ふぶき姫「ちょっと!百鬼姫!」

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百鬼姫「ううっ…うえええっ…うわーん」

 

ふぶき姫「まだ泣いてるわ」

 

椿姫「もう8時間経ちますね……せめて何か食べるものだけでも」

 

 

 

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オロチ「……というわけだ」

 

キュウビ「なるほど。で、影オロチは今どこにいるんだい」

 

オロチ「部屋に閉じこもったまま出てこない」

 

土蜘蛛「このまま二人は破局してしまうのであろうか……何とか力になってやりたいものだが」

 

大ガマ「おまえ石頭の頑固野郎のくせに本気でそう思ってんの?」

 

土蜘蛛「むっ。オロチ、なぜ大ガマを呼んだのだ」

 

オロチ「呼んでません」

 

ジバニャン「でも、かわいそうニャン。どうすれば二人は仲直りできるニャン?」

 

ケータ「ケンカの原因は、影オロチが百鬼姫を注意したこと……だよね」

 

ブシニャン「それが百鬼姫殿にはおもしろくなかったと」

 

土蜘蛛「どう考えても百鬼姫が悪い。歯を磨いたあとに甘いものを食べるなど言語道断だ」

 

大ガマ「影オロチが悪い。夜中にものを食うなんて誰でもするだろ。そんなことでいちいち怒るようなやつ、俺が女だったら付き合いたくない」

 

ケータ「大事なのはそこじゃないような……」

 

ウィスパー「そうでウィス。きっかけは何であれ、ここまですれ違ってしまったことが問題なんです」

 

キュウビ「現在、二人はそれぞれ部屋に閉じこもっている。百鬼姫に至っては何時間も泣き続けてる」

 

ケータ「好きだからこそ、こんなことになってるんだけどね」

 

大ガマ「じゃあ、お互い謝って仲直りして好きだと言えばそれで済むだけの話じゃねーか」

 

オロチ「それができないんですよ、あの二人は」

 

土蜘蛛「そうか……しかたないことなのかもしれぬ。百鬼姫は地獄の姫……幼いころから闇の妖術をたくさん勉強させられた。影オロチは暗殺者……オロチの影として生きてきた。暗い過去が二人を結び付け、離れられなくするのだろうな」

 

ジバニャン「そうかニャン?おれっちには二人とも意地っ張りなうえに本当の気持ちを言えないビビリなだけに見えるニャン」

 

キュウビ「まあそうでしょうね。少女漫画などで描かれるように、思春期の少年少女にはよくあることです。暗い過去は関係ないでしょう」

 

土蜘蛛「………」

 

大ガマ「www」

 

ブシニャン「ただ二人が素直になれればすむだけの話……ということでござるな。しかしそのような簡単なことが、二人にはどうしてできないのか……それがし、いくら考えても答えがわからないでござる。ケータはわかるか」

 

ケータ「おれは……」

 

ジバニャン「フミちゃんに好きって言えないのはなんでニャン?」

 

ケータ「ちょ、ジバニャン!」

 

オロチ「教えてくれ、ケータ。影オロチと百鬼姫を救う手掛かりになるかもしれない」

 

ケータ「そりゃあ……フミちゃんもおれのこと好きかどうかなんて、わからないし……告白してフラれたらショックだし……フミちゃんには他に好きな男子がいるかもしれないし……」

 

ウィスパー「もし他に好きな男子がいたらどうします?」

 

ケータ「うわああああ考えたくないぃぃ!」

 

オロチ「なるほど。真実を知りたくないから告白をしない。今の関係のままでいたほうがいい。そういうことか」

 

ケータ「……まあそうだけど」

 

土蜘蛛「しかしケータ。おぬしが今のままの状態でいたいと願っていても、おぬしのあずかり知らぬところでフミカの状況が変わっていく可能性もあるのだぞ」

 

ケータ「そんなことわかってるよ!!」

 

オロチ「だったら早く気持ちを伝えたほうがいいんじゃないか」

 

大ガマ「先にフラれておいたほうが傷が浅くて済むかもしれないしな」

 

ケータ「簡単に言わないでよー!てかなんでフラれることが前提なの!?ていうか影オロチと百鬼姫の話はどうなったの!」

 

キュウビ「どうにもならないさ。我々が話し合って意見を出し合ったところで、あの二人が素直にならなければ意味はない」

 

ジバニャン「砂夫を呼ぶニャン?」

 

キュウビ「その方法もあるが、僕は反対だ。相手を思い、自然に素直になっていく心……好きな相手のことを思うことで素直になる心、そんな心を持っていなければ、恋をする資格などない!」

 

ウィスパー「前に話し合ったときも同じような結論に達しましたよね」

 

ブシニャン「結局、本人たち次第ということでござるか……」

 

キュウビ「そうだよ。だめならだめで仕方がない。そりゃあ、なんとかしてあげたい気持ちは僕にもあるけどさ」

 

大ガマ「なんか恋って面倒くせーなあ。いや、影オロチと百鬼姫だから面倒なのか。なあ、ヒカリオロチと椿姫ってどんな感じ?」

 

オロチ「あの二人は……本能のままに生きるヒカリオロチに、椿姫が見守りつつも付いていっているという感じでしょうか……」

 

ブシニャン「あのヒカリオロチ殿についていけるとは、すごいでござるな!並の妖怪でも到底無理なのに、それをあの椿姫殿は平然とやってのける」

 

ケータ「そこにシビれる」

 

オロチ「憧れる」

 

大ガマ「いいよ、そういうのは。いいなー、ヒカリオロチは。イサマシ族には他にいい女はいないのか?」

 

土蜘蛛「イサマシ族の女性妖怪は椿姫だけだ、馬鹿者」

 

