その日の放課後、直哉とさやかは学校の屋上にいた。
グラウンドには部活をしている生徒達が見える。
「で、話って何?」
直哉は解ってはいたものの、一応質問してみた。
「あのね・・・。私、この間圭介とキスしちゃった・・・。」
「え?」
直哉もその答えには少し驚いた。
そして、その答えを嬉しそうに言うさやかを見て、同時に少し嫉
妬と悲しみも覚えた。
「さやか・・・。焚きつけた俺が言うのもなんだけどさ、もう止めよ
うよ・・・。」
「え?」
さやかとしても、直哉のその返事は意外だったようで、照れくさ
そうな表情が一転して驚きに変わっていた。
「さやかの気持ちも解るけどさ、あいつは圭介であって圭介じゃ
無いんだぜ?あれから色々考えたけどさ、さやかが好きになっ
たのは、今の圭介なのか?違うだろ?」
「・・・。」
「さやかを好きな圭介じゃなかったかもしれないが、向日葵を好
きな圭介がお前は好きだったはずだ!ずっと俺達と一緒に遊ん
できた圭介がな!」
「そんな事・・・。解ってるわよ!私だって、今の圭介は本当の圭
介じゃないって事ぐらい・・・。でもやっぱり圭介が好きなんだも
ん!ずっと好きだったんだもん!例え本当の圭介じゃなかった
としてもかまわない!それぐらい好きなんだもん!好きな人と上
手くいってる直哉には、私の気持ちなんて解らないわよ!!」
さやかは目に涙をためながら直哉に叫んでいた。
そんなさやかを見て、直哉は自然にさやかを抱き締めていた。
「解るさ・・・。俺にはお前の気持ちが痛いほど解る・・・。だから
こそ、お前に傷ついてほしくないんだ・・・。」
「え?」
「俺はさやかが好きだ。ずっと好きだった・・・。」
突然の直哉の告白に、さやかは言葉を失った。
「俺はずっとお前を見てた・・・。でもお前が圭介を好きなのも知
ってたから、自分の気持ちを心の奥にしまってきた。本当はこん
な事言うつもりは無かったけど、今のお前を見ていると、なんか
自分を見てるようで辛いんだ・・・。」
抱き締めながら、直哉は泣き始めた。
「直哉・・・。」
「別に俺と付き合ってくれなんて言うつもりはない。圭介とうまく
いく手伝いをするってのも嘘じゃない・・・。でもさ、今のさやかの
やり方は、やっぱりよくないよ!それだけ言いたかった。よく考
えたほうがいい・・・。とりあえず俺は帰るわ。惑わせてごめん
な。」
そう言うと、直哉は屋上から校舎へ戻って行った。
そしてさやかはその場で泣き崩れていた・・・。
まさか直哉が自分を好きだったなんて・・・。
もうすでにさやかの頭の中からは、圭介との事がどこかへ吹き
飛んでしまっていた。
何が何やら判らず、今さやかにできる事は、涙を拭いて帰路に
つく事だけだった・・・・。
