時は流れて翌日の放課後・・・。


直哉は有紀との待ち合わせ場所にいた。


― どう話すか・・・。


その事で頭の中は一杯の直哉は、一つ、また一つと溜息をつ


いていた。


「直哉~wごめん待った?」


そんな直哉の背後から、少し走り気味に有紀がやってきた。


「いや、さっき来たとこだよ。」


「なら良かったwで、話って何?」


有紀はいきなり切り出した。


直哉はそれを予想できなかった為、動揺しながらそばの喫茶店


を指差し、そこで話すと有紀に伝え、手を引きながら店に入っ


た。


二人はアイスコーヒーを注文すると、お互いに顔を見合わせ


る。


有紀はニコニコと笑顔で直哉を見ている。


これから別れ話をされるなんて、微塵も思っていないだろう。


そんな有紀の笑顔を見ていると、直哉の決心も鈍りそうだった。


― でも言わなきゃな・・・。


直哉は深呼吸をして、有紀の目を見ながら話し始めた。


「有紀・・・。」


「何?」


「俺達、別れよう・・・。」


「え?」


有紀はキョトンとしながら直哉を見ている。


「なぁに?何の冗談よ。ビックリするじゃないw」


直哉の心に痛みが走る。


「ごめん・・・。冗談なんかじゃないんだ。」


「なぜ!?なんで別れなきゃいけないの!?私何か嫌われるよ


うな事した?」


「いや・・・。有紀のせいじゃないよ。悪いのは俺さ・・・。本当の


気持ちを隠しながら、有紀と付き合った俺が悪いんだ・・・。」


「本当の気持ち?私の事は好きじゃなかったって事?」


有紀は何が何やら判らず、直哉に詰め寄る。


「有紀の事は好きだよ。じゃなきゃ付き合ったりしないさ。でも、


俺はずっとさやかの事が好きだったんだ・・・。でもさやかは圭


介の事が好きなのを知ってたから、その気持ちを封印してき


たんだ・・・。」


「・・・・・。」


「でも、やっぱり忘れられなかった・・・。どうしても自分の気持ち


を騙しきれなかった・・・。」


「直哉が、さやかさんの事を好きなのは解ってたわ。付き合う時


からね。」


「え?」


今度は直哉が面食らった。


「だって私もずっと直哉を見てきたもの。それぐらい判るわよ。」


「そうか・・・。バレてたのか。」


「でも、私は直哉が好き!だから、いつかきっとでもさやかさん


の事よりも、私を好きにさせてみせると思ってきたわ。」


「有紀・・・。」


「だから、別れるなんて嫌!大体さやかさんは圭介さんの事が


好きなんでしょ?うまくいくハズないじゃない!」


「そうかもな・・・。」


「すぐに忘れてなんて言わない!本当にいつかでもいい!私は


直哉についていくから、別れるなんて言わないで!」


有紀は泣きながら直哉に訴えた。


そんな有紀を見て、直哉を罪悪感が包む。


「昨日な、俺はさやかが記憶を失くしている圭介を追っかけてる


のを見てさ、自分の封印していた想いが弾けちまった・・・。で、


さやかに告白しちまったんだ・・・。」


「・・・。」


「付き合ってくれなんて言えなかったけど、好きだって言っちまっ


たんだ。」


有紀は泣きながらジッと直哉の話を聞いている。


「勿論、有紀が言うように、うまくいくなんて俺も思っちゃいない


さ。でもな、もうこの気持ちを封印なんてできないよ。少なくとも


今はね・・・。」


「だから今じゃなくても・・・。」


「ダメだ!こんな気持ちのまま有紀と付き合ってても、傷つける


だけだ。それに俺は、例えどんな状況になっても、さやかを見守


りたい。だから・・・・、さよならしよう・・・。」


「う・うう・・・。」


有紀は再び大声で泣き始めた。


これ以上何を言っても、直哉の気持ちは変わらない事を悟った


のだろう。


「ごめん、有紀・・・。」


そう言って直哉は有紀の頭を撫でた。


「良い彼氏見つけろよ。俺みたいな奴じゃない、もっと有紀だけ


を想ってくれる奴をさ・・・。じゃあさよならだ・・・。元気でな。」


そう言うと、直哉は会計を済ませ、店を後にした。


泣いている有紀を、そのままにして帰るのは気が引けていたも


のの、このまま優しくするよりも、最低だと思われたほうが、有


紀の為のような気がしたからだ。


何度も振り返りながら帰路につく直哉の目には、涙が込み上げ


ていた。


― 本当にゴメン。さよなら有紀・・・。


手で涙を拭きながら、直哉は歩き始めていた・・・。

 ― なんであんな事言っちまったんだろう・・・。


直哉は自宅の自室で頭を抱えていた。


成り行きとはいえ、今まで秘めてきた想いをさやかに打ち明け


てしまい、その事で頭を悩ませていたのだ。


しかし直哉も嘘や冗談ではなく、真剣にさやかの事が好きだっ


たのだ。


