某ケニアンNGO代表に学ぶソンコ(成金)のなり方

               アフリカでNGO代表になろう!

               講師 某NGO 代表 元牧師 


①スポンサー(ドナー)は先進国で名の知れた団体と個人を並行して探そう

スポンサーの団体名で虎の威を借る狐になればいい

前職が牧師なら社会的信用はもう太鼓判 すぐ見つかることでしょう

個人スポンサーは金持ちで敬虔なクリスチャンを選ぼう

彼らは団体ほど査定が厳しくない

同情を誘い個人名のついたセンターを建ててやれば彼らの自尊心は満たされる

二重帳簿にも気付かれない

実際のスタッフの薄給と架空の給与明細

当然ながらこの差が大きければ大きいほど利益が上がる

彼らからの絶対的信頼を勝ち取るのは容易い

具体的なケースを話し そしてあなたのおかげでレスキュー出来たと語ればいいのだ

良心が痛い?

これはビジネスと割り切りましょう

仕事でそれなりの実績をあげればよいのです

スタッフの給料の搾取は個人スポンサーには絶対気づかれません

彼らは金銭感覚が鈍くなっているからです

スタッフ一人当たり1000シル程度の搾取

大丈夫ですよ

ばれはしません


②スタッフにも敬虔なクリスチャンを選ぼう

彼らは薄給でもしっかり働いてくれる

聖書から都合のいいような説教をしてやればいい

薄給だけれども困っている人のために頑張っている

彼らの献身的ナルシシズムはそれだけで満たされる

忍耐強い彼らをときに励ましてやればいい

もし トリックに引っ掛からなかった場合

何かにかこつけ解雇すればいいだけのこと

飴と鞭は使いようですよ


また 良心が痛い?

大丈夫

解雇しても 恨まれたりしませんよ

金と教会の権威があればね

だれも あなたに逆らうことはありませんよ


③CMはしっかりやろう

自分たちがどれだけ素晴らしいことをしているか

メディアを利用してしっかり宣伝しよう

ドナー・スタッフともに名誉な仕事をしているのだと思わせることができ

忍耐強い組織になりますよ


④スタッフに全体予算は見せないようにしよう

特に会計課のスタッフには注意を払い

予算を見せず こちらの提示した額で プロジェクトを遂行させよう

二重帳簿の手口で

浮いた金はすべて懐に入ります

またまた 良心が痛い?

大丈夫

ケニアでは 汚職は常識ですよ

政治家 警察を始め 官公庁職員 

偉くなるにはチャイ(賄賂)が必要でしょう?

横領も同じことですよ

やることやってりゃあ 誰も疑ったりしませんよ

これまでのアフリカの歴史を見てご覧なさい

先進国にいいように利用され 隷属していたあのころを

先進国も今は善良ぶってますが汚いことをやってきたのです

だからためらう必要はないですよ

お祈りをすれば これは浄財になります


⑤秘書は若い敬虔なクリスチャン女性を選びましょう

大丈夫 セクハラできます

彼女は忍耐強いです

秘書から Evilだと言われようが気にしなくていいです

彼女は 口外はしません

彼女は信心深いからからこう考えるでしょう

聖書は正しい

けれども人が罪を犯す

牧師も人なのだと

信仰を捨てず

罪を憎むだけ

なんとクリスチャンの鏡なことか

え? それでも元牧師か?

ええ そうですよ 

聖書はいろんな解釈ができる

自分に都合のいい正義を聖書から引用すればいいのです

私の考えは間違ってますか?

いやいや そんなことない

ビジネスの成功者だからこそ

この境地に立てるのです 

反論があるなら アフリカでのビジネスに成功してから言ってくださいね


留意点
・金もうけのためなら神をも利用する強靭な精神を持つようにしましょう
・部下の恨みを買わないよう宗教をうまく利用し泣き寝入りさせましょう
・パートナーには腹黒い身内を選びましょう。家庭は荒みますがこれでビジネスは大成功!

※良心の呵責のある方 家庭を幸せにさせたい方 またこのビジネスに異を唱える方
 残念ながらあなた方にこのビジネスは向いていません。どうぞ堅気の職業を選んで幸せになってください。しかし、この話は内緒ですよ。忘れてくださいね。もし口外した場合は、ウイッチマンに依頼しておきましたから呪われますのでお気を付けくださいね。

ではでは アサンテ サ―ナ



参考資料


ケニア政治・経済の動静 2010年4月~6月

1.選挙後暴動の審理
  2007年12月末の大統領選挙の後に発生した暴動の審理のため、国際刑事裁判所(ICC)のオカンポ検事が5月8日にケニアへ到着し、5日間の間に予審判事に逮捕請求するための調査、証拠集めを行った。同検事は、キバキ大統領とオディンガ首相と面談し、調査結果を報告した。同検事は11月までに調査を完了させたい、重い責任を有する容疑者は6人、10月に再訪するとしている。ICCの調査とは別に政府は真実・正義・和解委員会を設置し、国内裁判を行うべく調査を進めている。キバキ大統領が指名した委員長のMr.Kiplagatはモイ政権時代に政府高官(外務次官、英国大使など)だった人物で、以前から土地汚職(不正取得)、オウコ外務大臣(当時、モイ大統領の政敵)の暗殺などに関与した疑いが持たれており、国民の間で公正な審理は到底不可能として辞任を求める声が高まり、各地での公聴会でもボイコットが起きたが、本人は国内裁判が開始されるまで辞任しないと突っぱねた。しかし、Ms.Murungi副委員長(NGO主宰弁護士)は国民の信任のない委員会では調査、審理は進まないと辞任してしまった。政府は後任の副委員長を任命した。

