モラーヌ(1960-2018)の「遺作アルバム」、「Brel」の発売を報じるニュース番組です。
折しも、ブレルの「没後40周年」の、まさにそのタイミングでした。
以下は、その「収録曲」です。
1.「je ne sais pas "私は知らない"」(1958)
2.「Vesoul "ヴズール(お前の言いなり)"」(1968)
3.「la chanson des vieux amants "懐かしき恋人の歌"」(1967)
こちらは、1993年、「オランピア劇場公演」のライヴ録音です。
4.「la quete "見果てぬ夢(「ラ・マンチャの男」より)"」(1965-68)
5.「la ville s'endormait "眠れる街"」(1977)
6.「fils de... "子どもはみんな"」(1966-67)
7.「Rosa "ローザ"」(1962)
8.「Orly "悲しみのオルリー"」(1977)
9.「quand on n'a que l'amour "愛しかないとき"」(1956)
10.「voir un ami pleurer "泣く友を見る(涙)"」(1977)
こちらは、2003年にベルギーのテレビで放送された、「ブレル没後25周年記念コンサート」からの映像です。
11.「une ile "孤島"」(1962)
12.「ne me quitte pas "行かないで"」(1958-59)
https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10096189787.html(「ブレル」がテーマのこれまでの記事)
https://ameblo.jp/daniel-b/themeentrylist-10095603016.html(テーマ「スターマニア」の記事一覧)
さて、昨年(2018年)は、「訃報」が「相次いだ」と感じましたが、「5月7日」の、このモラーヌ(1960-2018)の「急逝」には、本当に驚きました。
その「前日(6日)」も「ステージ」に立っていたにもかかわらず、翌7日には、ブリュッセルの「自宅」で亡くなっているのが「発見」されたということでした。
あれからもう「1年」です...。
当初は、「心臓発作らしい」とも言われていましたが、最終的には、「事故死(転倒など)」という「報告」がなされたようです。
いずれにしても、本当に「残念」でなりません。
この「偉大な才能」の「喪失」も、「モラーヌ」という、「1人の女性」が「失われた」ことについても...。
モラーヌは、1960年11月12日生まれ。
ベルギーの首都ブリュッセルの南の郊外、イクセルの出身ですが、住んでいたのは、北の郊外、「スカールベーク地区」というところで、ジャック・ブレル(1929-78)の「出生の地」でもあります。
昨年、「没後40周年」(「10月9日」が「命日」)を迎えた、シャンソン界の「3大巨匠」の1人、ジャック・ブレルですが、今年は「生誕90周年」(「4月8日」が「誕生日」)と、これもまた「記念の年」に当たっています。
モラーヌは、自身が「大ファン」であり、「同郷の大先輩」でもあるブレルの曲を数多く採り上げていました。
亡くなった当時も、ブレルを歌うアルバムを「準備中」と報じられており、その通り、時間をかけて、「入念」に、そのアルバムは制作が続けられていたようです。
「声帯の手術」などもあって、「2年」ほどの「ブランク」がありましたが、「復帰早々」の、この「大仕事」に、モラーヌは、大変「情熱」を注いでいました。
しかし、今回採り上げたこのアルバム「Brel」は、もしかすると、「お蔵入り」になってしまったかも知れない作品だったということです。
実際には「未完成」だったということで、レコード会社はリリースに「難色」を示していたようですが、モラーヌの娘が、
「この最後の録音(遺言)は、絶対に出されるべきだ」
と働きかけたことにより、発売が「実現」しました。
亡くなる直前である昨年5月3日には、モラーヌ自身が、「14曲が"マケット(試演)"の形で録音されており、すでにアレンジャーも決まっています」とコメントしていました。
アルバムに収録された曲は、その中の「12曲」ですが、どの曲にも、ブレルへの「並々ならぬ愛」を感じることが出来ると思います。
まさに「正統派」です。
収録曲は、次の通りです。
1.je ne sais pas(1958) 私は知らない
2.Vesoul(1968) ヴズール(お前の言いなり)
3.la chanson des vieux amants(1967) 懐かしき恋人の歌
4.la quete(1965-68) 見果てぬ夢(「ラ・マンチャの男」より)
5.la ville s'endormait(1977) 眠れる街