事実を述べたに過ぎない・・・。


しかし現実問題として、間違いなくギクシャクするのは目に見え


ている。


それが直哉にとっては1番恐れていたのだ。


今までは親友のスタンスで傍にいれたが、これからはそうはい


かなくなるかもしれない・・・。


それに吐き出してしまった以上、直哉も今までのように秘めた


ままではいられなくなってきていた。


となれば、問題は有紀である。


現在有紀を彼女として交際している・・・。


直哉が自分の気持ちに嘘がつけなくなった以上、このまま付き


合っていく訳にはいかない。


直哉は今、それを有紀にどう伝えるかについても同時に悩んで


いた。


― 傷つけるよなぁ・・・。でも黙ってる訳にもいかないしな・・・。


やはり正直に言うべきだよな・・・。


直哉はそう考え、携帯を取り出し有紀に電話をかけた。


「直哉どうしたの?またデートのお誘いかな?w」


電話に出た有紀は、いつもどおりの様子で笑っていた。


直哉にはどんな顔で話しているかまで見えるようだった。


だからこそ罪悪感で一杯になる。


「あ・ああ・・・。明日会えるかな?大事な話があるんだ。」


「なぁに?いつにもまして真剣な声ね。何かあったの?」


「まあ、あったって言えばあったかな・・・。」


「何があったか言ってみなさいw私が聞いてあげるよw」


有紀は励ますように言った。


「いや・・・。電話じゃちょっとな・・・。明日会った時に全部話す


よ。だから明日の放課後いつものとこで。いいかな?」


「いいもなにもw直哉の誘いを私が断る訳ないじゃないwわかっ


た。いつものとこね。」


「うん。じゃあ明日またな。」


「はーいwおやすみ直哉!チュッ!」


電話の向こうで電話機にキスをする音と共に電話は切れた。


電話を終えた直哉は、その場にうずくまって目に涙を浮かべ、


ゴメン・・・。と何度も何度も繰り返し呟いていた・・・。

 その日の放課後、直哉とさやかは学校の屋上にいた。


グラウンドには部活をしている生徒達が見える。


「で、話って何?」


直哉は解ってはいたものの、一応質問してみた。


「あのね・・・。私、この間圭介とキスしちゃった・・・。」


「え?」


直哉もその答えには少し驚いた。


そして、その答えを嬉しそうに言うさやかを見て、同時に少し嫉


妬と悲しみも覚えた。


「さやか・・・。焚きつけた俺が言うのもなんだけどさ、もう止めよ


うよ・・・。」


「え?」


さやかとしても、直哉のその返事は意外だったようで、照れくさ


そうな表情が一転して驚きに変わっていた。


「さやかの気持ちも解るけどさ、あいつは圭介であって圭介じゃ


無いんだぜ?あれから色々考えたけどさ、さやかが好きになっ


たのは、今の圭介なのか?違うだろ?」


「・・・。」


「さやかを好きな圭介じゃなかったかもしれないが、向日葵を好


きな圭介がお前は好きだったはずだ!ずっと俺達と一緒に遊ん


できた圭介がな!」


「そんな事・・・。解ってるわよ!私だって、今の圭介は本当の圭


介じゃないって事ぐらい・・・。でもやっぱり圭介が好きなんだも


ん!ずっと好きだったんだもん!例え本当の圭介じゃなかった


としてもかまわない!それぐらい好きなんだもん!好きな人と上


手くいってる直哉には、私の気持ちなんて解らないわよ!!」


さやかは目に涙をためながら直哉に叫んでいた。


そんなさやかを見て、直哉は自然にさやかを抱き締めていた。


「解るさ・・・。俺にはお前の気持ちが痛いほど解る・・・。だから


こそ、お前に傷ついてほしくないんだ・・・。」


「え?」


「俺はさやかが好きだ。ずっと好きだった・・・。」


突然の直哉の告白に、さやかは言葉を失った。


「俺はずっとお前を見てた・・・。でもお前が圭介を好きなのも知


ってたから、自分の気持ちを心の奥にしまってきた。本当はこん


な事言うつもりは無かったけど、今のお前を見ていると、なんか


自分を見てるようで辛いんだ・・・。」


抱き締めながら、直哉は泣き始めた。


「直哉・・・。」


「別に俺と付き合ってくれなんて言うつもりはない。圭介とうまく


いく手伝いをするってのも嘘じゃない・・・。でもさ、今のさやかの


やり方は、やっぱりよくないよ!それだけ言いたかった。よく考


えたほうがいい・・・。とりあえず俺は帰るわ。惑わせてごめん


な。」


そう言うと、直哉は屋上から校舎へ戻って行った。


そしてさやかはその場で泣き崩れていた・・・。


まさか直哉が自分を好きだったなんて・・・。


もうすでにさやかの頭の中からは、圭介との事がどこかへ吹き


飛んでしまっていた。


何が何やら判らず、今さやかにできる事は、涙を拭いて帰路に


つく事だけだった・・・・。