「オリジナル録音」です。

さて、今回からは、「春の曲」で行ってみたいと思います。

 

今回の曲は、これまで「何回」も、「採り上げたい」と思っていたのですが、「動画サイト」への投稿がなく、半ば、「あきらめかけて」いました。

 

ところが、「昨年」になってようやく「アップ」されたことを知り、私も、「記事を書くタイミング」を見計らっていました。

 

この作品は、「春の曲」と言えますから、これでようやく、書くことが出来ます。

 

今回の曲、「attendez "待って(待ってください)"」(1971年)を歌っているのは、カトリーヌ・ソヴァージュ(1929-98)という歌手です。現在ではもう、「知らない」人の方が「多い」のではないかとも思いますが、「レオ・フェレ歌い」として大変「有名」な方で、かつては「来日」もしていましたし、日本でも多くのレコードが発売されていました。

 

カトリーヌ・ソヴァージュは、1929年5月26日にナンシー(パリの東281km)に生まれ、本名は、ジャニーヌ・ソーニエといいます(芸名の「カトリーヌ」は、「幼なじみ」の名前だということです)。

 

1940年からスイスのジュネーブにもほど近い、アヌシーで過ごしましたが、その頃から、「歌」や「演劇」に「情熱」を燃やしたということです(彼女もやはり、シャルル・トレネに「大きな影響」を受けたようです)。しかし、家庭は「厳格」でした。

 

それでも、1947年には単身パリへと向かい、ジャン=ルイ・バロー(1910-94)の演劇研究所の門を叩きました。

 

ある時、友人たちとのパーティで「歌」を披露したところ、たまたま居合わせた、キャバレー「屋根の上の牝牛」のディレクター、モイゼスに気に入られ、翌日には、「そのステージ」に上がっていたということです。

 

その後、スイスで「大成功」を収めましたが、パリへ戻ってからは「苦労の日々」が続きました。

 

本格的な「デビュー」となったのは、1953年のことで、レオ・フェレ(1916-93)の作品、「Paris canaille "パリ・カナイユ(パリ野郎)"」を歌って「大ヒット」させたことによるものでした。

 

2人は、1949年頃出会い、ステージをともにしていたようです。「その頃」というのは、フェレにとっても「厳しい」時代でしたが、カトリーヌは、その「良き理解者」であったようです。

 

1953年2月、フィリップス社の名プロデューサー、ジャック・カネッティ(1909-97)の経営する「トロワ・ボーデ(3匹のロバ)」のステージで、そのカネッティの勧めで「Paris canaille "パリ・カナイユ(パリ野郎)"」を歌いました。

 

結果は「大成功」。「爆発的なヒット」となり、その後、この曲を「主題歌」に「映画」も作られました(1955年)。カトリーヌは、この映画にも出演し、劇中でこの曲を歌ったということです。

 

こちらがその「Paris canaille "パリ・カナイユ(パリ野郎)"」です。初期のフェレの「代表作」であると同時に、カトリーヌ・ソヴァージュにとっても「代表作」となりました。シャンソンの「スタンダード」としても「有名」で、イヴ・モンタン(1921-91)や、ジュリエット・グレコ(1927-)の歌でもよく知られています。

(ちなみに、この動画の「オケ」は、レイモン・ルフェーヴル。1965年10月7日の映像だということです)

 

そうした「有名作品」ではありますが、この曲を書いた当初には、イヴ・モンタンには「見向きもされなかった」という、これまた、「有名」なエピソードもあります。

 

今回紹介する曲、「attendez "待って(待ってください)"」は、レオ・フェレの作品ではありませんが、彼の「一番の代表作」とも言える、「avec le temps "時の流れに"」(1971)を歌ったアルバムに収録されたものです。

 

現在では、知る人ぞ知る、「隠れた名作」といった感じでもありますが、「日本人歌手」が「レパートリー」にしているという話もよく聞きます。

 

私がこの曲に出合ったのは、何と、「1982年」、つまり、「12歳」の頃のことです。当時、NHKの「テレビフランス語講座」で、ジャック・ブレル(1929-78)の「ne me quitte pas "行かないで"」に出合ったことから、とにかく、「シャンソン」、「フランスもの」に目が向いていた私は、ある夜、テレビで、「衝撃的な歌声」に出合うことになったのです。

 

もう「深夜」と言える時間帯に、とても「低く」、「ハスキー」な、それでいて、「哀感」を感じさせる歌声...。

 

声を「振り絞る」ような「その歌」は、決して「心地よい」ものではありませんでしたが、「これ以上はない」くらいの「重量感」を持って「響いて」きたのです。

 