2.憲法改正
  5月6日政府は憲法改正案を公表し、翌日から専門家による改正案にかかる国民教育が開始された。12日暫定選挙管理委員会は、国民投票の日程を発表し、7月13日から8月2日まで賛成派(緑色)と反対派(赤色)によるキャンペーン、8月4日投票、6日結果発表、20日新憲法公布(賛成多数の場合)と決まった。改正案は、国会を通過したものの、一部の閣僚、国会議員及び教会は、土地制度改正、妊娠中絶の条件付き容認、イスラム家庭法廷などに公然と反対を唱えている。6月13日、ナイロビの公園で開催された反対派集会で手榴弾が爆発し、6人死亡、104人負傷の惨事となった。警察は、この集会で民族対立を煽る敵対的スピーチを行ったとして現職道路副大臣を含む国会議員3名を逮捕し、取調べを行った(後日釈放)。大統領は当該副大臣を停職にした。賛成派による攻撃、反対派の自作自演、イスラム勢力によるテロなど諸説があるが、事件の犯人は逮捕されておらず、捜査は行き詰まっている。国民投票の選挙人登録者数は、12,337千人で2007年大統領選挙の14,000千人を下回っている。暫定選挙委員会に対する国民投票にかかる予算の交付が遅れている。政府は、当初ドナーの援助を期待していたが、支援を得られていない。日本政府は、政府から要請のあったノンプロ無償見返り資金の積立金の本件予算への充当(約102百万ケニアシリング=117百万円)を承認した。結局、政府は他の予算を流用することにした。

3.汚職
  教育省における、初等教育の無料化にかかるドナー援助資金(英国、米国)の不正支出の疑いで停職になっていた教育省次官が地方自治省次官として復職した。独立機関の反汚職委員会は調査未了としているが、政府は調査完了とした。他にも汚職容疑にかかる反汚職委員会による調査実施のため、農業省次官、首相府次官及び官房長、特別プログラム省次官、国家穀物生産公社総裁が2月に停職になっていたが、政府は調査完了、嫌疑不十分として停職措置を解除した。他方、反汚職委員会は調査は終了していないとしている。ナイロビの新墓地建設用地取得にかかる汚職疑惑に関し、地方自治省次官及びナイロビ市助役が停職処分になっていたが、調査の結果、汚職に関与していたとして更迭された。

4.治安
  警察の報告によると一般犯罪、暴力事件が増加している。若年失業者の増加、ソマリアなど周辺国からの銃器の流入が影響している。新しい傾向として誘拐事件が急増。6月13日公園集会の手榴弾爆発事件に見られるようにテロも脅威。カージャック、強盗、殺人も多い。

5.国会議員補欠選挙
  2007年総選挙の後、不正の訴えのあった選挙区2ヶ所について、暫定選挙管理委員会の調査の結果、不正が認められ現職国会議員2名(運輸大臣及び貿易副大臣)が失職となり、補欠選挙を行うことになった。6月10日に実施されたニァンザ州キシイ県の選挙区では、小政党の人民民主党(Peoples Democratic Party)の候補者が、2大政党のPNU(貿易副大臣)とODMを退けて勝利し、サプライズと言われた。7月12日実施のコースト州クワレ県の選挙区では、PNU(運輸大臣)が勝利した。

6.内閣改造
  4月12日キバキ大統領はオディンガ首相と合意のうえ内閣改造を行った。ウィリアム・ルト農業大臣(ODM)が高等教育大臣へ、サリー・コスゲイ高等教育大臣(ODM)が農業大臣へとポスト交換の異動となった。ルト大臣は、ODMの副党首であるが、マウ森林不法居住者の退去、汚職対策、憲法改正など主要政治課題について党首のオディンガ首相の方針に反対している。ルト大臣はリフトバレー州選出で同州の国会議員約20名を率いて、改正憲法案に公然と反対している。改正案は、地方行政について中央から県へ地方交付金を支給し県が自治を行うとしているが、民族分断、民族差別につながるものと批判している。同大臣はカレンジン族だが、同族はさらに少数民族に分かれており、県の自治が少数民族ごとに行われれば、カレンジン族の結束、政治的力を殺ぐことになり、2012年大統領選挙に立候補をめざす同大臣にとって不利になるものと見ているものと思われる。ルト大臣に近いエネルギー副大臣が更迭され、オディンガ首相に近いリフトバレー州選出の国会議員がエネルギー副大臣に任命された。予算規模の大きい農業省、エネルギー省から敵対者を退け、政治力を弱めようとする意図が憲法改正推進派の大統領及び首相にあるものと思われる。
 また、選挙不正で失職し補欠選挙に出ることになった運輸大臣の代行に貿易大臣が決まり、このほか医療サービス副大臣、国家遺産文化副大臣が任命された。

7.2010/11年度予算
  6月10日ウフル・ケニアッタ財務大臣が国会で2010/11年度予算案を発表した。総額約1兆ケニアシリング(1.1兆円)、対前年度比12.6%増、開発予算割合35%(前年度32%)、道路が最大505億シリング、次いでエネルギー306億シリング、水・灌漑247億シリング。
世界金融危機の国内経済への影響を回避すべく大型予算が組まれている。(詳細は、往電KY/6R-0026(7.7付け)を参照ください。)

8.米国バイデン副大統領来訪
  南アW杯開会式に出席する米国バイデン副大統領が往路7月7日から10日までケニアに立ち寄りした。キバキ大統領、オディンガ首相、ムシオカ副大統領ほか主要政治家と会談し、同副大統領は、脆弱な東アフリカの中でソマリア、スーダンなど周辺国が不安定になっており、最大の経済力を有するケニアが政治的、社会的な安定を持続することが米国の利益につながるとの認識を示し、連立政権合意の4課題(憲法改正、土地改革、司法改革、警察改革)の進展に対する期待を表明した。また、憲法改正実現後のオバマ大統領のケニア来訪の可能性に言及した。ケニア側は、ソマリアのイスラム急進派アルシャバブのケニア及び東アフリカへのイスラム教徒への影響力拡大の懸念及びソマリア海賊対策に対するEU支援だけでは不十分で米国支援への期待を述べた。憲法改正案に反対しているモイ前ケニア大統領は、米国副大統領の改革への期待表明は、独立国ケニアに対する内政干渉であると非難した。

