“熱暴走”という言葉をご存じでしょうか。
知らないかたも、語感からなんとなくヤバい雰囲気は伝わってくると思います。
映像制作者にとっては、これが起きると大変なことなのです。
カメラは作動中にバッテリー温度が上がってきます。
温度が上がりきり中央装置が「熱っ!」と判断すれば、
動きを止めてしまうのです。
つまり、カメラが止まり、撮影が続行できません。
恐ろしい現象です。

つい数年前まで、熱暴走はあまり関係のない言葉でした。
プロが使う業務用カメラは熱暴走が起きないように、
しっかりとした排熱構造でデザインされていたからです。
しかしながら、昨今のカメラは小型化が進んだため、
そうも言ってられなくなりました。
排熱を考えた機体でも、
全体が小さいためどうしても熱が籠もりがちになるのです。
現に、メインカメラとして使っている機種も、
「熱暴走が起きるかもしれない」と言われており、事例も報告されています。
気温とも密接に関わった問題ですから、特に夏は要注意です。

さいわいこれまでに熱暴走は経験していません。
それを避けるような使いかたもあり、万一に備えて実践しているからです。
ただ、ここにきて不安を感じる案件がやってきました。
長時間カメラを止めることができない撮影です。
長い時間カメラを作動させつづけると、熱はこもりやすくなります。
案件ごとに機材編成を組んでおり、別のカメラを借りることも考えましたが、
「そんな安易な解決策でいいのか」と思い直しました。

耳年増になっている気がしたのです。
熱暴走という現象があり、その事例も報告されている、
ところが実際に運用していて、その状態に陥ったことはありません。
必要以上に見えない恐怖を感じていないでしょうか。
懸念されるシチュエーションを再現して試してみればよいのです。
問題がなければ、不安は払拭されるでしょう。
まずは環境を準備するために仕様書を確認してみましたが、
実験は保留することにしました。
撮影は12月だったのです。


カメラを冷蔵庫に入れて環境を作っても、「大丈夫!」とは言えない気がします。