ミステリーはお好きですか?
この夏はこれに挑戦!
【今週はこれを読め! ミステリー編】さらなるドンデン返し!
ディーヴァー第二短編集『ポーカー・フェイス』
WEB本の雑誌 8月16日(金)
2000年代以降に翻訳されたミステリー短篇集の中からベスト3を選んでもらいたい。
そう頼まれたら、答えは決まっている。
ジェフリー・ディーヴァー『クリスマス・プレゼント』(文春文庫)、
デイヴィッド・マレル『真夜中に捨てられる靴』(ランダムハウス講談社文庫)、
フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』(東京創元社)、この3冊だ。
それぞれ、収録作のサスペンス、落ち、文体、そして多様さ、のどれをとってもオールタイム・ベスト級の素晴らしさである。
しかし、ちょっと事態が変わってきた。
『クリスマス・プレゼント』にライバルが出現したからだ。それも同じ作者による一冊が。
『ポーカー・レッスン』はジェフリー・ディーヴァーの第二短篇集である。
原題はMore Twisted。
おやおや、と思ったあなたは正しい。
第一短篇集『クリスマス・プレゼント』の原題は Twistedだったからだ。
「ひねりを」「もっとひねりを」とミステリー作家は言う。
収録作は16篇で、そのうち1作「ロカールの原理」は、ディーヴァーの看板である四肢麻痺の天才捜査官、リンカーン・ライム・シリーズの作品だ。
慈善事業の財団を運営する資産家が狙撃されて死亡する事件が起きる。
リンカーン・ライムの眼となり、手足となるアメリア・サックスが、その犯行現場に派遣されるのである。
「ロカールの原理」とはこのシリーズにもたびたび登場する科学捜査上の教条の一つで、「犯人と犯行現場、または犯人と被害者のあいだでかならず微細証拠が交換される」というものだ。
それがきちんと事件解決に利用されているのが、ファンとしては嬉しい。
短篇ではあるが、しっかりとした読み応えがある。
それ以外の作品はノンシリーズだが、1作だけある先行作品にオマージュを捧げる短篇が混じっている(どれかは読んでのお楽しみである)。
前作『クリスマス・プレゼント』との共通点は、読者をびっくりさせようという作者の熱意だ。
びっくりさせるといっても、バン! ----こういう風に唐突にショックを与えて読者の肝を抜こうというものがあれば、相手が気づかないように危険地帯に足を踏み入れさせ、脱出できない底なし沼にはまってしまったことを気づくまでほくそ笑んで物陰に見ているような人の悪いやり方もある。
ディーヴァーの作品には後者が多く、しかも秀作もそちらに集中している。
たとえば「動機」という短篇では最後の2ページに登場人物が陥った境遇が種明かしされ、そこがとんでもない怪物領域であることが知らされるのである。
もちろんその前に「これより先......」という標識は出ていたのだが、先を急ぐ主人公の(そして登場人物の)脳にはその警報が届かなかった。
こうした予兆の書き方にもディーヴァーは長けていて、たとえば「監視」という短篇では読み返すとニヤリとさせられる個所がいくつかある。
感心されられた作品はいくつもあり、その中の「生まれついての悪人」には遠い昔に読んだスタンリイ・エリンや、フレドリック・ブラウンなどの短篇の名匠を思わせる味がある。
常識の自明さを疑うような視点が加わると、ディーヴァーは最強になるのだ。
帯には「これぞだまされる快感!」との惹句が躍っているが、一つ付け加えるならば、ドンデン返しが成功しているのはサスペンス及びスリルの効用である。
先に何があるのかわからない、後ろから危険なものが追ってくる、という不安と恐怖の感情が掻き立てられ、そのために脇目もふらずにゴールへと飛び込んでしまう。
そこに罠が待っているのは先刻承知のことなのに。
その技巧の冴えもぜひじっくりと味わってほしい。
蛇足ながら書いておくと収録作のうち「恐怖」は、ディーヴァーが読者を操る技巧のノウハウを開陳するために書いた作品である。
巻末の解説「『恐怖』について」と併読することをお薦めする。
(杉江松恋)
ちなみに、週刊文春臨時増刊号で特集したオールタイムミステリーは、国内部門では「獄門島」横溝正史がぶっちぎりで1位、海外部門では「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティーもぶっちぎり1位という結果でした。
さて、杉江氏おすすめの上記本は、将来ランクインされるでしょうかねえ?
では、今日の名言です。
「男はしばしばひとりになりたいと思う、女も一人になりたいと思う。
そしてその二人が愛し合っているときは、そういう思いを互いに嫉妬するものだ」
「武器よさらば」アーネスト・ヘミングウェイ
深い言葉です。
恋をしていれば、もっともっと会いたいと思う。
ではなぜ会えないのか?
深く恋をした男女ゆえの永遠のジレンマなのでしょうか?
アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ(Ernest Miller Hemingway、1899年7月21日 - 1961年7月2日)は、アメリカの小説家・詩人。
彼の生み出した独特でシンプルな文体は、冒険的な生活や一般的なイメージとともに、20世紀の文学界と人々のライフスタイルに多大な影響を与えた。
ヘミングウェイはほとんどの作品を1920年代中期から1950年代中期に書き上げて、1954年にノーベル文学賞を受賞するにいたった。
彼は6つの短編集をふくめて7冊の小説と2冊のノンフィクション小説を出版した。
3冊の小説、4つの短編集、3冊のノンフィクション小説が死後、発表された。
これらはアメリカ文学の古典として考えられている。
行動派の作家で、スペイン内戦や第一次世界大戦にも積極的に関わり、その経験を元に行動的な主人公をおいた小説をものにした。
『誰がために鐘は鳴る』『武器よさらば』などはそうした経験の賜物。
当時のハリウッドに映画化の素材を提供した。
短編には簡潔文体の作品が多く、これらはダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーと後に続くハードボイルド文学の原点とされている。
1954年、『老人と海』が大きく評価され、ノーベル文学賞を受賞(ノーベル文学賞は個別の作品ではなく、作家の功績および作品全体に与えられることに注意)
この年、二度の航空機事故に遭う。
二度とも奇跡的に生還したが、重傷を負い授賞式には出られなかった。
以降彼の特徴であった肉体的な頑強さや、行動的な面を取り戻すことはなかった。
晩年は事故の後遺症による躁鬱に悩まされるようになり、執筆活動も次第に滞りがちになっていく。
1961年、ライフルで自殺。
作家のレスター・ヘミングウェイは弟、女優のマーゴ・ヘミングウェイ、マリエル・ヘミングウェイは孫娘である。
『海流のなかの島々』の舞台ともなったバハマのビミニ島には、滞在していたとされるホテルの一室を改装したアーネスト・ヘミングウェイ博物館があり、遺品などが展示されていたが、2006年、火災により焼失した。
フローズン・スタイルのカクテルの代表格であるフローズン・ダイキリは、ヘミングウェイが愛飲したことで知られる。ヘミングウェイが好んで呑んだとされるスタイルはパパ・ダイキリと名づけられた(ヘミングウェイは、モヒートも愛飲した)。(ウイッキペディア)
この曲の完成度の高さはまさに1970年代の貴重な遺産です。
胸が熱くなります。
ニール・ヤングも今日で一区切りです。
ご静聴ありがとうございました。
Neil Young / Buffalo Springfield Expecting To Fly
この夏はこれに挑戦!
【今週はこれを読め! ミステリー編】さらなるドンデン返し!
ディーヴァー第二短編集『ポーカー・フェイス』
WEB本の雑誌 8月16日(金)
2000年代以降に翻訳されたミステリー短篇集の中からベスト3を選んでもらいたい。
そう頼まれたら、答えは決まっている。
ジェフリー・ディーヴァー『クリスマス・プレゼント』(文春文庫)、
デイヴィッド・マレル『真夜中に捨てられる靴』(ランダムハウス講談社文庫)、
フェルディナント・フォン・シーラッハ『犯罪』(東京創元社)、この3冊だ。
それぞれ、収録作のサスペンス、落ち、文体、そして多様さ、のどれをとってもオールタイム・ベスト級の素晴らしさである。
しかし、ちょっと事態が変わってきた。
『クリスマス・プレゼント』にライバルが出現したからだ。それも同じ作者による一冊が。
『ポーカー・レッスン』はジェフリー・ディーヴァーの第二短篇集である。
原題はMore Twisted。
おやおや、と思ったあなたは正しい。
第一短篇集『クリスマス・プレゼント』の原題は Twistedだったからだ。
「ひねりを」「もっとひねりを」とミステリー作家は言う。
収録作は16篇で、そのうち1作「ロカールの原理」は、ディーヴァーの看板である四肢麻痺の天才捜査官、リンカーン・ライム・シリーズの作品だ。
慈善事業の財団を運営する資産家が狙撃されて死亡する事件が起きる。
リンカーン・ライムの眼となり、手足となるアメリア・サックスが、その犯行現場に派遣されるのである。
「ロカールの原理」とはこのシリーズにもたびたび登場する科学捜査上の教条の一つで、「犯人と犯行現場、または犯人と被害者のあいだでかならず微細証拠が交換される」というものだ。
それがきちんと事件解決に利用されているのが、ファンとしては嬉しい。
短篇ではあるが、しっかりとした読み応えがある。
それ以外の作品はノンシリーズだが、1作だけある先行作品にオマージュを捧げる短篇が混じっている(どれかは読んでのお楽しみである)。
前作『クリスマス・プレゼント』との共通点は、読者をびっくりさせようという作者の熱意だ。
びっくりさせるといっても、バン! ----こういう風に唐突にショックを与えて読者の肝を抜こうというものがあれば、相手が気づかないように危険地帯に足を踏み入れさせ、脱出できない底なし沼にはまってしまったことを気づくまでほくそ笑んで物陰に見ているような人の悪いやり方もある。