私は、「とっさの思い」で、ラジカセをテレビにつなげて、その歌を「録音」しました。

 

「深夜」の上、「とっさ」のことでしたので、「曲名」を控えることは出来ず、「歌手の名」も知らないまま、長い間、「そのまま」となってしまいました。

 

その後、何とか「見当」を付けられるようになったのは、2年か、3年か経った頃のことでしょうか。当時「発売」となった、国内盤アナログの「2枚組ベスト」、「レオ・フェレのすべて/偉大なるシャンソン」(L35B-1106/7)を手にしてからのことです。

 

この「ベスト盤」には、フェレ自作の詞以外の、詩人による「詩」に曲付けされた作品も含んでいますので、「現在の(ベスト盤の)編集方針」とは大きく異なるところもありますが、そのおかげで、まず、詩人ルイ・アラゴン(1897-1982)の詩による名作、「est-ce ainsi que les hommes vivent? "男の生き方"」(1959-61)にたどり着いたのです。

 

フェレのレコードでこの曲を聴いたとき、すぐに、「あの時テレビで聴いた曲」の1つだと分かりました。

 

(今から)数年前、「その当時」の、音質としては「最悪」な、その「テープ音源」を、「DVD」に「デジタル録音」して「保存」する作業を行ないました。

 

「微か」にしか聴こえない、「ヒスノイズ」だらけの音源ですが、確かに、「est-ce ainsi que les hommes vivent? "男の生き方"」と、今回の曲、「attendez "待って(待ってください)"」に間違いはありません。

 

当時は、現在と違って、「インターネット」があるわけではありません。「レオ・フェレ」のレコードの「ライナー」などから、「カバーしている歌手」として、「一番」に名前が挙がっていた、この「カトリーヌ・ソヴァージュ」を手がかりに、図書館で、「必死」になって、「当時の新聞」(縮刷版)のテレビ欄で、「あの番組」を探しました。

 

結果として、「あの夜の放送」が、1982年7月の、「草月ホール」での、「カトリーヌ・ソヴァージュ」のライヴに「間違いない」ことまでは突き止めました。しかし、先の「フェレの曲」までは「分かった」ものの、もう一方の、「この曲」のタイトルは、結局「分からずじまい」でした...。

 

その後、1981年10月、同ホールでのジュリエット・グレコ(1927-)のライヴ盤を手にしたとき、そのライヴの「招へい者」からの案内で、その「カトリーヌ・ソヴァージュ」の「ライヴ盤」を、「希望者限定」で「販売」する旨が、ジャケットの「帯」に書かれていました。しかし、「時すでに遅し」でした...(この「ライヴ盤」は、フランスでも販売されたようですが、その「2曲」のうちでは、「Attendez ""待って(待ってください)」のみの収録です)。

 

とにかく、「曲名」が分からず、分かる「当て」もない状況でしたから、私はとにかく、その、「耳に残っている音」を「忘れない」ようにし(実際には「インパクトのある声」でしたから、忘れようにも、「忘れられません」でした...)、自分で「自由」に詞を付けて「歌ったり」もしていましたね...。

 

「転機」となったのは、やはり、「ここ数年」のことでしょうか。

 

歌い出しが「attendez(待って)」であることは分かっていましたので、それで「カトリーヌ・ソヴァージュ」ならば、「検索」すれば、「出て来る」はずです。しかし、最初のうちは、データが「アップされていなかった」のか、なかなかたどり着けませんでした。

 

そうこうしているうちに、神保町の「富士レコード社」で、先述の「アナログ盤」、「時の流れに/カトリーヌ・ソヴァージュ」(SFX-5073,1973年日本盤)を、「先」に手にしてしまったのです(これで、「このアルバム」に、「この曲」が収録されていることを知りました)。

 

「アナログな探し方」の「結末」は、やはり、「アナログなもの」となったのでした。

 

まさに、「執念」...。

 

これが、この曲にまつわる、「私の思い出」です...。

 

ちなみに、こちらが、ルイ・アラゴン詩によるレオ・フェレの曲、「est-ce ainsi que les hommes vivent? "男の生き方"」(1961)です。録音は、フェレと同じく「1961年」ですから、「30代」に入ったばかりの「若々しい」歌声です。この「20年後」の、「鬼気迫る」歌唱の「重々しさ」とはとても「比較」になりませんが(その音源が「ない」のは、本当に「寂しい」ばかりです...)、この曲は、「詩の内容」自体も、かなり「重く」、「生々しい」ものです(こちらは「冬が似合う曲」と言えるでしょう...)。

 

アルバムタイトル曲、「avec le temps "時の流れに"」も載せておきましょう。この映像は、「オリジナル盤」の「ジャケット写真」です。アルバムは、この曲が「トップ」、「attendez "待って(待ってください)"」が「ラスト」ですが、「CD化」は、どうやら、「されていない」ようです(ですので、今回、載せられる商品が「ありません」でした...)。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12335171443.html?frm=theme(参考:レオ・フェレ「時の流れに」の記事)

 

それでは以下に、「attendez "待って(待ってください)"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

この曲の詞は、ジャン=リュック・モレル(1950-)が書いたということですが、それだと、当時何と「21歳」!!