9.オディンガ首相の入院
  6月28日オディンガ首相は頭痛を訴えナイロビ病院へ入院した。頭部スキャン、頭部血圧降下の手術が行われ7月4日退院した。3週間前に車中で頭をぶつけたことが原因。退院後2週間は軽い仕事だけに対応し安静にしている。

10.東アフリカ共通市場
  7月1日東アフリカ共通市場が発足した。ケニア、ウガンダ、タンザニア、ルワンダ、ブルンジの5ヶ国が参加し、2015年までの貿易障壁の撤廃、域内自由貿易を目指す。すでに域内関税及び域外から輸入税の税率が共通になっている。将来は経済力が最大のケニアとの貿易を除き関税の免除を計画している。さらにEACは、2012年までの通貨統合を検討している。経済界は、貿易物資の国境通過の遅延、コスト高を解消するものとして共通市場を支持している。他方でケニアによる経済支配、ケニア人労働者の他国への流入による雇用不安などが懸念されている。

ケニア政治・経済の動静2010年1月~3月

1.選挙後暴動の審理
  2007年12月末の大統領選挙後の暴動(死者1,133人、国内避難民60万人)にかかる人道違反の容疑に関し、ICC(国際刑事裁判所)のオカンポ検事は、権力掌握の政治的目的を持って暴動が計画、扇動され、国会議員、政府高官、警察、ギャングらが関与したとして、3月初めに首謀者として20名の容疑者リストと証拠を予審判事団へ提出し、予審判事団は3月末に本件審理の実施を決定した。ケニアはICC条約に批准しており、これを受け入れ調査に協力せざるを得ない。他方、政府は、ICCとは別に国内で解決すべく、暴動にかかる真実究明、和解・調停の促進のため委員会を組織し、各地で地元民との話し合いを始めていた。しかし、委員長(Mr.Kiplagat)がモイ政権時代の政府高官(外務次官、英国大使等)で、汚職やモイ大統領の政敵のオウコ外務大臣(当時)の暗殺(1990年)に関与した疑いがあるとして、各地で話し合いのボイコットが起き、法曹団体、市民団体らが委員長の更迭を要求している。委員の間でも委員長の過去の問題に関し、調査が必要との声が上がった。副委員長は、委員会の機能を果たしていないのに高給を受け取るのは問題として、辞任してしまった。2007年選挙より前の過去の問題、抗争が今でも尾を引き、国民和解、統合が難しいことが浮き彫りとなった。

2.憲法改正
  2008年4月連立政権発足時の政党間合意のひとつに憲法改正があり、政府は専門家委員会を組織し、委員会により改正素案が作成され、公聴会を経て修正し、2月に国会の委員会へ提出された。同委員会で議論のあと再度修正され、内閣法制局へ提出された。主要改正点は、地方分権(国から直接、県の下の郡Countyに地方交付金支給、州、県は計画・調整、郡が施行)、上院・下院の二院制、土地制度変更(一定規模以上の遊休地を国有化)、妊娠中絶容認(母子の生命が危ない場合、医療従事者の判断により容認)、イスラム教徒のコミュニティ法廷容認(通称Khadis Court、改正案は、夫妻がイスラム教徒の場合、結婚、離婚、家庭内暴力、財産相続等家庭争議に限ってコミュニティ首長による裁きを容認)など。国会委員会通過後でも一部閣僚・国会議員及び教会団体が改正案に反対している。(ルト農業大臣(ODM)、ナオミ特別プログラム大臣(PNU)らが土地制度の改正案に反対、修正を主張。教会は妊娠中絶の禁止とKhadis Courtの規定削除を主張。)しかし、政府は修正に応じず、5月上旬に改正案公示、8月上旬に国民投票の予定で選挙人登録を進めている。投票は賛成、反対の二者択一。

3.汚職
  初等教育無料化の支援のための英国、米国の財政支援資金の不正使用が英国DFIDの監査で発覚した。虚偽のワークショップ、教科書印刷などで学校教員らが公金を横領していた。反汚職委員会が調査中。教育大臣の更迭を求める声が高まったが、大統領は教育次官を停職とした。
2008年旱魃に伴うメイズの緊急輸入販売にかかる汚職疑惑について、反汚職委員会と民間監査法人が調査。ルト農業大臣の関与が噂されたが、農業次官、首相府次官、特別プログラム省(旱魃対策担当)次官らが停職となった。同大臣は、憲法改正案に反対していることもあり、オディンガ首相のイニシアチブにより4月に予算、権限のより少ない高等教育大臣ポストへ異動となった。
ナイロビ市の墓地が一杯になり、市は郊外に土地を取得したが、ブローカーを通して法外な高値で取引されたことがマスコミで報道され、ムダバディ副首相(ODM)の関与が取りざたされ、反汚職委員会は同副首相を尋問したが、証拠はなく起訴に至らず。地方自治省次官が停職となった。
いくつかの汚職で、次官、局長ら公務員は停職など制裁措置を受けるが、国会議員の大臣は何ら措置を受けないことに対して、公務員組合などが反発している。

