ダニエル・バラボワーヌ(1952-86)を特集して書いています。

1977年の2ndアルバム「les aventures de Simon et Gunther...Stein」は、「ベルリンの壁」をテーマにした「意欲的」な作品でありながら、「商業的」には、誰もが危惧したように「低調」でした。
テレビで「lady Marlene」を歌ったところ、それがミシェル・ベルジェ(1947-92)の目に留まり、ロック・オペラ「starmania」の主役(ジョニー役)に抜てきという「幸運」には恵まれましたが、「自作」の発表の場である、肝心のレコード会社(バークレー社)からは、「契約解除寸前」の危機にあったのです。

それを救ったのが、ダニエルを発掘した副社長、レオ・ミスィール(1925-2009)でした。社長から、「リストラ」の指示を受けたものの、その対象者の中から、唯一「残された」のが、彼、ダニエルだったのです(2月5日掲載分「le chanteur」もご参照ください)。

ここに挙げた曲は、ダニエルが「命運」をかけて作り上げた3rdアルバム「le chanteur」(1978年)を構成する楽曲です。「les oiseaux」は、このアルバムのトップを飾る曲で、「2部構成」という力作です。ベスト盤でもよく見かけますが、最新のものには残念ながら収録されていません。しかし、「この曲が収録されていないから買わない」という意見もあったほど、この曲の評価、人気は、現在でも「高い」と言うことができます。

第1部は、「ある朝の川辺の風景」を描いた、とても「抒情的」な作品です。

春になると、朝、モーゼル川のほとりに鳥たちを見に行く
僕が呼ぶと、彼らはやってきて、その翼で水面を撫でていく
そして船について飛んでいく...

ですが、こうも歌っています。

今朝、青空のもとで座り、モーゼル川のほとりで僕は泣く...
彼らを待つ...
どこででも同じだと言うように、彼らは、あまりにも高く飛び過ぎて、
眠っている間に死んでいるのだと...
迷った鳥たちは、もっと高くに飛び去ったのだろう...
太陽にその身を焼かれてしまったのかもしれない...

続けて第2部に入ります。こちらは、「メッセージ的」な作品です。

pleure pas ,cris pas
n'oublie pas que tu as vingt ans
ne te laisse pas vieillir ou tu vas mourir
notre vie n'est pas foutue
faut pas qu'on s'habitue

泣いちゃだめ 叫んじゃだめ
君が20歳だということを忘れないで
そのまま「歳をとっ」たり、「死ん」だりしちゃいけない
僕たちの「人生(命)」はそんなもんじゃない
(そんなことに)「慣れて」しまったらだめだ

reveille-toi
debout,tiens-toi droit!
on va leur montrer
qu'on peut tout changer
je sais bien que les oiseaux perdus
ne reviendront jamais
mais arrete de dire dans ton lit
que tu vas faire tout sauter
tout sauter
allons viens et calme-toi
parle-nous,ouvre-toi
reveille-toi!
debout!
tiens-toi droit!
on va leur montrer
qu'on peut tout changer

目を覚まして 立って 背筋を伸ばして!
やつらに見せてやろうよ なんだって変えることができるんだってことを
僕にはよくわかっている いなくなってしまった鳥たちはもう戻ってこないんだと
だから、君も、ベッドの中で、「すべてを無くしてしまいたい」なんて言うのはやめろよ
ほら、おいでよ 落ち着けって
話してごらん 心を開いて...
目を覚まして! 立って!
背筋を伸ばして!
やつらに見せてやろうよ なんだって変えることができるんだってことを

il faudrait retrouver
les oiseaux blesses
ils sont bien quelque part
on peut les sauver
vaut mieux tout recommencer
on peut pas se suicider

傷ついた鳥たちを見つけなくちゃ
彼らはそこかしこにいる きっと助けられるはず
もう一度やり直してみたほうがいいよ
「自殺」なんてしちゃいけない...

reveille-toi
debout! tiens-toi droit!
on va leur montrer
qu'on peut tout changer
je sais bien que les oiseaux perdus
ne reviendront jamais
mais arrete de dire dans ton lit
que tu vas faire tout sauter
tout sauter
alors viens et calme-toi
parle-nous, ouvre-toi
reveille-toi

debout!
tiens-toi droit
on va leur montrer
qu'on peut tout changer

respire! on va leur montrer
respire! qu'on peut tout changer
respire debout souffle
reveille-toi...

息を吸って...息を吐いて...

第1部と第2部は「対照的」とも思っていましたが、ちゃんと「つながり」があるのだと「再発見」しました。この第2部は、若者の「自殺防止」のメッセージなんでしょうね。当時のフランスでも、やはり、「社会問題」になっていたのでしょうか...。
この曲はやはり、「セット」で聴くべき曲だと思います。

そしてもう1曲。
「鳥」つながりということで、「oiseau de nuit "夜の鳥"」を。
この曲は、サウンド・エンジニアのアンディ・スコットに捧げられていますが、とても耳に残る、印象的なメロディの佳曲です。
(daniel-b=フランス専門)