学生さん達が夏休みで
いつもほどは混んでいないはずの通勤電車
時刻改正があってから俺は
8:03中村橋駅の電車に乗り
練馬で快速に乗り換える
そうすれば8:30には出社できるし
大概の事では遅刻をしないで済む
それが出来るビジネスマンというものさ
満員電車なんて真剣勝負の前座でしかないのだから
どうと言う事ではない
いや、しかし
過去に何度となく襲ってきた
恐ろしい出来事・・・
ここはポジティブに発想を切り替えていこう
俺の目の前にいる俺と同じくらいの・・
背の高い
黒髪にポニーテールの
素敵なレディ
いやな予感がする
こんな日の俺は直感が冴え渡る
練馬に着いた
このレディとは離れて隣のドアへ行こう
直感へのせめてもの予防策だ
またしても駅員さんのタックル
強烈な電車内となってくる
おいおい今日は混んでるなぁ~
このオヤジ!
動くんじゃねぇ~!
あぁ~体が開いていくぅ~
動けない~
俺は
鞄を持ったままの右手を
右斜め後方へ持っていかれた
左手は別のオヤジに引っ張られ
左後方へ
足はハの字に開かれたまま
それはまるで・・・
ひっくり返ったカエルじゃねぇか~~!
そうか俺はカエルだったのか(涙
まぁ仕方ないさ
こんな事で動揺するような俺じゃない
が!
あれ、
なぜ?
why?
俺の目の前で
向かい合っているのは
さっきの大きなレディじゃないか!
彼女も俺と同じように
というか俺に釣られたのか?
俺は訳もわからず目の前のレディに
激しく動揺した
大きな人だから
思いっきり目の前に彼女の顔
目が合った
俺はまな板の上の鯉
なす術がない
揺れる度に近づく唇
唇まで20cm
これって考えようによっては
いい~~シチュエーション?(笑)
そんな時
誰かが呟いた
「やっちまったなぁ~」
恐らくは誰かの独り言なんだと思うけど
この状況下で
このタイミング
昔のギャグが思い出されて
俺は壺った!
こみ上げる笑いを
俺は必死に耐えた!
ぷっ
ぷぷっ
彼女と目が合う
ヤバイと思いながらも
その目を見たまま
また噴出しそうになる
おもわず俯く彼女
頭がゴツンと当たった
堪えようとする度に
ヤマビコの様に聞こえてくる
「やっちまったなぁ~」
「やっちまったなぁ~」
「やっちまったなぁ~」
電車が揺れ
カエル状態の俺に彼女が抱かれる様に
もたれかかって来る
俺はひたすら耐えた
まな板の上の鯉状態の俺は
別の意味でも耐えた
彼女が気まずそうに顔を上げてくる
そうだ深呼吸だ!
冷静に対処しろ!
心の声が呟く
のら、君なら大丈夫だろ?
このくらいの壺に耐えられない訳がないだろ?
更に心の声はエスカレート
さあ、お前の力を見せてくれ~
また昔のギャグが・・・
い~ょ~!
………
彼女が顔を上げ
俺を見た
ぶっ!
どうしても耐えられずに
俺は彼女の顔に噴いた
あっ!
………
お互い体が動かせないから
彼女も呆然としたまま
俺を見つめた
俺は小声で詫びた
す、すいま…
「やっちまったなぁ~」
ぷぷっ
………
最悪
彼女の目が大きく見開かれて
信じられな~い
とばかりに俺を凝視した
かなり気まずい
俺は
普段のビジネスでも考えられないくらい
かなり激しく動揺した
心の声は俺に悪いと思ったのか
どこかへ消し飛んでいた
俺は呟くような声で
口を動かした
「すいませんでした」
彼女に何とか伝わってほしかった
彼女は何故か一瞬
戸惑っているかの様な表情をした
ガタンッ
電車が大きく揺れた
バランスを崩した彼女は片足を前に出した
ぐほっ!
俺の股間直撃!
