社会学者マックスウェーバーの提唱した学説によると、

資本主義という思想は人類史上非常に珍しい考え方だったそうです。

 

金持ち国家は歴史上いくつもありましたが、資本主義を掲げた国家はアメリカ合衆国のみです。

資本主義とは非常に風変りな思想なのです。

 

資本主義になるには特別な条件をクリアしないといけません。

お金を儲けるという営みが宗教的に善行であり、素晴らしい行為であるという価値観を社会全体で共有する。

・嘘をつかない。

・殺人は悪行である。

・脅迫や暴力行為も悪行である。

・約束を守る。

・フェアに競争する。

・お金を貸し借りすることは推奨される。

・主権は市民にある。

 

などです。上記の様な高い倫理的規範が存在しないと資本主義は生まれないのです。実は資本主義とはとても倫理的な発想なのです。

まず金儲けを社会全体で善行だと信じることが必要となります。金儲け・蓄財=善行という価値観は極めて稀な思想で、普通金儲けと言ったら、本当はダメなんだけど教会や政府に寄付金を払ったりする代わりにしょうがなく認めてもらうことでした。アメリカはピューリタンが自主自立の精神で希望を追って開拓されていった国家であるため、お金持ちになること・蓄財とは良いことだという価値観を掲げることができたようです。

 

資本主義を円滑に進めるには規範を掲げ、規範の逸脱者と規範内の構成員とを区別できる必要があります。

脅迫や暴力行為を禁止しないと、ライバル企業を暴力によって威圧し倒してしまうかもしれません。

これでは健全な競争などできるはずがありません。

約束を守らなかったり、平気でうそをつく人ばかりの社会では契約など安心して結べません。これでは取引は活発化しません。

お金を多く持つ人が投資を行うことと信用創造のメカニズムによって資本は無限に増殖可能となります。

経済は政府ではなく自由な市場が主役になり発展します。

資本主義という思想を生み出す土壌にはこういったとても珍しく倫理的な規範が必要だったのです。

 

マックスウェーバーのこの鋭い視点は保守も革新も上も下も資本主義社会に生きるすべての人が一度知っておいてもよい分析だと思っています。