4.連立政権の分裂危機
  上記汚職を受けて、オディンガ首相は、2月の訪日直前に教育大臣と農業大臣の停職を命じたが、キバキ大統領は閣僚の任命・罷免の権限は憲法上、大統領にあるとして、停職措置を撤回した。オディンガ首相は、連立政権合意書の中で首相に閣僚任免の権限が与えられている、大統領側の憲法解釈は恣意的であるとして反発した。ODMは連立解消も辞さずとし、連立政権の立役者、アナン前国連事務総長の来訪、調停を求めた。しかし、内閣法制局の見解では、憲法上の権限は大統領にあるとなった。3月末にアナン前事務総長が来訪し、連立政権の維持、憲法改正、司法改革、土地制度の改革など合意事項の実行を求めたところ、ODM側は矛を収め、大統領の措置を受け入れた。

5.豪雨と洪水
  2010年に入り、降水量が例年よりもかなり多くなり、各地で局地的豪雨、洪水、地すべりの被害が発生。リフトバレー州(トゥルカナ、サンブル、バリンゴ、ナロックなど)、ニャンザ州、コースト州、北東部州などで、道路寸断、橋の崩壊、家畜死亡、畑・灌漑施設の冠水、家屋浸水、家屋崩壊などの被害が出ている。死者は30名以上、避難民は11,000人以上に上る。サファリで人気の高い、サンブル国立保護区の河川が氾濫し、橋やロッジが流され営業停止に追い込まれている。観光外貨収入にも影響する。気候変動に起因するエルニーニョの発生が原因と言われ、6月半ばまで例年より多い降水量が続く見込み。山間部では地すべり、泥流、停電、河川デルタ地帯では大洪水に注意が必要。

6.マウ森林保全
  オディンガ首相のイニシアチブにより、政府は、マウ森林はケニア国内で最重要の水源涵養林であるとして、森林保全・再植林のため、開墾地の接収、居住者の移転を決定し、2009年12月に保護区内の居住者の一斉退去を開始した。エリアごとに数回に分けて実施する計画であるが、1月に予定されていた2回目の一斉退去(大規模な土地の居住者が対象)はまだ実施されていない。
保護区内には、モイ前大統領、ルト農業大臣らリフトバレー州の有力政治家が大規模な土地を所有して、ビジネスを実施しており、リフトバレー選出の国会議員らが政府の進める土地接収、住民移転に反対している。反対者らは、退去を余儀なくされた小農らは新たな土地を与えられず行く当てもなく保護区の境界の外側に留まり、生活に困窮していると主張している。これに対して政府側は、反対勢力が意図的に彼らを境界に留め、反対運動の資金を出しているとしている。モイ前大統領はこの問題はセンシティブで政府が強行すれば流血の惨事になると脅している。このマウ森林問題を契機に、ODM内で親オディンガ派と親ルト派の対立が顕在化している。

7.オディンガ首相の訪日
  ライラ・オディンガ首相(ODM党首)が2月にタイと日本を公式訪問した。矢野哲郎日本-AU国会議員連盟副会長との話し合いによりキバキ大統領が日本政府に招聘を要請していた。同首相にとって次期大統領選挙のライバルの1人と目されるウフル・ケニアッタ副首相兼財務相(PNU)も同行した。オディンガ首相は、鳩山首相と面談し、気候変動対策円借款(オルカリア地熱発電所建設)と気候変動緊急支援ノンプロ無償(森林保全)のコミットを受けた。折りしもケニアでは2008年-2009年の旱魃で、水不足、電力不足、農作物生産減少、家畜死亡、マウ森林問題など気候変動問題がクローズアップされている時期であり、鳩山イニシアチブはタイムリーな支援として高く評価された。オディンガ首相は、ケニア産品の対日輸出、日本人のケニア観光及び日本企業のケニア投資の増大に向けた努力を訴えた。訪日中にいくつかの日本企業から開発投資計画の説明を受けた(原子力発電、地熱・ソーラーエネルギー、ラム港と南部スーダンを結ぶオイルパイプライン等)。
タイ政府は、エネルギー、農産物・果実の加工産業にかかる投資促進をプレッジした。

8.皇太子殿下のケニアご訪問
  皇太子殿下が3月7日から10日までケニアをご訪問された。ケニア政府の招聘を受けたもの。ケニアの後にガーナもご訪問された。サブサハラアフリカのご訪問は初めて。天皇陛下は1983年にケニア、ザンビアをご訪問されている。キバキ大統領、オディンガ首相との会談、
日本人学校視察、ご接見(一部の専門家、ボランティアも参加)、国立博物館見学、サファリ、記念植樹、ムエア灌漑農地(無償、技プロで支援実施済み、今後円借款予定)視察など分刻みのスケジュールに精力的にご対応された。首相晩餐会には日系企業関係者も招待された。在留邦人にとっても嬉しく仕事の励みになるご訪問であった。

ケニア政治・経済の動静2009年10月~12月

1. 選挙後暴動の審理
2007年12月末の大統領選挙後の2008年1月から2月にかけての大暴動は、死者1,133人以上、国内避難民60万人以上というケニア史上最大の惨事となった。コフィアナン前国連事務総長の仲裁により2008年4月に成立した連立政権は、真相究明委員会の報告と勧告を受けて、暴動の首謀者、暴力加害者を処罰する特別裁判所の設置の法案を国会へ上程したが否決された。国内裁判は信用できず、国際刑事裁判所(ICC)(ケニアはICC条約に加盟している)による裁きを求める世論の高まりが背景にあった。政府は法案を修正して再度上程しようとしたが、閣僚や国会議員の間で意見が割れ、結局上程されず、国内での裁判は開始されていない。これに対してICCは、この事件は人道上看過できないとして審理を行う方針を固め、オカンポ主任検察官がケニアを訪れ、キバキ大統領及びオディンガ首相ほかと協議した。両首脳は、ケニアの主権と国内での審理を主張し、ICCによる審理を要請しないこととしたが、ICC自身の判断による審理には協力することとした。ICCは、ケニア政府からの要請はなくとも審理可能として、関係書類を収集し、調査を開始した。しかし、当初予定していた被害者の家族等へのヒアリングは、家族等の身の安全が保証されていない現実から、まだ実施されていない。