(この辛さは男じゃないと解んねーだろうなぁ)
そのまま彼女の体が密着する
恐らくはヒール分考慮したら170cm近い身長だろう
超密着状態の俺達
このまま俺が左を向いたら
頬が触れてしまう状態だ
ぐぅぅ
せめて体の向きだけでも動かせれば良いのだが
俺の両手はオヤジ達に持っていかれた状態だし・・・
俺は益々気まずくなった
ところが何を血迷ったのか
彼女に異変が起きた
両手で胸元に持っていたバックの左手を
俺の右胸の上辺りへ這わせてきた
電車が落ち着いてからも
彼女の足は
俺に絡んだままモゾモゾ
俺の息子は激しく動揺し出した
こ、これはまるで
恋人同士が抱き合っているようじゃまいか?
激しく動揺した俺に追い討ちをかけるような
意味深な行動
俺の左耳に吐息が聞こえる
吐息が首にかかる
というか俺は首が極端に弱い(爆)
お願い、そこやめて~
あぁぁ~~~
落ちてゆくぅ~
という事は・・・
彼女はこっちを向いているのか!
ハァハァ
ハァハァ
このまま官能小説モードに入っちゃいそう(笑)
いつものパターンで
俺はそっと左へ顔を向けてみようか考えた
その時に起こりえるであろう内容を妄想し
なんか緊張する
ドキドキドキ
ん?
これは俺か?
いやいや
密着した彼女の胸の鼓動が
早まっているじゃないか~~~!
さすがの俺も
気まずさ一転
息子が反応しそうで
もっと気まずくなった
3,2,1・・・
立っていいですか?
ええ思いっきりどうぞ
「きたぁぁぁぁぁ~~~」
※織田裕二 調
おりゃぁ~!
ガバッ!
ぎゅぅぅ!
ぶちゅ!ぶちゅ!
レロレロレロ!
※激しく妄想中
ピーーー
※妄想内容が激しすぎて18禁になりました。
「池袋~終点池袋~5番線到着~左側のドアから先に開きま~す」
はっ!
俺は現実世界に戻った
ぷしゅ~
そしていつもの様に
電車から吐き出される人、人、人
何事も無かったかのように離れてゆく
彼女と俺
さぁ気持ちを切り替えて
ビジネスという戦いのフィールドへ戻ろう!
「あの~」
歩き出した俺は
突然声を掛けられて足を止めた
背の高いスリムでポニーテールの
先程抱き合ったばかりの彼女だった
人の群れの中で時間が止まった二人
先程は至近距離過ぎて分からなかったが
(というかお化粧のノリが良くなかったが・・)
どちらかというと和風で笑顔の綺麗な
俺好みのレディじゃないか・・・
※ラブロマンスへ進化しました。
先程はすいませんでした!
彼女の顔に噴き出した事を思い出し
俺はすかさず謝罪した
「いえ、いいですよ」
「私も突然の事で驚いてしまって・・・」
・・・・・
「電車の中であんな告白されたのは初めてでした」
えっ?
「よくお見かけしてしていましたので」
は?
「でも、いきなりでしたから・・・」
はぁ?
「今日は仕事ですから、また改めてで・・・」
なんとなく女の顔になっている彼女
「好きでしたって呟かれた時は正直ドキドキしました」
・・・・・
・・・・・
・・・・・!
あの、
別の事で壷にハマっちゃって・・・
お顔へ噴き出してしまったので・・・
本当に「すいませんでした」って・・・
何とか伝えたかったものですから・・・
・・・・・
あっ!
すいませんでした・・
好きでした・・・
・・・・・
沢山の薔薇に囲まれていた二人の周りが
人の群れに戻った
・・・・・
重い
重すぎる
この空気・・・
「そ、それじゃまたご縁がありましたらぁ~」
顔を真っ赤にした彼女は
そう言って駆け足で去っていった
あぁ~~~~~!
俺は馬鹿だ!
この正直な性格何とかしとくれ~
薔薇は薔薇は~
気高く咲いて~
薔薇は薔薇は~
美しく~散る~~
オスカ~~~~ル!!!!!
※ベルサイユの薔薇エンディングソングより
サンシャイン通りを射した日差しが
妙に眩しく感じられた
また顔合わせたら
どんなリアクションすればいいかな?
そんな事を考えながらも
頭の中のスイッチはビジネスモードへ切り替わっていく
そしてかすかに残る
股間の痛みを感じながら
俺は戦いのフィールドへ歩き出していた