『美しい娘と醜い娘』 | Jさんちの舞踏会

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 長崎で細々と、サルサとかタンゴとかやってます。ダンスに関する話題を、つれづれに書いていきます。

 そのうちにカーニヴァルの季節がやってきました。プリンスは、だれにも自分の正体を知られないで踊りまわれたら、とても楽しいだろうな、と思いました。
      ボーマン夫人『美しい娘と醜い娘』(角川文庫版『美女と野獣』より)

 ディズニーの実写版『美女と野獣』がDVD・ブルーレイ化されることになり、再び胸を躍らせている人も多いんじゃないだろうか。
 『美女と野獣』の記事の際に、原作の『美女と野獣』にはダンス・シーンが登場しないという話を書いたが、実を言うと、ボーマン夫人が書いた他の童話には、ダンス・シーンが登場するものが、いくつかあったりする。

 ボーマン夫人版の『美女と野獣』は、夫人が1757年に書いた『Magasin des Enfants』という、子供向けの童話集の中のひとつにすぎない。
 角川文庫から『美女と野獣』というタイトルで邦訳が出ていて、15の童話が収められている。
 そのうち、『王妃になった娘と農婦になった娘』『不運つづきの娘』『告げ口の好きな少女』『美しい娘と醜い娘』などに、ダンスと舞踏会の話題が出てくる。

 特に『美しい娘と醜い娘』は、仮面舞踏会が舞台となるので、この童話に注目してみよう。
 ある村に美しい娘ベロネットという少女がいて、その美しさから、プリンスと結婚することになったものの、「美人は三日で飽きる」の法則により、プリンスはしだいにベロネットに飽きて、ついにはベロネットを故郷の村に帰してしまうのだった。

 醜い娘の方のレードゥロネットは、最初はコンプレックスからひきこもりになるものの、コンプレックスをバネにして勉学を励むことで、才女として、まわりから認められるようになる。
 そんなレードゥロネットは、傷心のベロネットの為に、カーニヴァルの仮面舞踏会を利用して、ベロネットとプリンスが復縁する方法を、思いついたのだった。

 カーニヴァルの舞踏会に、プリンスはお忍びででかけ、ダンスを楽しみたいと思った。
 仮面を付ければ、身分と正体を隠すことができるからだ。

 1770年にフランスに嫁いだマリー・アントワネットも、身分を隠して仮面舞踏会に行ったという話があるように、18世紀フランスでは仮面舞踏会が盛んに行われたらしく、同時代の記述があるというのは、とても興味深いものだ。

 舞踏会は『告げ口の好きな少女』にも出てきており、こちらは「仮装舞踏会」と訳されていて、仮面だけではなく、仮装もしていたらしい。
 Wikipediaによると、1393年1月28日、フランス国王シャルル6世の時代に大規模な仮装舞踏会を開催した際に悲劇が起こった記録があるようなので、フランスでの仮装舞踏会は、かなり古くから行われていたようだ。

 最終的に、レードゥロネットの計らいで、ベロネットとプリンスは、よりを戻して、めでたしめでたしとなる。
 教訓としては、外見の美しさよりも、内面を磨くことが大事で、男を落としたかったら、知識を高めて話題豊富な女になれ、みたいな話だった。

 16世紀の『ロミオとジュリエット』、17世紀の『シンデレラ』、18世紀のこの童話、19世紀の『自負と偏見』、そして20世紀や21世紀には、数多く、ダンスとダンス・パーティを巡る恋愛が描かれている。

 以前、『恋愛を科学する』というテレビ特番で、サルサによって、オキシトシンというホルモンが分泌されるという研究をしている大学の研究室が出てきて、興味深かった。
 オキシトシンが分泌されると、愛情を感じたり、信頼感を感じたり、幸せな気分になったりするという。
 つまり、恋愛にも関係したホルモンだ。
 オキシトシンはスキンシップによって分泌されるということで、サルサによるスキンシップが、オキシトシンの分泌を促すのではないのか、という研究だった。
 とすると、古来より舞踏会が開かれてきたのは、科学的にも、正しい事なのかもしれない。

 恋愛に悩む現代人にこそ、ペアダンスと舞踏会は、必要なんじゃないだろうか?