「11月24日」は、偉大な女性歌手バルバラ(1930-97, 本名モニック・セール)の「命日」となります。それも、今年は、「没後20周年」の「記念の年」に当たります。ですので、今月は、可能な限り、このバルバラの名作を紹介していきたいと思っています。

 

テーマが「バルバラ」となっている記事の一覧を貼っておきます(実際には、他のテーマでも紹介している曲が何曲かあります)。

https://ameblo.jp/daniel-b/themeentrylist-10097047678.html

 

さあ、いよいよこの「特集」も「終盤戦」です。ここから先は、基本的に、ライヴでも「終盤」(つまり、「クライマックス」ですね)に歌われた曲や、それに関連する名曲を、続けて紹介していきたいと思います。まさに、ライヴ会場の「熱狂」を「再現する」ような、そんな記事に仕上げていきたいと思っています。

 

今回ご紹介する曲は、ファンへの「答礼の歌」としても大変「有名」な作品です。

バルバラの「代表作」の1つ、「ma plus belle histoire d'amour "わが麗しき恋物語"」(1966-67)をお届けいたします。

 

バルバラは、1964年10月21日から、11月10日まで、「ボビノ劇場」の「看板スター」でもあった、ジョルジュ・ブラッサンス(1921-81)の公演の「2番手スター(「ヴデット・アメリケーヌ」)」として、同劇場に「初登場」しましたが、「彼女の悲しいシャンソンは、ブラッサンスの陽気な歌を、ほとんど忘れさせてしまうほどだった...」と、「大絶賛」を博することにもなりました。

 

この「大成功」や、「ACC(アカデミー・シャルル・クロ)ディスク大賞受賞」を受けて、翌1965年9月には、この「ボビノ劇場」に、「真打ち(「グランド・ヴデット」)」としての出演が決まりました。

 

その「公演初日(9月15日)」には、ラジオ局「France Inter」が、「バルバラ・デー」と銘打って、彼女の「1日」を特集しました。その夜、彼女は、初めて、「グランド・ヴデット」として「ボビノ劇場」のステージに立ちましたが、その時の「感動」をもとに作られたのが、この曲、「ma plus belle histoire d'amour "わが麗しき恋物語"」なのです。

 

そういう経緯もありますから、この作品は、単なる「恋愛(個人対象)」の曲ではなく、「来場者(複数)」に対する「感謝の曲」という意味合いもあるのです。いや、むしろ、「後者」の考え方の方が「一般的」となっています。

 

これまでも書いているように、フランス語の「vous(あなた)」は、単に、「tu」の丁寧な言い方というだけではありません。「二人称複数形」という説明もある通り、「あなたがた」をも指し、もちろん、「呼びかけ」にも使います。

10月6日付けの記事、「フランス・ギャル "j'ai besoin de vous"」でも、まさに、「このこと」を書きました。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12316824633.html

 

今回のこの作品では、自分が、「時には不誠実だった」と認めながらも、それでも戻って来てくれた「観客たち」に対して、「感謝の気持ち」を表しています。

 

「それは、ある9月の夜のことでした」

 

この歌詞は、まさに、1965年9月の、「ボビノ劇場公演」のことを指しています(サブタイトルとして、「1965年の聴衆に」と書かれることがあるのはこのためです)。

 

「ici meme」は、「まさにここで(同じ場所で)」ということですが、この曲が発表されたのが、1966年12月の、同劇場での公演であったからでもあります(スタジオ録音は、1967年4月に行なわれました)。しかし、当然ながら、後には、これらの「限定の意味」も薄れ、単に「(過去の)ライヴ会場」を指すこととなり、この歌詞に差し掛かる度に、大きな「拍手」が巻き起こりました。

 

同じ1966年から1967年の作品では、4月22日付けで、「Madame "マダム"」も紹介いたしました。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12267985850.html

 

その時、載せることが出来なかった、「ボビノ1966-67」の音源を、あらためて、以下に載せておきます。

https://www.youtube.com/watch?v=GFy79cJt2pg

 

こちらの曲、「parce que (je t'aime) "愛するゆえに"」も好きな曲です。とても切ない「別れの曲」ですが、とても「哲学的」でもあります。

 