大ガマ「ああああああ」

 

・・・・・・・・・・・

ふぶき姫「もう10時間よ……いつまで呼び続ければ応えてくれるの」グッタリ

 

椿姫「変ですね。部屋から何も音が聞こえません。泣き声も聞こえなくなりました……」

 

ふぶき姫「え? ちょっと、大丈夫なの…? 百鬼姫!百鬼姫!!」バンバンバン‼

 

ふぶき姫「反応がないわ! やだ、どうしよう!」

 

椿姫「こうなったら……ふぶき姫さん、扉から離れてください。私が叩き壊します!」

 

ふぶき姫「は!?」

 

椿姫「大丈夫です、この程度の扉なら一撃で破れます」

 

ふぶき姫「え」

 

椿姫「ハァァァァ…………」ゴゴゴゴゴ

 

椿姫「でや」

 

コマさん「ふぶき姫、椿姫、何してるズラ?」

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ふぶき姫「コマさん!」

 

椿姫「こ、こんにちは!」サササッ

 

コマさん「こんにちはズラ。実は田舎の母ちゃんから苺がたくさん送られてきたんズラけど、オラたち二人じゃ食べきれねえから、みんなにもおすそわけをしにきたんズラ」

 

ふぶき姫「そうなの、ありがとう」

 

コマさん「百鬼姫はどこズラ?」

 

椿姫「それが……ちょっといろいろあって、今この部屋に閉じこもっていらっしゃるんです。もう10時間になるので心配なのですが」

 

コマさん「もんげ~!百鬼姫、10時間も閉じこもってるズラ!?」

 

ふぶき姫「そうなの……あの子、何も食べてないはずよ。どうすれば出てきてくれるのかしら……」グッタリ

 

椿姫「泣き声も聞こえなくなってしまいましたし、もう疲れきっていると思うんです。早く何か食べないと……」

 

コマさん「………………」

 

スッ

 

コマさん「百鬼姫ー!聞こえるズラかー?」

 

コマさん「ふぶき姫と椿姫が、百鬼姫のことをもんげー心配してるズラ! オラも百鬼姫が心配ズラ!」

 

コマさん「オラ、苺持ってきたズラ!何があったか知んねーけど、これ食べたら元気出るズラよー!」

 

ガチャッ

 

百鬼姫「……………………」

 

ふぶき姫「百鬼姫!(うわあ泣きすぎてまぶたが3倍くらいに腫れあがってる)」

 

コマさん「百鬼姫、これオラの田舎の母ちゃんが送ってくれた苺ズラ。もんげー甘くておいしいズラよ。ひとつ食べてみるズラ」

 

百鬼姫「………」パクッ

 

コマさん「どうズラ?」

 

百鬼姫「……おいしいのじゃ」パクッ

 

コマさん「まだまだいっぱいあるズラよ」

 

百鬼姫「………おいしいのじゃ………うわーん!」

 

ふぶき姫「ちょっと、どうしてまた泣くのよ」

 

百鬼姫「……影オロチにも、食べさせてあげたいのじゃ……うえええええ」

 

コマさん「その気持ち、わかるズラ。オラも社長になってもんげー立派な料理を食べたとき、コマじろうにも食べさせてやりたいと思ったズラ。おいしいものは大事な人と一緒に食べたいズラね!」

 

椿姫「コマさん……(天使……)」

 

コマさん「この分を影オロチに持っていってやるといいズラ」

 

百鬼姫「ありがとうなのじゃ」

 

・・・・・・・・・

影オロチ「(百鬼姫………)」

 

コンコン

 

影オロチ「………誰だ」

 

百鬼姫「………私じゃ」

 

影オロチ「百鬼姫!」

 

百鬼姫「入るぞ」

 

影オロチ「(………何しに来たのだろう………しかし「何しに来た」という言い方は、少し冷たい印象があるな。言い方には気をつけなければ………では何と言えばよいのだ……)」

 

百鬼姫「(………何もしゃべらないのじゃ……怒っておるのかのう……当然じゃ……私が大嫌いなどと言ってしまったから………本当は……本当は……)」

 

百鬼姫「……コマさんに、苺をもらったのじゃ。これは影オロチの分じゃ」

 

影オロチ「そうか……いただこう」

 

百鬼姫「おいしかったから、影オロチにも食べてもらいたかったのじゃ」

 

影オロチ「……ありがとう」

 

百鬼姫「影オロチは、私のことが嫌いなのじゃ?」

 

影オロチ「我はそんなことは一言も言っていない。嫌いと言ったのはおまえだ」

 

百鬼姫「………私が影オロチを嫌いになるはずがないのじゃ」

 

影オロチ「………そうだな。わかっていたはずだったが、わからなくなっていた」

 

百鬼姫「私もじゃ」

 

影オロチ「またわからなくなることがあるかもしれない」

 

百鬼姫「そうなったら、どうすればよいのじゃ?」

 

影オロチ「どうもしなくていい。ちょっと時間が経てば、またわかるようになる」

 

百鬼姫「そうじゃな。ちょっと時間が経てば、また会いたくなるのじゃ」

 

影オロチ「……すまなかった」

 

百鬼姫「私のほうこそ、ごめんなさいなのじゃ」

 

影オロチ「外に出よう。今日は天気がよくて暖かい」

 

百鬼姫「そうじゃな」

 

 

ふぶき姫「よかったわね。あーあ、私も恋人ほしいなあ」

 

椿姫「(扉を叩き壊そうとしたところ、コマさんに見られていなければいいけれど…)」

 

オロチ「コマさん、帰ったのか」

 

ふぶき姫「そうよ。この苺、オロチの分だって」

 

椿姫「(コマさん……)」

 

オロチ「(コマさん……)」

 

 

 

おわり