誤解しやすい機械用語に溶射というものがあります。溶接と間違いやすく、確かに似ているといえば似ているのですが、違うものです。

機械品の設計にあたり大抵使用される材料は鋼(SS400)です。しかしながら製品の一部分だけ、SS400以上の強度持たせたたかったり、摩耗に強くしたかったり、腐食に強くしたいときがあります。

よくあるのが、軸受けを据え付ける面の強度を上げるために、据え付け面の表面だけを強い材質にしたいというような例です。

全体を強い材質にはしたくなくて、ほぼSS400で作りたいんだけど、据え付け面の表面だけ摩耗に強い材質にしたいなーとか思うことがあるわけですね。

 

そんな時にしようするのが、溶射です。強化したい部分に高温の金属を噴射して、製品の表面に被膜を作ることで、その部分の強度だけ強くしたりできるのです。噴射する金属は持たせたい性質によって異なります。具体的な内容は溶射工学(著:蓮井 淳)がとても詳しいです。

 

また、設計・加工を誤って、必要より、細く削りすぎた軸やロールなどの円筒部品を溶射によって太くして、再び必要な大きさに削りなおすなどという用途にも使われますね。

 

金属同士を一体化させる溶接と確かに似ていますが、溶射はくっつけるというよりも、局所的に希望の性質を持たせるということが最大の目的なのです。また、溶射の場合は専用の装置で、狙った表面に適切な金属を吹き付けるので、ずっと大がかりで敷居も価格も高いのです。

 

ここでは金属に金属を溶射させることだけ触れていますが、実際はプラスチック・木材・紙などにたいする溶射もあるようです。

 

溶射技術は日本のメーカーがいまだトップクラスなので、海外に外注がしにくく、非常に高くつきます。軽々しく使いづらい格好ほうなんですね。

 

溶射とは製品の局所的な表面に対して、様々な性質を持たせるための加工技術だと理解しておけばいいと思います。