「au coeur de la nuit "真夜中に"」がないのは何とも「残念」!! でも、「y aura du monde "私の埋葬式に"」はありました。こちらの「ボビノ1966-67」の音源は、バルバラの気分も乗っていて、「最高」のパフォーマンスです。

 

「a chaque fois "愛の語らいにはいつも"」は、「ボビノ1966-67」の、「燃えるような」パフォーマンスが、動画サイトでは見つかりませんでしたが、代わりにこれをどうぞ。

 

「les rapaces "欲ばりども"」も、「ボビノ1966-67」の音源が「最高」なのですが、ちょっと今回は、音質の良いものが見当たらなくて、ここに載せることはかないませんでした...。

 

変わって、バルバラの「答礼の曲」として有名なもう1つの作品が、この「chapeau bas "脱帽"」です。前回紹介したアルバム「BARBARA CHANTE BARBARA」(1964)にも収録されていますが、元は「最初期」(1956年頃)の作品だということです。「オランピア1978」の録音はありませんでしたが、こちらのパフォーマンスは、それに「近い」ものです。

 

「ma plus belle histoire d'amour "わが麗しき恋物語"」の、今回載せた映像ですが、最初のものが、1978年のオランピア劇場公演の音源です。パフォーマンス的にも、とても「素晴らしい」ものです。

2番目のものは、1987年のシャトレ劇場公演のもので、「le piano noir "黒いピアノ"」(1987)という、愛らしい小品に引き続いて歌われます。こちらも「お薦め」です。

3番目、4番目が、「発表当時」の、1967年の映像となります。

 

以下に、歌詞も載せておきましょう。

 

さて、次回ですが、バルバラのライヴのプログラムでは、「本割りのラスト」に置かれることが多かった名曲、「le mal de vivre "孤独のスケッチ"」(1965)について書いてみたいと思います。

「le soleil noir "黒い太陽"」(1968)同様、とても「重い」曲ではありますが、この曲をなくしてはバルバラは語れません。「感動」もまたハンパありませんので、この機会にどうぞお聴きください。

 

それではまた...。

 

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ma plus belle histoire d'amour  わが麗しき恋物語

 

du plus loin que me revienne

l'ombre de mes amours anciennes,

du plus loin du premier rendez-vous

du temps des premieres peines

lors, j'avais quinze ans a peine,

coeur tout blanc, et griffes aux genoux

que ce fut, j'etais precoce

de tendres amours de gosse

ou les morsures d'un amour fou,

du plus loin qu'il m'en souvienne

si depuis j'ai dit "je t'aime"

ma plus belle histoire d'amour, c'est vous

 

はるか遠い彼方からよみがえる

昔の恋の影

はるか昔の、最初のデートから

最初の苦しみの頃から

その頃、私はまだ15歳

心は真っ白で、膝にはかすり傷も

なんて「早熟」だったのかしら

「女の子」の幼い恋

激しく燃えた恋の傷あと

はるか昔を思い出すと

初めて「ジュ・テーム」と言ったときから

私の一番美しい恋の物語は...それは、「あなた(がた)」

 

c'est vrai, je ne fus pas sage

et j'ai tourne bien des pages

sans les lire, blanches et puis rien dessus,

c'est vrai, je ne fus pas sage

et mes guerriers de passage

a peine vus, deja disparus

mais a travers leurs visages

c'etait deja votre image

c'etait vous deja et le coeur nu,

je refaisais mes bagages

et poursuivais mon mirage,

ma plus belle histoire d'amour, c'est vous

 

本当に、私はバカでした

いっぱいページをめくりながら

何も読まず、中身は「真っ白」のまま

本当に、私はバカでした

通りすがりの戦士たちは、

見かけるやいなや、すぐに消えてしまった

それでも、彼らの顔の向こうに

すでに、「あなた(がた)」のイメージが浮かびました

「あなた(がた)」の...そして、「裸の心」で

私は、また荷物をまとめ

「あなた(がた)」の「幻影」を追い求めました
私の一番美しい恋の物語は...それは、「あなた(がた)」

 

sur la longue route, qui menait vers vous

sur la longue route, j'allais, le coeur fou

le vent de decembre, me gelait au cou

qu'importait desembre, si c'etait pour vous

 