6.fils de...(1966-67) 子どもはみんな
7.Rosa(1962) ローザ
8.Orly(1977) 悲しみのオルリー
9.quand on n'a que l'amour(1956) 愛しかないとき
10.voir un ami pleurer(1977) 泣く友を見る(涙)
11.une ile(1962) 孤島
12.ne me quitte pas(1958-59) 行かないで
まだ「記事」を書くことが出来ていない曲も何曲か含まれていますが、実に「モラーヌらしい」選曲だと思います。
6曲目の「fils de... "子どもはみんな"」(ブレルの「オリジナル」は、1966年10月の「アデュー・オランピア」で発表された作品です)は、
「誰の息子であろうと、すべての子どもはみな、あなたがたの子どもと同じ...」
と歌われ、ブレル自身の「遺作」でもある、10曲目の「voir un ami pleurer "泣く友を見る(涙)"」(1977)ともども、まさに、モラーヌの、その「温かい人柄」を感じることが出来る「選曲」、「歌唱」だと思います。
その「voir un ami pleurer "泣く友を見る(涙)"」は、元々は、盟友ジュリエット・グレコ(1927-)に捧げられた作品で、グレコは「雄弁」にこの曲を歌い上げていますが、モラーヌの歌には、その「無力感」が感じられ、その意味では、むしろ、「こちら」の方が、「ブレル本人の歌」に「近い」と言えるでしょう。「情緒感」にもあふれた、まさに、「モラーヌならでは」の名唱だと思います。
5曲目の「la ville s'endormait "眠れる街"」(1977)も「美しい曲」ですが、本来は、「女性」が歌うような曲ではありません。
この曲で歌われているのは、「女嫌い」とも言われたブレルの、その「女性観」の「終着点」と言えるものなのです(ですから、私も、「記事」にすることを、少し「ためらっている」ところがあります...)。
しかし、モラーヌは、あえてこの曲に挑みました(さすがに、「当該の箇所」は、モラーヌ自身は「カット」して歌ってはいますが...)。
それだけ、この曲には、「美しさ」と「深さ」があるのだと、私もそう思います。
内容は極めて「哲学的」で、その中で、「女性」に対する「結論」(決して、「女性差別」の歌ではありません)も「語られている」のです...。
こちらがブレルの「オリジナル録音」(1977年9月8日録音)です。
その「深さ」を「実感」していただけます。
かと思えば、7曲目の「Rosa "ローザ"」(1962)のように、半ば「戯れ歌」とも言える、「ユーモア」あふれる曲も歌っています。
もっと「茶目っ気」があっても良かったかと思いますが、ブレルに対する「リスペクト」は充分に感じられます。
こちらは、大変「貴重」な、発表当時(1962年)の、ブレル自身の「MV」です。
ここでは、「レコード音源」を用いていますが、「実際のライヴ」(「クノック1963」、また、「テレビ出演」の映像もあります)では、さらに「面白おかしく」歌っています。
オリジナルでは、その「Rosa "ローザ"」と「同じアルバム」(「les bourgeois "ブルジョワの嘆き"」)に収録されている「une ile "孤島"」は、現在では「非常に珍しい」曲の1つだとも言えるでしょう(「オリジナル」以外では、まず「聴くことがない」曲です...)。
現在では「ほぼ忘れられた」、この「レア」な曲を採り上げること自体、その「ブレル愛」の大きさを感じますが、曲そのものは大変「美しい」作品です。「再発見」の機会を与えられたことに「感謝」したいと思います。
「オリジナル」も載せておくことにしましょう。
こちらは、亡くなる前日、ブリュッセル出身の女性歌手、ティフ・バロウ(1987-)とのデュエットで、「la chanson des vieux amants "懐かしき恋人の歌"」(1967)を歌った映像(2種)です。あらためて、モラーヌのご冥福をお祈りいたしましょう...。
https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12376674617.html?frm=theme(「懐かしき恋人の歌」の記事)
「温かく、ジャジーで、ビロードのような」深い声で、「雰囲気のある歌」をたくさん聴かせていただきました。
昨年の「急逝」からはや「1年」...。
今回は、昨年10月に発売された、モラーヌの「遺作アルバム」、「Brel」について書いてみました。
それではまた...。
Brel -Digi-
972円
Amazon |
Les Marquises
714円
Amazon |
Les Bourgeois
Amazon |
(daniel-b=フランス専門)