円の数学 小林昭七著
読後の感想

本書は高校生3年生、社会人向けに書かれた数学書である。

円の性質や有名問題を題材に現代数学の思考や代数学の問題への適用例が学べる。古代ギリシア数学の奥深さも感じられる内容になっている。

第一章
ユークリッドの原論の解説
なるべく少ない公理、要請を前提に大量の命題を証明していく内容となっている。
ユークリッドの言論においては円は点や直線と同様にその存在が前提となっている。

第二章
円周率の正確な値を得るための歴史が具体的に解説されている。予備知識が少なくても読める。高校3年生なら楽しんで読める。
円周率を求めるアプローチは3つあって、実測、級数展開、連分数展開である。アルキメデスの凄みが知れる。また連分数近似に関しての解説が分かりやすい。

第三章
三大作図問題に対する代数学的な解答が解説されている。恐らく本書のハイライト。
三大作図問題は幾何学の問題であるが、代数学の問題に換言され、結局は体論とπの超越性を示すことによって、否定的に解決された。
私が本書を読んだのはπの超越性の証明を知りたかったからなのだが前提とする予備知識は少ないものの証明を追うのがかなりキツかった。
体論に関しても予備知識の無い読者に向けてとても具体的に解説されているが理解して読み通すのは難しいと思う。
e、πの超越性の証明が知りたい人にはお勧めであるが、軽い数学読み物として読もうとすると面食らうだろう。

第四章
等周問題の解説。こちらは純粋幾何学という印象。三章で力尽きたためあまりキチンと理解できてないが、円=面積でかい。位の認識は持てた。

全体的にしっかりした数学書の内容で、数学読み物ではない。具体的な問題が題材なので、数学書を読むときにありがちな今なんの話をしてるんだっけ?状態にはなりにくい。だが決して簡単な訳ではなく、特に三章はかなり読み応えがある。

円周率を求める際に√3が出てくるのだが、アルキメデスは連分数による近似を利用して計算している。近似するにしても連分数による高精度の近似をするのだ。