長い道をたどって、「あなた(がた)」のもとへ向かいました

長い道をたどって、私はひたすら向かいました

12月の風は、首筋を凍らせるけれど

「あなた(がた)」のためならば、かまいませんでした

 

elle fut longue la route

mais je l'ai faite la route

celle-la qui menait jusqu'a vous,

et je ne suis pas parjure

si ce soir,  je vous jure

que pour vous, je l'eus faite a genoux

il en eut fallu bien d'autres

que quelques mauvais apotres

que l'hiver ou la neige a mon cou,

pour que je perde patience

et j'ai calme ma violence,

ma plus belle histoire d'amour, c'est vous

 

それは長い道のりでした

それでも私は行きました

それは、「あなた(がた)」のもとへ向かう道でした

私は、「偽りの誓い」はしません

もし今夜、「あなた(がた)」に誓うのなら

「あなた(がた)」のために、私は、「膝で這ってでも進んだ」、と

信心深くない人たちや

冬や、首にかかる雪も

私の忍耐を失わせるほどではありませんでした

私は、激しい感情を鎮めました

私の一番美しい恋の物語は...それは、「あなた(がた)」

 

mais tant d'hivers et d'automnes

de nuits, de jours et personne,

vous n'etiez jamais au rendez-vous

et de vous perdant courage

soudain me prenait la rage

mon Dieu, que j'avais besoin de vous

que le diable vous emporte!

d'autres m'ont ouvert la porte,

heureuse, je m'en allais loin de vous

oui, je vous fus infidele

mais vous revenez quand meme,

ma plus belle histoire d'amour, c'est vous

 

たくさんの冬や、秋

夜や昼が過ぎても、誰1人

「あなた(がた)」は、決して来てはくれなかった

そのおかげで私は気力を失いながら

不意に、「怒り」がこみ上げて来ました

ああ、私には、「あなた(がた)」が必要だったのです

「あなた(がた)」など、どこかに行ってしまえばいい!

他の人たちが、私に扉を開けてくれ

おかげで、私は、「あなた(がた)」から遠くへ逃げることが出来ました

ええ、私は「不誠実」でした

それでも、やっぱり、戻って来てくれたのですね

私の一番美しい恋の物語は...それは、「あなた(がた)」

 

j'ai pleure mes larmes, mais qu'il me fut doux

oh qu'il me fut doux, ce premier sourire de vous

et pour une larme qui venait de vous

j'ai pleure d'amour, vous souvenez-vous?

 

私は涙を流しながらも、幸せでした

ああ、本当に幸せでした 「あなた(がた)」の、その微笑みで

「あなた(がた)」のために流した涙

愛のために泣いた私を、憶えていますか?

 

ce fut un soir en septembre,

vous etiez venus m'attendre

ici meme, vous en souvenez-vous?

a vous regarder sourire,

a vous aimer sans rien dire

c'est la que j'ai compris tout a coup

j'avais fini mon voyage

et j'ai pose mes bagages,

vous etiez vunus au rendez-vous,

qu'importe ce qu'on peut en dire,

je tenais a vous le dire:

ce soir, je vous remercie de vous

qu'importe ce qu'on peut en dire,

tant que je pourrai le dire(je suis venue pour vous dire),

ma plus belle histoire d'amour...c'est vous!

 

それは、「ある9月の夜のこと」でした

「あなた(がた)」は、私を待つためにここへ来てくれました

「同じ、この場所」へ 憶えていますか?

「あなた(がた)」の微笑みを見ただけで

何も言うことなく、「あなた(がた)」を愛し

それで、すぐに私には分かったのです

私の「旅」は「終わった」のだと

私は、荷物を置きました

「あなた(がた)」はやっぱり来てくれたのですね

何を言おうと、いったい、何になるのでしょう

私がどうしても言いたかったのは

今夜、「あなた(がた)」への「ありがとう」の気持ち

何を言おうと、いったい、何になるのでしょう

私が言えることはただひと言(私は、このことを言うためにここへ来ました)

私の一番美しい恋の物語は...それは、「あなた(がた)」!!

 

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(daniel-b=フランス専門)