2020年5月下旬に武蔵野中央病院で新型コロナウイルスの院内感染が発生し、意外な事実に注目が集まった。武蔵野中央病院は精神科の病院だったのだが、精神病患者の入院歴が異様に長いのだ。1年2年ではなく30年~50年の入院歴の患者が非常に多いのだ。50年というと人生の大半を精神病院で過ごしていることになる。しかしこれは精神病院に入院している精神病患者には決して珍しいことではないのだ。精神病患者の入院歴がこれほど長期化する最大の原因は端的に言えば社会に精神病患者をみたくない・接したくないという差別意識があるからだということらしい。

 

実は精神病患者の入院歴の長期化が問題視されるきっかけになった事例が既にあった。福島原発事故の際にも起きていた。福島原発事故の影響で周辺の病院の患者は避難を余儀なくされた。精神病患者が別の病院に転院する際にその入院歴の異様な長さが明るみになり多数の患者が精神病院を退院することができた。これらの患者には原発事故のおかげで俺は精神病院を退院できたと証言する人もいた。

 

無理をしすぎた結果過労性疾患(頚肩腕症候群)を発症し、その後数年かけて寛解した今、強く思うことがある。それは統合失調症やうつ病の患者は最初からそうだったわけではなく、かつては普通の人生を送っていた普通の人々だったという点だ。それが病の恐ろしい点であり、健常者が他人事のように病人を煙たがったり安易な同情をしている場合ではないと思う最大の理由だ。

 

ごく普通の青年が痴情のもつれから脳に異常をきたし、脳の異常から姿勢や骨格まで変形してしまうことがある。

普通の主婦が配偶者の浮気などをきっかけに統合失調症を発症することがある。

ごく普通のエンジニアが緑内障になり正常な視覚を失ってしまう事がある。

 

正直なところ新型コロナウイルスが怖くない。致死率が小さいからだ。

手洗いやマスクはするがコロナへの心配というより同調圧力に屈しているところが大きい。

3年近く病で苦しんだ自分ですら感染症に関しての意識は他人事なのだ。それが怖いとも思う。

 

病は他人事ではない。それがコロナウイルスから真に学び取るべきことではないだろうかと思った。

 

逆に言うと健常者が重い病気にかかることなく健康の大切さを真剣に悟ることができ、病を未然に防ぐことにつながったならそれは1億円とかいった俗化された資産を遥かに凌ぐ無形資産となって、その人の人生を豊かにしてくれるだろう。