2. 憲法改正問題
連立政権の合意書では、憲法、司法、警察、土地制度など改革を進めることが謳われていた。しかし、その動きは一向に進まず、業を煮やしたカルア憲法・司法大臣は2009年4月に辞職してしまった。後任のキロンゾ大臣は、英米などドナーの圧力を受けて、専門家による憲法改正案の策定を進め、11月半ばに改正案が発表された。この案をもとに政党(PNU,ODM等)、国会委員会で議論され、色々な修正案が出されている。議論の焦点は、大統領と首相の権限、閣僚及び国会議員の人数や報酬・特権、選挙区割りなどである。改正案が固まった後に国民投票が計画されている。警察改革では、対立している一般警察(General Police)と行政警察(Administration Police)を統合する案が出ている。

3. 汚職問題
グランドリージェンシーホテルのリビア企業への不透明な売却、食糧不足に伴う緊急輸入メイズの南部スーダンへの転売、Triton社石油輸入代金銀行保証の横領等政治家の関与が噂される大型汚職の疑惑が絶えず、一向に逮捕、起訴及び処罰がない現状に対する世論やドナーの怒りの高まりを受けて、政府の反汚職委員会(アンチコラプションコミッティ)の委員長が辞職した後、理事会が後任の人選を進め、委員長と2人の副委員長を推薦したが国会の承認はまだ下りていない。教育省の初等教育無料化政策のもとドナーから受けた財政支援資金にかかるDFIDの会計監査の結果、小学校の校長や教員が多額の金銭を横領した疑惑が発覚した。教育大臣や次官の関与が疑われているが、本人らは否定している。大統領は徹底調査を指示した。

4. KKK同盟
2012年12月の大統領選挙を目指して、有力政治家の合従連衡が始まった。最有力のライラ・オディンガ首相(ODM、ルオー族)に対抗して、現職副大統領カロンゾ・ムシオカ(現在PNU、カンバ族)、副首相兼財務大臣ウフル・ケニアッタ(PNU、キクユ族、初代大統領の息子)、農業大臣ウィリアム・ルト(ODM、カレンジン族)が同盟して、大統領にルト氏、副大統領にムシオカ氏、首相にケニアッタ氏の案が取り沙汰されている。しかし、各候補とも野心を持ち地方遊説等選挙準備を始めており、有力者間の合従連衡の行方は今後どうなるかまだまだ分からない。

5. 旱魃と洪水
大雨期(4月~6月)の雨は少なく、前年から続く雨不足もあいまって、乾期(7月~9月)には深刻な旱魃の状況が顕著になった。東部、北部、マサイステップの河川は干上がり、多数の家畜(特に牛)が斃死し、子供の病死、衰弱死も増えた。この旱魃はマウ森林の居住民の退去、再植林の動きに拍車をかけた。政府はドナーの緊急食糧援助をアピールし、日本政府も8月にメイズの無償援助を決定した。雨期(10月~12月)に入り、ようやく雨が降り、エルニーニョの影響による局地的豪雨が各地で洪水を起こし、道路や橋の流失、畑、民家の冠水、住民や家畜の死亡・行方不明などの大きな被害をもたらした。北西部トゥルカナのスーダンに通じる幹線道路やコースト州のマリンディとラムの間の道路などが一部不通になっている。

6. マウ森林の住民退去と補償
水源地帯であるマウ森林を保全し、水を涵養するため政府は保全区域内の居住民の退去、森林伐採地の再植林を決定していたが、住民の退去の支援、補償について政府と地元国会議員の間で揉めていた。政府はモイ政権時代に不法に土地を取得した者には一切補償しないが、土地を耕作している小農には補償するとしていたが、ルト農業大臣をはじめ地元リフトバレー州の一部国会議員は、退去は強制せず土地の権利証を持つ者には補償し、退去した小農には土地を提供するよう要求していた。政府は一時は森林公社のレンジャーなどを動員して期限までに退去しない者には強制退去執行の構えを見せていたが、最終的には、強制退去は実行せず、耕作農民以外でも偽物でない正式な土地権利証を持つ者には一定限度の補償を行うことで妥協した。11月中旬に小農を中心に住民が自主退去を始めた。1月から大規模農場の住民が退去する予定。不正に土地を与えた当事者であるモイ元大統領もマウ森林に大きな土地を持ち事業を行っており、その補償が問題になったが、オディンガ首相は争乱を避けるべく、補償することとした。

ケニア政治・経済の動静2009年7月~9月

1. 選挙後暴動の審理
ワキ委員会の調査結果と勧告を受けて、政府は2007年末の大統領選挙の後の暴動の真相究明と首謀者・加害者の処罰のための国内審理法廷の設置法案を国会に提出したが否決された。その後、政府は修正法案を国会へ提出すべく内閣で議論したがまとまらず、和解・連立政権の調停者コフィアナン前国連事務総長の指定期限の9月末までに国内法廷は設置されず、審理はハーグ国際刑事裁判所(ICC)に委ねられることになった。ICCは政府高官など重大容疑者について裁定するが一般人容疑者については、国内法廷に委ねられる。国会議員の1人が既存裁判所に選挙後暴動の特別審理法廷を設ける法案を準備しており、11月再開の国会で審議される見込み。ICCの本件主任検察官のオカンポ氏が11月にもケニアへ来訪し、キバキ大統領及びライラ首相と協議する予定。

