「やらずに後悔するくらいなら、やって後悔したほうがマシだ」
今秋から新シリーズが始まった朝ドラを観ていると、
そのような台詞がでてきました。
学校を卒業してから夢を追っていいものか悩む娘に対して
父親が叱咤激励する場面です。

ずいぶん朝ドラも変わったなと感じました。
ドラマは制作された時代を反映するものです。
たとえば、大正時代や昭和初期を描くにしても、
30年前と現代では物語の流れや人物造形はまったく異なります。
制作者たちは現代に生きているのですから当然かもしれません。

従来の作劇ならば、
近代の日本家庭は完全な父権主義に描くことが常套だったのではないでしょうか。
夢みたいなことを言う主人公がいたとして、
父親を始めとした周りの人間は、
「無理だからやめろ」と反対する姿こそがデフォルトです。
せいぜいが当初反対していた父親が次第に協力してくれる流れです。
消極的になる娘の背中を押すパターンは、初めて観ました。
「やって後悔したほうがマシ」と考えられる人物は、いかにも主人公的です。
人生の岐路のような場所に差し掛かったとき、
「やらずに後悔」を選んでしまった人は少なくないはずです。

線路工事に伴って、数年間封鎖されていた道があったのですが、
通りかかるといつの間にか開通していました。
真新しいアスファルトでコーティングされた道の先は、
建物の影になって見えません。
これまで通れなかったことが当たり前の風景でしたから、不思議な感じです。
(どこへつながっているんだろうか)
そちらの道の方面へ用事はありませんでしたが、
好奇心が湧いてきて行ってみたい気がします。
しかしながら、ハンドルを向けることはありませんでした。
「やって後悔するくらいなら、やらずに取っておく」
道の先がどこへ出るのかなんて、おおよそ見当はつくからです。


答え合わせして興奮が冷めるよりも、ワクワク感は取っておきたいタイプです。