スナコー通信363号   

砂辺光次郎     

2006/06/21

                

「ピカソ」

ピカソが私を圧倒している。

ピカソ。「噴火し続ける火山」と言われた20世紀の巨人。

ピカソを見ると、不思議だが、その身体にまるでアマゾン川のような豊かな時間が滔々と流れているような感じを受ける。

フランスの国宝となっている記録映画を観た。

広々としたアトリエの中にピカソがいた。

絵を画き、友人と語らい、食事し、外を眺め、歩くピカソ。

ピカソが絵筆を持ち、友人と立ち話をする。

ごつごつした太い指と農夫のようなごつい手。太い腕、厚い胸。

上半身裸で、素足。大きなトランクス一枚で室内を歩いている。

アトリエの広い窓から南フランスの朝の光が差し込んでいる。

窓の外にはオリーブ、真紅のひなげし、紫のラベンダー、そして飛び交う野鳥たちが見える。葉がゆるやかな風で動いている。

ピカソは描きかけの絵を立てかけ、友人と語らう。

テーブルの上には黄色いバラと青の陶器、赤いコーヒーカップ、パン。これらが無造作に置かれている。

室内はスペイン風の甘くて濃いコーヒーの香りが漂っているようだ。

ピカソがのしのしと歩く。絵に筆を入れる。

しばらくすると絵から離れ、全体の構図を見る。また友と語らう。

こうした何でもない自然な振る舞いにも、重厚な存在感を感じる。

それはどこから来るのだろうか。

たぶん、圧倒的な仕事の量と質、生きることと仕事と愛することが渾然一体となっていて、しかもどこにも無理がなく自然であること、こうしたことから来ているではないだろうか。

ピカソの最高の作品は、その生き方そのものだったのかも知れない。

(参考 「ミステリアス・ピカソ」)