いつもご覧下さり誠に有難うございます。

さて、3月22日に(社)日本経済団体連合会が
「企業価値の最大化に向けた経営戦略」なる意見書を発表しております。 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2006/010/index.html

この意見書は財務データ、株価データ、アンケートを使って経営戦略と企業価値
との関係を実証分析している点でユニークなものだと思います。

今後の企業戦略を見るうえで1つの参考になるかと思われますので、
以下に私なりに興味深いと思ったポイントをランダムにご紹介します。

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■ 「当面の経営戦略」と企業価値
 (1,650社の財務データと株価データから分析)

 ・収益力(売上高経常利益率の上昇)
 ・ 成長力(売上高の伸び)
 ・ 健全性の強化(利払い費の営業キャッシュフローに対する割合の減少)
 ・ 株主への還元(配当性向の引き上げ)

これらいずれの経営戦略も確実に企業価値を高めている。


このうち収益力強化に向けては、
 ・労働生産性の上昇
 ・一人あたり人件費の抑制
 ・有形固定資産回転率の上昇
 ・売上高の伸び
いずれの取り組みも確実に「収益力の強化」につながると。


■ 「中長期的な経営戦略」と企業価値
(会員企業306社アンケート結果と企業価値プレミアムとの関係を分析)

経団連会員306社に「他社よりも進んだ取り組み」行う分野は何か?と質問。 
その回答内容と、その企業の企業価値のプレミアム(株価が理論値よりも割高)の
関係を見ていくと、次の取り組みを先進的に行っていることが
企業価値のプレミアムに繋がっていると。  

   ・優秀な人材の育成
    ・中長期的な視点からの研究開発の推進
    ・経営理念の明確化・社内外への徹底/法令順守を含む企業倫理の徹底
    ・IRをはじめ情報開示の推進
    ・女性・障害者・高齢者などの雇用機会の提供
    ・環境負荷の軽減

一方、  
    ・執行と監督の明確な分離(いわゆる米国型コーポレートガバナンスの導入)
     ・財務報告に係わる内部統制の充実
は必ずしも株主価値の増大に繋がっていないと。


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(コメント)

①意見書では「倫理に則った経営戦略こそが、企業価値の安定的な増大に
   つながることを、分析結果は示している」としておりまして、
   経団連に加盟する大企業にとって我田引水的な結果かも。
  その点を割り引いて見て下さいね。


②収益力強化に向けての「労働生産性の上昇」「一人あたり人件費の抑制」。
  簡単に言いますけど、従業員の立場からすれば大変ですよ。  
  現在検討が進んでいると見られる「ホワイトカラー・エグゼンプション」も
 目的はホワイトカラーの残業代の削減。  

 この分析結果が、経団連加盟企業の人件費削減に理論的お墨付きを与える
 としたら悲劇ですよね。少々気が重くなりました。

 【参考の拙稿】1月28日
「残業代 貰える今が 花かもね」 -ホワイトカラーエグゼンプションの衝撃-
http://blog.goo.ne.jp/dancing-ufo/e/2e6d7872faa62f9f46eca91b423040d3