本日は、「フランスもの」からは少し離れまして、この、イタリアを代表するプログレッシブ・ロックバンド、イ・プー(I Pooh)について、少し書いてみたいと思います。

小学生の頃に、NHKテレビフランス語講座の「今月のシャンソン」で、ジャック・ブレル(1929-78)に出合ったのがきっかけで、「シャンソン」の道に進むようになったことは、これまでにも書いてきました。彼は、「ベルギー」の出身でもありますし、私も、その頃にはもう、「北国」に対する「憧れ」みたいなものがありました。さらに、前々回のブログでも書いたように、その後、北欧フィンランドの音楽に触れたこともあって、私の「北国志向」は、「確実」なものとなったようです。そのためか、これまで、「イタリア」のポピュラー音楽、いわゆる「カンツォーネ」には、ほとんど目が向くことがありませんでした。「カンツォーネ」も、ヨーロッパでは「一大ジャンル」であり、有名な歌手も、歌も、「たくさん存在する」のに、です。
イタリア語の歌は、「某テレビ番組」のテーマソングを含めても、多分、10曲知っているかどうかという、ちょっと情けない話でもありました。

去る7月10日付けの、ユトリロさんのブログは、そんなイタリアを代表する、「国民的」バンド、「イ・プー」(バンド名は、「クマのプーさん」に由来するということです)について詳しく書かれたものでした。そして、20日には、過去の名作アルバムが再発売されることも合わせて知ることとなり、これを機に、「よし、聴いてみよう」となったのが、ユトリロさんおススメの名盤、「Alessandra "ミラノの映像"」(1972)だったのです。

イ・プーは、1966年に結成されたのですから、今年はなんと、「50周年」という記念の年になります。「スゴイですねー」どころの話ではありません。6月29日付けの私のブログで採り上げた「レ・フレール・ジャック」も、「約35年」で、一応の幕引きを行ないました。メンバーの「高齢化」もさることながら、「グループ」として活動する場合、その「モチベーション」を維持するのは、1人での場合よりも、はるかに大変なことだと思われます。もちろん、その「逆」も言えるのでしょうが、数ある有名バンドが、「意見の対立」などといった理由で、「解散」を発表したという話を、これまでに幾度となく、耳にしてきました。

そんな「イ・プー」も、残念ながら、この「50周年」を機に、その活動に「終止符」を打たれるそうです。これは、本当に「残念」だと思います。ここに載せた、いくつかの、「最近の映像」でも、まだまだその活動を「見ていたい」(または、「見てみたい」)、そう思わせるくらいの「パワー」を感じます(「初心者」である私が見ても、です)。「衰え」などまったく感じさせない、「現役感」を残したまま、本当に彼らは去っていくのでしょうか。

結成当初からのメンバー、ヴァレリオ・ネグリーニは、担当していた「作詞」に専念するために、バンドのメンバーからは外れましたが(1971年)、その後も、その「詞」で貢献し、「名作」を世に送り出し続けてきました。しかし、2013年1月3日に、「心筋梗塞」により急逝されたとのことで、このことが、今回の「解散」を「予感」させたと、ユトリロさんもコメントされています。

さて、アルバム「ミラノの映像」ですが、今回のこのCD、いわゆる「SHIM-CD」(Super High Material CD)という、普通のプレーヤーで再生可能な「高音質CD」だったのですが、「廉価盤」でもあったため、日本語訳までは付いていなかったことが少し残念でした。それでも、原詞は記載されていましたし(これも、「廉価盤」では、「載っていない」ことが多いです)、訳詞がない代わりに、解説で概要だけは記されていたので、わずかながらでも、「助け」にはなりました。あとは、とにかく、「虚心坦懐」に。これしかありません...。

第1曲目の「la nostra eta difficile "ロマンの世代"」からして、重厚なバックのオーケストラに驚かされます。続く「noi due nel mondo e nell'anima "愛のルネッサンス"」も、冒頭で鳴り響く弦楽が、まるで、映画「ニュー・シネマ・パラダイス」(1988)の「愛のテーマ」のようにも聴こえてきます。

私は、1970年生まれですから、70年代の音楽にはあまり詳しくないところもありますが(ABBAやノーランズは知っていますけれども...)、これが「70s」のテイストというものでしょうか。それとも、「イタリア的」なのでしょうか。

いずれにしても、「クラシカルなオケ」をフィーチュアリングしながらも、形としては「ロック」、それも、調和のとれた「バラード・アルバム」に仕上がっているところが、今作の本当に素晴らしいところなのです。

どの曲も素晴らしいのですが、とりあえず、アルバム「ミラノの映像」(全12曲)からは、4曲を選んでみました。

1.noi due nel mondo e nell'anima 愛のルネッサンス(2016年公開の最新映像)
2.noi due nel mondo e nell'anima 愛のルネッサンス(オリジナル盤)
3.la nostra eta difficile ロマンの世代
4.signora 季節の終わり
5.donna al buio, bambina al sole 愛の後に美しく燃える君

最初に挙げた「愛のルネッサンス」は、「最新」の公式映像で、今年の2月にアップされています。「衰え」を感じさせるどころか、その「表現力の凄さ」は、「オリジナル盤」の頃を、はるかに凌駕しているとも思えます。

「愛のルネッサンス」は、このアルバムからの「先行シングル」の候補として、「nascero con te "初めての恋人"」とともに名が挙がりましたが、結局、「甲乙付けがたい」とのことで、「両A面」扱いでリリースされたそうです。
「僕らは死んでもふたり一緒」という、真実の愛の強さを歌ったもので(CDの解説より)、このアルバムを代表する作品であるのはもちろんのこと、「イ・プー」を代表する作品の1つであることもまた、確かだと思います。

「ロマンの世代」は、「悩み多き」青春時代を歌ったもの、「季節の終わり」は、「年上」の女性との別れを歌ったものとのことです(CDの解説より)。
「愛の後に美しく燃える君」は、結ばれた2人の「愛の行方」について歌った曲と解説されていますが、私は、所々に挿入されるストリングスの強奏が、とにかく印象的に思います。

これを書くに当たり、歌詞の「翻訳サイト」や、「ウィキペディア」等も参考にしました。

そんな中で見つけたのが、その後に挙げた、「Parsifal "パルシファル"」(1973)で、演奏時間は、何と、「10分前後」という「大作」ですが、聴くと確かに「名曲」です。ウィキペディア(日本語版)にも、「全レパートリーの中でも、1、2を争う人気の曲」と書かれています。この映像は、2013年のライヴとのことです。

ユトリロさんに倣って、最後は、ミラノ・ドゥオーモ広場で歌う「Chi fermera la musica "永遠に向かって"」を、ここでも採り上げてみました。

「惜しまれて去るのが華」...と言いますが、やはり、
「カッコいい人はカッコいいままで...」

これは、「万国共通の理想」のようです...。

(daniel-b=フランス専門)