思い出したように機械の話をまとめていきます。

 

一般的な工業高校、高専、大学の機械科に入学すると必修科目として、材料力学を学ぶことになります。

 

いわゆる機械四力学のなかでも最も重要で実務的な科目となっています。実務で使う材料力学についてまとめていきます。

 

学びに主眼をおく学生にとっては、はりのたわみ計算を行うのが種になりますが、実務的には、はりのたわみ計算は、公式に数値を代入する作業が主になります。

 

代表的なはりのせん断力、曲げモーメント、たわみ量算出の公式

 

こんな公式が既にまとまっているので、状況に合わせて公式を選んで、あとは数値をエクセルに入力するだけで計算できてしまうのです。

 

学生にとってはこの公式を自力で導くことが主目的になるため、あまりこの公式を活用するという意識が生まれにくいと思います。ですが、実際の機械設計ではたわみというものは一から自分で計算式を導くのではなく、既に先人たちが計算した多様な公式のどれを適用することができるのか考えることが重要になるのです。

現場の設計者にとってたわみの計算式は導くものではなく使うものです。

 

さて、たわみについては上記のような体系的な公式があるため、とっつきやすいものです。

ですが、強度計算の際にはたわみだけ計算すればいいということでもありません。

 

実はたわみの式は材料が破断してします可能性を無視しています。

そのため荷重やヤング率などの数値を代入してたわみが得られたとしても、そのたわみが生じる前に材料が破断してしまう可能背がないか検討しておかなければならないのです。

現行の教育ではこの意識が薄いです。

 

さて、材料の破断の可能性の検討の方法ですが、簡単といえば簡単です。

はりの内部に発生している応力が、はりの材料の許容応力を上回っていないか確かめればよいのです。

 

数式で表現すると以下です。

 

σ(せん断許容応力) > σmax(はりに発生している最大の応力)=Mmax/Z

 

Mmax:はりに発生している最大の曲げモーメント Z:断面係数

 

設計対象となるはりが上記の不等式を満たしていればよいのです。ここで問題となってくるのはσ(せん断許容応力)のほうです。

 

せん断許容応力とはせん断方向の力に対する材料の耐えられ力の値で、物質によって違ってきます。

鋼なのか鋳鉄なのかアルミなのか物質によって違うのです。

この値は便覧などを参照します。(具体的な物性表などは次回まとめます。)

 

例えば、鋳鉄の場合は50(N/mm^2)です。

 

一般にあまり知られていませんが、このせん許容応力は経験的に求められた実験値です。

引張試験の結果から理論的にせん断応力を定める強力な理論は実はいまだ確立していません。

 

なので許容応力表は先人たちの膨大な実験から得られたとても貴重な表なのです。(具体的な表は次回提示します。)

 

はりのたわみだけに気をとらわれず、機械が折れたりしないかのかの検討も別に行わないといけないという話でした。