論点と視点について語りたい。

人間関係の多様化にともなって、
第三者からは判別できないコミュニケーションが
成立している場合があります。
たとえば年上と年下だからといって
上司部下の関係とは断言できませんし、
デートスポットを歩いている男女ペアがアベックであるとは限りません。
安易にラベリングするのは危険です。

中華料理屋で、向かいのテーブルに料理が届きました。
卓の客は若い女性二人組です。
気軽な街の中華に来れるくらいの間柄ですから、
友人あるいは親友なのかもしれません。
ところが届いたのはチャーハン2つでした。
メニューが豊富な店で、チャーハンだけでも数種類ありましたが、
二人とも同じチャーハンです。
そのようなシチュエーションでは
違うものを頼んでシェアするのが自然に見えます。
なにやら確固たる意志があるのでは、と勘ぐってしまいます。

“一口ちょうだい問題”について議論は尽きません。
人はこのトピックを取り上げるとき、
論点を“あげる”“断る”の二元化にまとめがちです。
しかしながら、他の視点もあるのではないでしょうか。

僕は否定派ですが、「一口ちょうだい」が発動されたとき、
なかなか正面を切って断りづらいものです。
そこで語るべき論点は、
「いかにして二度と言わせないか」といった実効策に基づくものになります。
互いの間柄が深くないなかでの「一口ちょうだい」は考えにくく、
継続的に会わなければならない関係である以上、
善後策を講じておくことは大切です。

以前に聞いた有効な対策案は、
料理が到着するなり言われた「一口ちょうだい」に対して、
「いいよ」と快諾しておいて、
最後に一口ぶんだけ残った皿を渡したというものでした。
それ以後「一口ちょうだい」とは言われなくなったそうです。

先の中華屋の二人組も、
どちらかの「一口ちょうだい」に閉口したもう一方が
今後言われ続けることを防ぐため、故意に同じものを選んだのかもしれません。
街の中華には一緒に行くが、チャーハンを分けるのは抵抗がある関係です。


これはどの程度の親しさなのでしょうか。