前回のブログで、

帳簿等を“紙”で

保存しなければならない、

理由を説明しました。

 

今回は、それを踏まえて、

何故「電子帳簿保存法」が

制定されたのかについて

迫ってみたいと思います。

 

国税庁のホームページに、

「電子帳簿保存法創設の経緯」として、

次のような見解が掲載されています。

非常に重要なポイントですので、

全文を引用します。

 

「高度情報化・ペーパーレス化が

進展する中で、

会計処理の分野でも

コンピュータを使用した

帳簿書類の作成が

普及してきており、

経済界をはじめとする

関係各界から、

帳簿書類の電磁的記録

(いわゆる電子データ)及び

マイクロフィルムによる

保存の容認について、

かねてから強い要望が

寄せられていました。

政府においては、

こうした要望を受けとめ、

規制緩和推進計画等の閣議決定、

緊急経済対策、

市場開放問題

苦情処理対策本部決定等において、

平成9年度末までに、

帳簿書類の電磁的記録等による

保存を容認するための

措置を講ずることを決定していました。

このような関係各界からの

要望や政府全体としての取組を踏まえ、

平成10年度税制改正の一環として、

適正公平な課税を確保しつつ

納税者等の帳簿保存に係る

負担軽減を図る等の観点から、

国税関係帳簿書類の

電磁的記録等による

保存制度等の創設等が行われました。」

 

電子帳簿保存法の趣旨は、

この文章に集約されています。

 

ここで、とりわけ重要な点は、

「納税者等の帳簿保存に係る

負担軽減を図る」

という点です。

 

これは、具体的に何を

意味するのでしょうか?

 

私は、中小企業診断士という

肩書を持ちながら、

上場企業で経理として

勤務しています。

 

経理の人間なら

誰しも痛感することですが、

帳簿の整理というのは、

経理をしたことのない人が

考える以上に時間と労力がかかります。

そして、会社の規模が

大きければ大きいほど、

整理すべき帳簿は

膨大な量となります。

 

そのため、帳簿整理を行う

スタッフを雇う必要が出てきます。

 

経営者にとって、

帳簿整理“ごとき”にスタッフを

雇うことはできれば、

避けたいのです。

 

経営者は何よりも、

人件費の増大を嫌います。

 

経営者とすれば、

帳簿を“紙”として

整理しなければならないからこそ、

それに対応する

スタッフが必要になる。

 

コンピュータの性能が

飛躍的に向上した

現代社会において、

もはや、

帳簿を“紙”で保存する

必然性はないはず。

 

このような思想が、

国税庁のホームページにも

記載されている、

「経済界をはじめとする

関係各界から、

帳簿書類の電磁的記録

(いわゆる電子データ)及び

マイクロフィルムによる

保存の容認について、

かねてから強い要望が

寄せられていました」

という事態につながるわけです。

 

政府としても、

「適正公平な課税を確保」することは

当然とする一方で、

企業が生産性を向上させることで

課税所得が増大することは

望ましいのです。

 

だからこそ、

政府も電子帳簿保存という方向に

舵を切ったのです。

 

電子帳簿保存法制定の裏には、

このような思想が隠されていたのです。

 

次回は、電子帳簿保存法の

内容について説明していきます。