2. 改革に関するドナーの圧力
国民和解合意に基づき、暴動再発防止に向けた改革の検討のため設置された有識者委員会が、土地、憲法、警察、司法などの改革案を提言したが、その実行は遅々として進んでいない。主要ドナーは改革を急がせるべく、政府へ圧力を加えている。米国は、改革に消極的な政府高官を名指しして米国入国禁止措置を発表した。その対象には、ウフルケニアッタ副首相兼財務大臣、サイトチ内務大臣、ルト農業大臣、ミチュキ環境大臣、キロンゾ法務大臣などの有力閣僚が含まれている。これに対して、キバキ大統領は直接オバマ大統領あてに抗議の書簡を送り、ワテングラ外務大臣は米国大使を呼び、突然の一方的措置を外交ルールから外れたものと抗議した。EUと英国も改革を急がせるべく、必要な措置を取ることを明確にしている。コフィアナン氏も改革の遅れに不満を持っており、10月にケニアへ来て、キバキ大統領、ライラ首相、他のステークホルダーと改革促進について話し合うことになった。ケニア政府は、改革は進捗していると自己弁護しているが、国民の多くは、改革は余りに少なく遅いと感じている。

3. 汚職と免責の継続
大統領は、反汚職委員会(アンチコラプションコミッティー)の委員長の任期切れ後も現職委員長の再任を決めたが、コミッティー経営諮問委員会はこれに異議を唱え、同意を必要とする国会でも再任が否決され、委員長と副委員長は余儀なく辞職した。背景として連立政権は汚職撲滅を掲げたが汚職は一向減らず、国民に不満があることがある。委員長は、同委員会は汚職の摘発に実績を上げているが、法的措置の権限は同委員会になく、摘発された者が処罰されないのは司法の問題としている。国民の間では警察と司法の汚職が問題視されている。警察の備品購入をめぐる汚職疑惑が報道され、大統領は一般警察トップを郵便公社総裁へ更迭し、後任に準軍事警察のトップが就任した。

4. 犯罪のエスカレーション
一般犯罪、暴力、誘拐が増加。仕事のない若者が増え、ソマリアなど外国から銃器の流入が増加していることが背景にある。コンゴ民のUN向けの武器を輸送中のトラックが襲われ武器が奪われる事件が起きた。

5. 国連総会とアフリカ首脳会議
9月15日ニューヨーク開催の国連総会(議題は平和と安全)にケニアを代表してライラ首相が出席(JICA日野経済アドバイザー同行)。国家元首ではないために米国オバマ大統領との公式会談、アフリカ首脳会議出席(議長はタンザニアとルワンダの大統領)はなかった。しかし、ライラ首相は懇親昼食会でオバマ大統領夫妻と歓談し、ケニアで報道された。

6. 新型インフルエンザの流行
H1N1ウィルスの感染者は、6月までは6例だったのが9月までに159例と急増。全国的に全寮制の学校で多く感染。日本人ボランティアも1人感染した。

7. テロの脅威
モンバサのホテル爆破の容疑者でアルカイダの一味と目されるケニア人が、ソマリアで米軍ヘリの急襲により殺害された。アルカイダは報復を宣言し、ケニアと米国の政府はテロに対する厳戒態勢を敷いた。

8. ソマリア紛争
モガデシュのAUソマリア平和維持軍(AMISOM)本部で国連からの盗難車両が突っ込んだ自爆テロがあり、AMISOMナンバー2ほか多数が死亡。

9. 旱魃、食糧危機
1年以上も深刻な旱魃が継続、全国的に水不足。最悪は東部州と北東部州。家畜が多数死亡。600万人以上が飢餓に直面し、緊急食糧援助が必要。ケニア政府は国家災害を宣言、国内外のドナーに食糧援助をアピール。日本を含め大半のドナーが前向きに対応。政府内に国家危機センターが設置され、ケニア赤十字とWFPを通じて緊急援助食糧の配給を開始。計画断水、計画停電もあり、経済成長に悪影響を及ぼしている。

10. マウ森林問題
主要河川の水源であるマウ森林の保全のため政府は保護区内の住民立ち退きの方針を決定したが、補償をめぐって地元国会議員と対立していた。しかし、政府と国会議員の話し合いにより妥協が図られ、立ち退きの強制はせず、正当な補償は行うことになった。政府は40万Haに及ぶ森林の境界画定、植林、立ち退きの費用として300億シリングが必要として、ドナーに援助を要請した。政府は不法居住民について、10月第3週までの立ち退きを命令。

ケニア政治・経済の動静2009年4月~7月

1. 選挙後暴動の裁判法廷
政府は、選挙後暴動調査報告(Waki Report)とそれを受けた連立政権の調停者コフィアナン前国連事務総長の勧告に基づき、暴動の首謀者を裁く国内法廷の設置にかかる法案を作成し国会に上程したが否決されたことを受けて、法案を修正して再度国会に諮るべく内閣に修正案を提示したが、国内法廷の設置について賛否が分れ国会への再度の上程はやめて、昨年11月に国会で承認されていた真実・正義・和解委員会を正式に設置(委員長はカレンジン族の元政府高官)し、処罰よりも和解・癒しを優先することとした。他方でコフィアナン氏は調査報告書と首謀者リストをオランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)へ渡し、ICCのオカンポ検察官(アルゼンチン大統領の汚職を裁いた経験あり)のチームが調査を開始した。

2. 暫定選挙管理委員会
4月に設置された暫定選挙管理委員会はスタッフ・予算を確保し、活動を開始。1回目の選挙として国会議員補欠選挙の手続きを進め、8月27日に投票日を迎える。

