スナコー通信508号



7月3日


暑中お見舞い申し上げます。




「野比にて」


 「シルクロードが好きで何回か行ってみたの。」

叔母さんがシルクロードの地図を見せながら笑顔いっぱいで私に語り始めた。

窓から初夏の日の光が差し込んでいる。

海からの風がさわやかだ。


 今日は法要のため三浦半島の野比海岸近くで親戚の集まりがあった。

妻側の親戚なので私にとってはめったにない機会だ。

私のおじやおばにあたる人から何回かあいさつされた。

「砂辺さんでしょ?」

「よろしくね。」

皆気さくで温かかった。

三浦半島の気候のようにやわらかだ。


法要のあと一人の叔母さんに「ぜひうちに寄りなさいよ。」と誘われた。

叔母さんの家は野比海岸近くで、坂を上がった一番上にあるという。

さっそく妻と一緒に行ってみた。

叔母さんの家の前に立つと野比の海が見下ろせた。

庭には赤や黄色の花が咲き乱れていた。


後ろを振り返ると親戚の青年が私たちの後からやって来る。

「来ちゃったよ。」

明るくて人懐っこい笑顔が私の目の前に現れた。

「砂辺さんですよね。覚えていますよ。」

と挨拶された。

確かラジオのDJをしている青年だ。

「今度ラジオ聞くよ。」と言うと笑顔がますます明るくなった。


 皆で家に入って座ると娘さんが冷たい紅茶を出してくれた。

テーブルのガラスの下にシルクロードの地図があった。

目の前の掛け軸は中国の水墨画だ。

仏間に20cmほどの仏像がある。


「この仏像はひょっとして叔母さんが自分で彫ったの?」

「そうなの。1年近くかかったのよ。」

叔母さんは仏像を掘る教室に通っていて今もまた新しいのを彫っているところだという。


「シルクロードが好きなの。何回か行ったのよ。」

そう言えば部屋の中にシルクロードの関係の本がたくさんある。


叔母さんの話は尽きなかったが陽が傾いてきたので家を辞することにした。

庭を出ると真正面に海が見えた。

陽光がきらきらと反射している。

家の前に黄色い花が一本すくっと高く咲いていた。潮風に吹かれて花びらが少し揺れた。