春が来て中学3年生になった
 
 
 
少しずつではあるが着実に戦績を伸ばしてきた雄大にとって、この1年があんなにも苦しいものになるとは思いもしなかった
 
 
 
 

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進級して少し経った春のある日

 

 

 

私は夢を見た

 

 

 

夢の中で雄大は私にこう言った

 

 

 

「〇〇高校を受験することにしたよ」

 

 

 

夢の中の私は驚き、妻は思いもよらぬ言葉に飛び跳ねるくらいに喜んでいた

 

 

 

〇〇高校は県内でもトップクラスの進学校だった

 

 

 

テニス部は存在しない

 

 

 

良い夢を見た気持ちの良い朝の目覚め

 

 

 

起きて来た雄大に私が見た夢の話をしようと思った時

 

 

 

私より先に雄大が口を開いた

 

 

 

「昨日、すごい夢を見たんだ。全日本ジュニアで優勝する夢でね、でもなぜかダブルスだったんだよ。俺のペア、誰だったと思う?健太郎君なんだよ。県が違うから組めるわけないけど、確かに健太郎君だったんだ。こうなったら単複優勝を目指すしかないな。」

 

 

 

小児のような無邪気な笑顔だった

 

 

 

それを聞いた私は自分の見た夢の話はできなかった

 

 

 

そんなわけない

 

 

 

雄大がテニスを捨てて進学校へ行くことなんてあるわけないじゃないか

 

 

 

あの時の私は何を期待していたのだろう

 

 

 

雄大のことを理解をしていたつもりでいたのに

 

 

 

心のどこかではまだ机に向かう姿を望んでいたのかもしれない

 
 
 
 
 
 
この日の夜
 
 
 
健太郎君から連絡が来たのは驚くほどの偶然だった
 
 
 
 
 
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