3. 憲法改正委員会
連立政権合意事項の1つである憲法、選挙、司法、警察の改革に関し、キバキ大統領が改革に消極的として辞任したカルア司法大臣に代わり首都圏大臣から横滑りしたキロンゾ司法大臣は司法と警察の改革にかかる委員会を設置し検討を開始した。全国で公開ヒアリングを実施中。

4. マウ森林問題
政府は、水資源に乏しいケニアにとって重要な水源涵養林であるマウフォレストにおいて、モイ政権時代に不法に土地を占拠した者による森林伐採、農地化を防止すべく、住民立ち退きを求めている。政府は立ち退きまでに3ヶ月間の猶予を与えているが、全住民に対する補償を求めるリフトバレー州選出国会議員等有力者と10エーカー以下の土地しか持たない農民だけを補償し、不正に土地を取得し転売利益を狙う不在地主等には補償しないとする政府ライラ首相側の間で緊張した対立が続いている。モイ前大統領は、この問題は慎重に扱わないと流血の事態を招くと警告している。


5. ビクトリア湖のミギンゴ島の領有権争い
ケニアとウガンダが合同で測量調査を開始したが、修了間際になってウガンダ側の調査団が引き揚げた。ケニア側調査団は同島がケニアに帰属することを宣言した。ウガンダ警察は同島に駐留を継続している。

6. 2009/10政府予算の発表
6月にウフルケニアッタ財務大臣が新年度予算を発表した。EAC加盟諸国はすべて同日に予算を発表した。ケニア経済の落ち込みによる歳入不足のため、政府は閣僚や各省高官の公用車を1台、1,800CC以下とし、既存の高級車は売却し、その収入を選挙後暴動の国内避難民支援に充てることとした。歳入不足分(109十億Ksh)は国内借り入れで賄う。開発投資予算は258.9十億Kshで前年度比82.6%増。道路が50.5十億Ksh(前年度比2倍以上)で最大、以下エネルギー(30.6十億Ksh)、水・灌漑(24.7十億Ksh)が続く。

7. 第8回国家センサス
1948年の1回目から10年おきに計画開発省が国家統計局を通して実施、前回は1999年。第8回は8月24/25日の夜間から1週間かけて実施。費用7十億Kshはケニア政府、USAID、国連他で負担。

8. 経済調査報告
政府計画開発省は2008年経済報告をリリース。2008年の経済成長率は1.7%(2007年7.1%)。選挙後暴動、旱魃、世界経済・金融危機が影響。2009年予測は2.5%~3%。2003年のキバキ政権発足以来最低の水準。2008年の年間物価上昇率26.2%(2007年9.8%)、1994年28.8%に次ぐ高い数字。主因は食糧と石油の高騰。

9. 旱魃に伴う食糧・水の危機
全国的に旱魃が続いている。2009年雨季(4月~6月)はかなりの雨不足で水力発電ダムや上水ダムの水位はかつてないほど低下。ナイロビでは計画断水、計画停電を実施中。半乾燥地では家畜が多数死亡。政府は穀物不足のため輸入メイズの関税を撤廃、ドナーに食糧援助を要請見込み。

10. 犯罪の増加、暴力団の脅威
強盗、窃盗、カージャック、殺人、家畜略奪、バス強盗、誘拐などの犯罪が増加。政府次官、警察幹部の殺害事件も起きている。銃器を使った犯罪、身代金目当ての誘拐が増加。
暴力団(ムンギキ)と自警団、警察の抗争も散発的に発生。モンバサで一般警察と政治警察(閣僚、省庁幹部、政府庁舎の警護、準軍事組織)の対立による殺人事件が発生。

11. テロの警戒
政府はソマリアのイスラム原理主義勢力シャバブによるテロを厳戒。ケニア政府は、ソマリア暫定政府を支援(警察官の訓練等)し国際社会によるソマリア沖海賊取締りを支援、ソマリア国境を閉鎖し不法入国の取り締まりを強化しており、シャバブから攻撃の警告を受けている。

ケニア政治・経済の動静2009年1月~4月

1. 選挙後暴力審理法廷
2007年12月の大統領選挙後の暴力抗争の真相究明委員会(ワキ判事委員長)の報告書勧告に基づき、政府は国内審理法廷の設置を国会に上程したが国会は否決。国内法廷が設置されない場合はハーグのICC送りが勧告されていたが、連立政権の調停者アナン前国連事務総長は、国内法廷の設置を待つことにした。

2. 暫定選挙管理委員会の設置
同大統領選挙プロセスのレビューを行ったクリフラー委員会の勧告に基づき政府は、選挙管理委員会の改革を行うこととし、12月に選挙当時の選挙管理委員会を解散した。後継選挙管理委員会の人選をめぐり与野党が対立したが、4月に1年間の期限付きで暫定選挙管理委員が任命され、選挙プロセスの改革を検討することになった。

3. 憲法改正検討委員会
連立政権の合意に基づき2012年の国政選挙前に憲法改正を行うべく独立委員会が設置された。委員長は前東アフリカ裁判所判事のNzama Kitonga氏。

4. 司法憲法問題大臣の辞任
4月にカルア司法憲法問題大臣(女性)が辞任。司法改革に消極的として同大臣の反対にもかかわらず大統領が政府推薦の裁判所判事を承認したことに反発したもの。同大臣は連立政権の一翼のNARC kenyaの党首で2012年大統領選挙への出馬に意欲的。後任大臣には、新設のナイロビ首都圏大臣のKilonzo大臣(ODM Kenya)が横滑り。

