと
旅立たせて お願い
過ぎ去った恋の思い出を
消し去らなくては
この「鎖」から解放されて
あなたのもとに戻るために
alors, je t'en fais la promesse
ensemble nous irons cueillir
au jardin, fou de la tendresse
la fleur d'amour qui va s'ouvrir
それじゃ約束しましょう
優しさに満ちた庭園に
一緒に花を摘みに行きましょう
恋の花が咲こうとしているわ
mais c'est trop tot pour dire je t'aime
trop tot pour te l'entendre dire
a voix que j'entends c'est la sienne
ils sont vivants mes souvenirs
pardonne-moi, c'est lui que j'aime
le passe ne veut pas mourir...
でも、あなたに「ジュ・テーム」と言うにはまだ早過ぎる
あなたのその言葉を聞くのもまだ早過ぎる
私に聴こえる声はやはり「彼」のもの
私の思い出はまだ生きている
許して 私が好きなのは「彼」
過去は、消えることを望んでいないの...
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