湾岸戦争の頃、シンガポールに一人で旅行したことがあった。

 

 シンガポールでは夜、野外のレストランで食事をした。


 そこは、広場に安っぽいテーブルが適当にばさばさと二十ぐらい置いてあり、屋台の店が数軒あるようなところだった。


 僕はシシカカブとビールを注文した。


 それぞれのテーブルには体の大きないかにも筋肉隆々といった男がたいていひとりで静かにビールを傾けていた。


 その手の男は十数人はいたと思う。


 なぜか、群れず、一人で熱帯の生暖かい風に吹かれながら、静かにゆっくりとビールを飲んでいた。


 何か会話するわけでもなく、何を思っているのだろうか、特に群れるわけではなく、一人で座っている。


 たまたまテーブルが一緒になった二人連れの男と話をしてみた。


 彼らは、みな、国連軍の兵士なのだそうだ。


 現在進行中の湾岸戦争に赴任していて、今、一週間の休暇でシンガポールに来ている、ということだ。

 

 この2人は世界中を戦争で廻って来たという。


 どこが一番良かったか、と聞くと、ブラジルだ、と声をそろえて言った。


 ブラジルはどこがいいのか、と聞くと、女性がいい、と言っていた。


 周りを見ると、がっしりした体の大男たちが、相変わらず、一人で静かにビールを飲んでいる。


 こういう雰囲気が職業軍人なのかなあ、と思った。