ディーヴァーの作品には後者が多く、しかも秀作もそちらに集中している。
たとえば「動機」という短篇では最後の2ページに登場人物が陥った境遇が種明かしされ、そこがとんでもない怪物領域であることが知らされるのである。
もちろんその前に「これより先......」という標識は出ていたのだが、先を急ぐ主人公の(そして登場人物の)脳にはその警報が届かなかった。
こうした予兆の書き方にもディーヴァーは長けていて、たとえば「監視」という短篇では読み返すとニヤリとさせられる個所がいくつかある。
感心されられた作品はいくつもあり、その中の「生まれついての悪人」には遠い昔に読んだスタンリイ・エリンや、フレドリック・ブラウンなどの短篇の名匠を思わせる味がある。
常識の自明さを疑うような視点が加わると、ディーヴァーは最強になるのだ。
帯には「これぞだまされる快感!」との惹句が躍っているが、一つ付け加えるならば、ドンデン返しが成功しているのはサスペンス及びスリルの効用である。
先に何があるのかわからない、後ろから危険なものが追ってくる、という不安と恐怖の感情が掻き立てられ、そのために脇目もふらずにゴールへと飛び込んでしまう。
そこに罠が待っているのは先刻承知のことなのに。
その技巧の冴えもぜひじっくりと味わってほしい。
蛇足ながら書いておくと収録作のうち「恐怖」は、ディーヴァーが読者を操る技巧のノウハウを開陳するために書いた作品である。
巻末の解説「『恐怖』について」と併読することをお薦めする。
(杉江松恋)
ちなみに、週刊文春臨時増刊号で特集したオールタイムミステリーは、国内部門では「獄門島」横溝正史がぶっちぎりで1位、海外部門では「そして誰もいなくなった」アガサ・クリスティーもぶっちぎり1位という結果でした。
さて、杉江氏おすすめの上記本は、将来ランクインされるでしょうかねえ?
では、今日の名言です。
「男はしばしばひとりになりたいと思う、女も一人になりたいと思う。
そしてその二人が愛し合っているときは、そういう思いを互いに嫉妬するものだ」
「武器よさらば」アーネスト・ヘミングウェイ
深い言葉です。
恋をしていれば、もっともっと会いたいと思う。
ではなぜ会えないのか?
深く恋をした男女ゆえの永遠のジレンマなのでしょうか?
アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ(Ernest Miller Hemingway、1899年7月21日 - 1961年7月2日)は、アメリカの小説家・詩人。
彼の生み出した独特でシンプルな文体は、冒険的な生活や一般的なイメージとともに、20世紀の文学界と人々のライフスタイルに多大な影響を与えた。
ヘミングウェイはほとんどの作品を1920年代中期から1950年代中期に書き上げて、1954年にノーベル文学賞を受賞するにいたった。
彼は6つの短編集をふくめて7冊の小説と2冊のノンフィクション小説を出版した。
3冊の小説、4つの短編集、3冊のノンフィクション小説が死後、発表された。
これらはアメリカ文学の古典として考えられている。
行動派の作家で、スペイン内戦や第一次世界大戦にも積極的に関わり、その経験を元に行動的な主人公をおいた小説をものにした。
『誰がために鐘は鳴る』『武器よさらば』などはそうした経験の賜物。
当時のハリウッドに映画化の素材を提供した。
短編には簡潔文体の作品が多く、これらはダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーと後に続くハードボイルド文学の原点とされている。
1954年、『老人と海』が大きく評価され、ノーベル文学賞を受賞(ノーベル文学賞は個別の作品ではなく、作家の功績および作品全体に与えられることに注意)
この年、二度の航空機事故に遭う。
二度とも奇跡的に生還したが、重傷を負い授賞式には出られなかった。
以降彼の特徴であった肉体的な頑強さや、行動的な面を取り戻すことはなかった。
晩年は事故の後遺症による躁鬱に悩まされるようになり、執筆活動も次第に滞りがちになっていく。
1961年、ライフルで自殺。
作家のレスター・ヘミングウェイは弟、女優のマーゴ・ヘミングウェイ、マリエル・ヘミングウェイは孫娘である。
『海流のなかの島々』の舞台ともなったバハマのビミニ島には、滞在していたとされるホテルの一室を改装したアーネスト・ヘミングウェイ博物館があり、遺品などが展示されていたが、2006年、火災により焼失した。
フローズン・スタイルのカクテルの代表格であるフローズン・ダイキリは、ヘミングウェイが愛飲したことで知られる。ヘミングウェイが好んで呑んだとされるスタイルはパパ・ダイキリと名づけられた(ヘミングウェイは、モヒートも愛飲した)。(ウイッキペディア)
この曲の完成度の高さはまさに1970年代の貴重な遺産です。
胸が熱くなります。
ニール・ヤングも今日で一区切りです。
ご静聴ありがとうございました。
Neil Young / Buffalo Springfield Expecting To Fly