5. 選挙区見直し委員会
国会は2012年選挙前に行政区分・選挙区の見直しを行う委員会を設置した。

6. 予算国会
2008年度補正予算の財務省原案に96億ケニアシリングの欠損が発覚。ウルフケニアッタ財務大臣は印刷ミスと釈明。省内のPNU反対勢力による意図的な操作との噂もあり、警察、反汚職委員会が調査中。
国会の行政府代表をめぐり与野党が対立。PNUはカロンゾ副大統領、ODMはライラ首相を主張し、憲法の解釈と連立政権合意をめぐり紛糾、国会中断。しかたなく、国会議長が暫定的にその任務を代行することになった。

7. 港湾開発
モンバサ港が輸入貨物の増大に伴う貨物の長期間滞留の状況改善のため、24時間操業を開始。ラム港の拡張に着手。

8. メイズスキャンダル
前四半期に旱魃にもかかわらず政府首脳が原料メイズの輸入をストップさせ、製粉メイズの高値転売で暴利を貪った疑いが報道され世間の非難を浴びたが、南アから緊急輸入した製粉メイズが汚染していたことが問題になっている。

9. ケニア経済の低迷
2008年の経済成長率は1.7%と2007年の7%から大きくダウン。選挙後暴動や旱魃が影響。

10. 国勢調査
第7次国勢調査の準備が開始された。1948年に開始され前回は1999年、10年おきに実施。費用は約70億Ksh、ケニア政府、USAID、国連他ドナーが分担。

11. ウガンダとの国境紛争
ビクトリア湖に浮かぶMigingo島の帰属をめぐりウガンダとケニアが紛争。ケニアは島も水域もケニアに帰属、ウガンダは島はケニア、周辺水域はウガンダに帰属を主張。水産資源が豊富でウガンダの漁民が島に居住。水底に石油埋蔵の噂がある。

12. ムンギキと自警団の抗争
中央州でムギンキ(キクユ族の非合法暴力犯罪集団、ミニバス事業者や商店から金銭をゆすり取るなどのヤクザ行為、選挙後暴力の計画的実行など、背後に政治家、有力ビジネスマンの噂)と地域住民の武力抗争が激化し、4月に一夜で自警団29名殺害の事件発生。その前に自警団によるムンギキ14名殺害の報復。警察は殺害教唆の疑いでムンギキリーダーを逮捕、拘留。一部国会議員が不当逮捕、釈放を主張。

13. マウ森林問題
マウ・フォレストはケニア最大の水源地森林(ソンドゥミリゥ水力発電所の水源地でもある)。土地の私有制のもと土地購入の入植者による森林伐採と森林保全の矛盾が、旱魃の常習によりクローズアップ。政府は立ち退きさせているが補償金が問題になっている。

ケニア政治・経済の動静2008年9月~12月

1. クリフラー委員会
2007年12月の大統領選挙にかかる不正の有無の調査、南アのクリフラー判事が委員長。9/17に報告書提出。キバキ(現大統領)、ライラ(現首相)のちどちらが勝ったのか判定することは不可能との結論。選挙管理委員会のオーバーホール及び選挙法の改正を勧告。
2. ワキ委員会
同選挙後の暴動(1,133人死亡、35万人以上が国内避難)の真相究明、ケニアのワキ判事が委員長。10月中旬に報告書をアナン前国連事務総長(連立政権調停者)、キバキ大統領、ライラ首相に提出。暴動は計画的で、政治家、ビジネスマンなどが資金を出したり、若者を扇動したりしたと指摘。首謀者の中には現職閣僚も含まれているとのこと。特別審理法廷の設置と警察、選挙関連法制・憲法の改正を勧告。10/17から60日以内に審理法廷が設置されない場合には、ハーグの国際刑事裁判所による審理を勧告。

3. 選挙後の暴動の審理法廷
政府は同法廷の設置に合意、国会へ設置法案を上程。

4. 選挙管理委員会
政府は12月に現在の選挙管理委員会の解散を命令、委員、スタッフの一部は憲法で保障された委員会の政府からの独立を盾に解散、解雇に抵抗し、憲法違反として裁判  所に提訴。1年間の暫定選挙管理委員会の人選を人事院総裁(PNU)が首相(ODM)に相談なく進めたことにODMが反発、連立解消の脅し。

5. コッカー委員会
国営の最高級ホテル、グランドリージェンシーがリビア企業へ売却されたが、財務
大臣らに汚職疑惑。コッカー判事が委員長の委員会が調査。9月に報告書がキバキ大統領へ提出された。内容は一般公開されていない。財務大臣に不正はなく、中央銀行が法規を軽視したことが指摘されている由。

6. 国会議員の税金問題
財務大臣は国会議員の報酬にかかる課税の法案を国会へ上程したが、国会で否決

7. 港湾問題
モンバサ港の貨物滞留が問題になり、ライラ首相は港湾公社トップを更迭、モンバサ港の24時間営業を開始、ラム港の拡張を計画。

8. 政党登録要件の厳格化
国会で選挙区、国会議員数の見直しを審議中だが、政党の数が多すぎることが問題として、政党内の選挙とその結果報告を義務付け。

9. 燃料、メイズ粉の高騰
選挙後の暴動が農業生産の減少を招き、メイズ粉90Kg袋は選挙前35Kshが120Kshへ。政府は、貧困層とその他の2段階価格制を導入。原油高で燃料もリッター78Kshが100kshへ高騰。(バス代も値上げ。徒歩通勤増加。)

10. マスメディア法改正
政府が行き過ぎた報道を規制できる改正法案が12月に国会通過、首相の反対にもかかわらず大統領が法制化許可の署名、メディアは反発、ODMは協議なく大統領が署名したことに反発、連立解消の脅し、大統領は再度の改正を指示。

11. ケニア経済
2008年調査によると2007年の経済成長率は7%、インフレ率は2006年14.5%に対して2007年9.8%と減少。しかし、2007年12月の選挙後の暴動が経済に悪影響、2008年はマイナス成長、高いインフレ率となる見込み。