「早熟」も「早熟」ですねー。当時のライナーを書かれた蘆原英了先生(1907-81)が知らなくても、「無理」はありません...。

 

曲は、セルジュ・ラマ(1943-)の作曲者・伴奏者としても有名な、「元歌手」、イヴ・ジルベールが書いています。

 

この「オリジナル録音」は、とても「懐かしい」、「優しい」響きがします。まさに「春の歌」です。

 

カトリーヌ・ソヴァージュは、ジュリエット・グレコ同様、「詞」を「重要視」し、「内容の濃い歌」を歌ってきた、まさに、「アーティスト」だったと言える歌手だと思います。

 

1982年の「草月ホール」での公演は、たしか「ピアノ伴奏」のみだったと思いますが、それに「似た」感じの映像を、「INA」(「フランス国立視聴覚研究所」)のアーカイブで見つけました(「YouTube」にはアップされていません)。

 

1984年4月21日の映像とのことで、ダニエル・ラキエのピアノ、ピエール・二コラ(1921-90)のベース(彼は、ジョルジュ・ブラッサンスのベーシストとして「有名」です)の伴奏で、「振り」を交えながら歌っています。とても、「軽やか」な印象です。

 

一応、「リンク」を貼っておこうと思いますが、パソコンの「プレーヤー」を「アップデート」しないと、見れないようです...(私も、現在、「見れない」状態です。見ることが「出来る」方はぜひ!!)。あらかじめ、ご了承ください...。

https://www.ina.fr/video/I07267480

 

それではまた...。

 

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attendez  待って

 

attendez que je me jupe

apres vous pourrez entrer

attendez que je me dupe

moi-meme, sur ma beaute

 

ちょっと待って スカートをはくまで

それからなら入っていいわ

ちょっと待って 私がだまされるまで

自分自身の美しさに

 

attendez que je me lune

et enjolive mes joues

que je me fruite, et me prune,

de la tempe jusqu'au cou

que je voile mon haleine,

d'un leger parfum de jour

avant que cheveux et peigne

s'emmelent comme toujours

la la la la....

 

待ってて いま頬に紅をさすから

きれいにするから

果物のようになるから

こめかみから首まで

息もすっきりさせて

軽く香水を振るわ

いつものように

髪をとかす前に

ララララ....

 

attendez que je balaie

les pointes des cils danseurs

que j'orchestre tous mes traits

sans me permettre une erreur

que je nuage mon teint

d'un peu de poudre de riz,

que j'adoucisse mes mains

que le sommeil a meutries

 

待ってて 踊り上がった

まつ毛を直すから

それから、間違えないように

眉毛も書き込むわ

パウダーで

ちょっと顔の色もつけて

寝不足で荒れた手も

滑らかにするから

 

attendez que je me jupe

apres vous pourrez entrer

attendez que je me dupe

moi-meme, sur ma beaute

 

ちょっと待って スカートをはくまで

それからなら入っていいわ

ちょっと待って 私がだまされるまで

自分自身の美しさに

 

il faut que je m'assaisonne

d'un peu de printemps nouveau

mais que des taches d'automne

rougissent encore ma peau

il faut que je m'accomode

de ces cernes sous les yeux,

ca m'ennnuie, mais c'est la mode,

il faut bien la suivre un peu

la la la la...

 

新しい春の季節に合わせて

少しはそれらしくしなくちゃね

でも、秋に出来たしみが

まだ赤く残ってる

眼の下のシャドウにも

慣れなきゃ

嫌だけど、これが流行だもの

少しはついて行かなくちゃね

ララララ...

 

je suis artiste et modele

mon miroir est un musee

qui, chaque jour, se renouvelle

quand je change de portrait

il ne me reste a present

que ma bouche a dessiner

voyez, j'ai pris peu de temps

bientot, vous pourrez entrer

la la la la...

 

entrez!

 

私は芸術家でモデルで

鏡は美術館よ

それは、毎日、新しくなるの

私が化粧を変えるたびに

さあ、もう、後は

口紅を塗るだけだわ

ほら、時間はかからなかったでしょ

もうすぐ、入っていいわ

ララララ...

 

入って!

 

(daniel-b=フランス専門)