三連休に入る直前、金曜日の夕方のことです。
駆け込むような問い合わせがありました。
とにかく動画が必要で、ぜひ作りたいとのことです。
初めてのお客さんは紹介でもない限りこちらのことを知らないので
普通ならば探り探りの問い合わせをしてくるものです。
どのような流れで制作するのか、費用はどのくらいかかるのか、
これまでの実績はあるのか、みたいなところです。
動画制作の会社などたくさんありますから、
そのなかから適したところを選ぶのは当然でしょう。

ところが、まれに決め打ちしたみたいに、
作ることを前提で話を進めようとされる場合があります。
こういったケースでは、よく話を聞かなければなりません。
他社から断られた案件の可能性があり、
断られるにはそれなりの理由があるからです。
今回の話も希望条件を伺ってみると、
台本は用意しているというもののまだまだ詰める必要がある企画段階のもので、
演出も手のかかるCG表現をふんだんに取り入れた構成を希望されており、
なにより納期があきらかに無理なものでした。

終業時間ギリギリだったものの、
このあと“すぐ”に資料を送るから見て検討して欲しいと頼まれてしまいました。
結局資料が届いたのは21時ごろで、
メールには詳細は電話で説明しますと括られていました。
そして三連休を挟んでの今日を迎えます。
通常の依頼ならば連休中に資料を検討し、提案も用意しておくのですが、
今回は特になにもしていませんでした。
“熱しやすいものは冷めやすい”
このことを知っていたからです。

あれだけの熱量ならば、
朝いちばんに電話が掛かってきてもおかしくないでしょう。
しかしながら、まったく連絡が来る気配はありません。
昼近くになり、こちらから電話してみると、
声からは週末のような勢いが感じられないようでした。
少しお話して難しい案件であることを説明し、
こちらから「今回はお力になれず申し訳ありません」と水を向けると、
ホッとした声が返ってしました。
「…実は会社のほうで今回は制作を見送ろうかと」
むしろ“お力になれた”回答ではなかったでしょうか。


ようやく僕も、“お客様目線”が会得できたのかもしれません。