遅い更新ですいません。
当面、ブログ更新は午後11時以降になると思います。
よろしくお含み置き下さい。
本日は、証券アナリスト協会主催講演会「企業再編の会計処理」に出席しました。
新日本監査法人の中島康晴先生による、120ページを越す膨大な資料を使っての
講義でしたが、豊富な事例紹介と滑らかな語り口であっという間の2時間。
不勉強な私もかなり収穫がありました。
今日のネタは、まずはその中から、私が興味深く思ったものをご紹介。
-------------------------------------------------------------------------
■イトーヨーカ堂グル-プの再編事例より
・ヨーカ堂グループはご存知のように昨年9月に持株会社化しております
(セブン&アイホールディングス)。
細かい説明は省きますが、興味深かったことは、
再編の前と後で、連結当期純利益のH18/2期の予想値が大幅に
上昇していたことです。
具体的に見てみましょう。
①H17年4月7日に公表したH18/2期 連結業績予想
(イトーヨーカ堂の連結短信の1ページ目の一番下をご覧下さい)
http://www.7andi.com/ir/pdf/fresult/05_iy_con.pdf
連結営業利益 2,330億円
連結経常利益 2,300億円
連結当期純利益 637億円
(この時点ではまだ持株会社構想の開示なし)
②H17年8月22日に公表した新しい業績予想
http://www.itoyokado.co.jp/company/investors/release/pdf/20050822j.pdf
連結営業利益 2,330億円
連結経常利益 2,300億円
連結当期純利益1,147億円
①と②を比較してお分かりのように、
何故か当期純利益だけ510億円も増えている。
グループ内再編で株式交換による100%子会社化で
ありながら、再編前後で利益が増えるっていうのはおかしい。
では、何故こうなったのか?
カンの鋭い人であれば、
「そりゃ、収益の柱であるセブン・イレブンの少数株主損益がなくなったから
ではないのか?」とお考えのはず。
答えは、その通り。
しかし、何故、少数株主損益がなくなったかといえば、
セブンの少数株主に対して株式交換によって、膨大なセブン&アイ株式を
発行しているからです。
ただ気をつけなくてはならないことは、
この企業統合がいわゆる「プーリング法」っていうのを用いているため、
簿価ベースでの統合。
よって、パーチェス法でおなじみの「のれん」が生じない。
のれんが生じないということは、のれん償却費(販売管理費)も生じない
っていうことです。
以上をまとめますと、セブン&アイは、
①株式交換によってセブンの少数株主を排除
→連結損益計算書上、利益の控除項目である「少数株主損益」が大幅に減少
②プーリング法での統合ゆえ、のれんは発生せず、当然のれん償却費も発生しない、
という、いいとこ取りの会計処理をしていた、ということです。
もちろん、当時の会計基準では許容されたものなのでどうこういうつもりは
無いのですが、新しい企業結合会計基準では原則パーチェス法が適用される
(プーリング法は極めて限定的な場面でしか適用できない)
「もう二度とできない処理」なのです。
セブンはその最後のチャンスを生かした、ってワケですね。
ただ釈然としないのは、
パーチェス法であれば本来計上されるはずの資産サイドの「のれん」が
ごっそり無いわけですから、相手方勘定では何かがそれと同額だけ減額されて
いる、ってことになります。
・・・・・・・・ということは、株式交換のために発行された新株の発行価額を抑えた
可能性があります。ということは、株式交換に応じたセブンなどの少数株主に、
のれん相当額の損失がチャージされていった、ということになるのでしょうか。
うーん、奥が深い。
------------------------------------------------------------------------
で、「のれん」といえば、例の阪神と阪急の統合。
新会計基準に従い、阪神株取得により膨大なのれんが発生する可能性は高いと思われます。
で、こののれんの中には、村上ファンドによる同社株の売却益も含まれている、
ってことになります。
つまり、阪急の貸借対照表に、村上ファンドの「置き土産」がズシっと乗ってくるワケですね。
つまるところ、企業統合を通じて、誰かがトクをし、誰かが損をしている、
ということなのでしょうか。
