一方こちらはその日の学校・・・。
直哉は授業中ではあったが、その耳には先生の声など全く聞こ
えていなかった。
窓の外を眺め、溜息をつく。
直哉の中で、今まで秘めてきたさやかへの想いが、最近段々
膨らんでくるのが自分でも判っていた。
そのさやかが、自分の親友とうまくいくように応援している自分
が妙に滑稽で不思議な感じがしていた。
それに有紀の事もある・・・。
現在付き合っているとはいえ、本当に好きな子は別にいる。
そんな事は有紀には言えない。
直哉を罪悪感が包み込む。
今のままでは、全てを裏切る事になりそうで、直哉は無性に怖
かった。
圭介を裏切り、向日葵を裏切り、そして自分の彼女を裏切って
いる・・・。
しかしそれでも直哉にとって、さやかを応援する事が今彼女に
してやれる唯一の行動なのは間違いない・・・。
そんな事を考えると、また一つ溜息が出る・・・。
そして一番恐れている事は、圭介が記憶を取り戻し、さやかが
傷つく事だった。
自分が後押ししたせいで彼女が傷つくとしたら、それが一番直
哉にとって苦しい事だった。
そんな時、後ろの石原からトントンと肩を叩かれる。
「ん?」
「これ回ってきたぜ。」
ヒソヒソ声で石原は言うと、小さく折りたたまれたノートの切れ
端を直哉に手渡した。
― 何だろう・・・?
その紙を広げて見ると、そこにはこう書かれていた。
今日ちょっと話があるんだけど、放課後いいかな?
向日葵には内緒でお願い。
さやか
その「手紙」はさやかからだった。
直哉はすぐにさやかを見る。
さやかは直哉が自分を見たのを確認すると、手を合わせてみ
せた。
直哉は今の気分を振り払い、ニッコリと笑って指でOKのサイン
を送った。
― 話しって圭介の事だな・・・。
直哉はすぐに理解していた。
本当の事を言えば、直哉にとってはその話を聞くのは嫌だっ
た。
自分の好きな子に、他の男との相談をされる。
やはり嫌なものである。
でも直哉はそんな気持ちを持ちつつも、彼女の役にたてるなら
それでいい・・・。と思い直して、また一つ溜息をついた・・・・。
そんな直哉の気持ちを無視するかのように、授業はいつも通り
淡々と進んでいっていた・・・・。