引き続いてそのあと会社倒産、自己破産のまきおこした波は次々に押し寄せてきました。

弁護士からの連絡を受けていの一番に来た大波は銀行の担当者です。

そのときの光景は前にも申しましたとおり、いまでも思い出すと怒りと口惜しさがこみあげてきます。

「残念ですな、なんとか打つ手はなかったんですかねえ」

「(残念なのは債権回収が出来んようになったお宅らの本音ですやろ。打つ手をいの一番になくしてしもうたのがお宅やおまへんか)もうこれ以上打つ手がなくなりました。ご迷惑をおかけして申し訳ございません」

「ま、我々銀行は社会的な立場がありますからそんなことはしませんが、たちの悪い債権者によってはご本人は勿論ご家族にまで危害が及ぶということも考えられますからね。安全をはかるためにどこか身を隠された方が」

「社会的な立場がなかったらお宅らもそんなことする腹ですかいな」と聞きたいのをぐっとこらえました。

私を見下すように椅子にふんぞりかえった担当マンの親切めいた言葉の裏に非難と冷笑が秘められていると感じたのは負け犬のひがみやったんでしょうか。

実際そのあとすぐに私や妻の銀行口座はロックされました。

これは当然なんですが、二、三日あとには娘の真美が「お父さん、私の口座も出し入れ出来んようになってる」といってきました。

「そんなはずはないやろ」と慌てて弁護士さんに報告しますと「それはおかしいですな。保証人にでもなっていればともかく、娘さんは関係のない第三者ですからその個人財産は守られます」ということで銀行に抗議してくれてロックは解除されました。

「親が倒産したら娘の貯金まで取り上げるのが銀行なんか。もうあんな銀行替えてしもうたる」

勝気な子だけに真美は怒り心頭だったようです。

「ご家族にも危害が及ぶかも」を実行したのがまず銀行やったんです。危害ではなく被害でしたが。

アメリカの作家マーク・トウエンという人がいうてます。「銀行というところは晴れた日に傘をかしてくれて、雨が降れば返せというそんなところだ」全く同感です。

ことばの端々に「当行の損害額も並みの金額ではありませんからね」という意味のこめられた銀行マンの態度でした。

数億円が並みの金額でないといえばたしかに我々庶民にとってはそうかもしれませんが、それでは大手の企業相手にこしらえた何百、何千億の不良債権はどんな金額なのか、「並みの金額」に代わる形容詞を教えてほしいもんです。