当面、ブログ更新は午後11時以降になると思います。
よろしくお含み置き下さい。
本日は、証券アナリスト協会主催講演会「企業再編の会計処理」に出席しました。
新日本監査法人の中島康晴先生による、120ページを越す膨大な資料を使っての
講義でしたが、豊富な事例紹介と滑らかな語り口であっという間の2時間。
不勉強な私もかなり収穫がありました。
今日のネタは、まずはその中から、私が興味深く思ったものをご紹介。
-------------------------------------------------------------------------
■イトーヨーカ堂グル-プの再編事例より
・ヨーカ堂グループはご存知のように昨年9月に持株会社化しております
(セブン&アイホールディングス)。
細かい説明は省きますが、興味深かったことは、
再編の前と後で、連結当期純利益のH18/2期の予想値が大幅に
上昇していたことです。
具体的に見てみましょう。
①H17年4月7日に公表したH18/2期 連結業績予想
(イトーヨーカ堂の連結短信の1ページ目の一番下をご覧下さい)
http://www.7andi.com/ir/pdf/fresult/05_iy_con.pdf
連結営業利益 2,330億円
連結経常利益 2,300億円
連結当期純利益 637億円
(この時点ではまだ持株会社構想の開示なし)
②H17年8月22日に公表した新しい業績予想
http://www.itoyokado.co.jp/company/investors/release/pdf/20050822j.pdf
連結営業利益 2,330億円
連結経常利益 2,300億円
連結当期純利益1,147億円
①と②を比較してお分かりのように、
何故か当期純利益だけ510億円も増えている。
グループ内再編で株式交換による100%子会社化で
ありながら、再編前後で利益が増えるっていうのはおかしい。
では、何故こうなったのか?
カンの鋭い人であれば、
「そりゃ、収益の柱であるセブン・イレブンの少数株主損益がなくなったから
ではないのか?」とお考えのはず。
答えは、その通り。
しかし、何故、少数株主損益がなくなったかといえば、
セブンの少数株主に対して株式交換によって、膨大なセブン&アイ株式を
発行しているからです。
ただ気をつけなくてはならないことは、
この企業統合がいわゆる「プーリング法」っていうのを用いているため、
簿価ベースでの統合。
よって、パーチェス法でおなじみの「のれん」が生じない。
のれんが生じないということは、のれん償却費(販売管理費)も生じない
っていうことです。
以上をまとめますと、セブン&アイは、
①株式交換によってセブンの少数株主を排除
→連結損益計算書上、利益の控除項目である「少数株主損益」が大幅に減少
②プーリング法での統合ゆえ、のれんは発生せず、当然のれん償却費も発生しない、
という、いいとこ取りの会計処理をしていた、ということです。
もちろん、当時の会計基準では許容されたものなのでどうこういうつもりは
無いのですが、新しい企業結合会計基準では原則パーチェス法が適用される
(プーリング法は極めて限定的な場面でしか適用できない)
「もう二度とできない処理」なのです。
セブンはその最後のチャンスを生かした、ってワケですね。
ただ釈然としないのは、
パーチェス法であれば本来計上されるはずの資産サイドの「のれん」が
ごっそり無いわけですから、相手方勘定では何かがそれと同額だけ減額されて
いる、ってことになります。
・・・・・・・・ということは、株式交換のために発行された新株の発行価額を抑えた
可能性があります。ということは、株式交換に応じたセブンなどの少数株主に、
のれん相当額の損失がチャージされていった、ということになるのでしょうか。
うーん、奥が深い。
------------------------------------------------------------------------
で、「のれん」といえば、例の阪神と阪急の統合。
新会計基準に従い、阪神株取得により膨大なのれんが発生する可能性は高いと思われます。
で、こののれんの中には、村上ファンドによる同社株の売却益も含まれている、
ってことになります。
つまり、阪急の貸借対照表に、村上ファンドの「置き土産」がズシっと乗ってくるワケですね。
つまるところ、企業統合を通じて、誰かがトクをし、誰かが損をしている、
ということなのでしょうか。