年も暮れようとしています。ブログ閲覧およびツイッターのフォローありがとうございます。今回は久しぶりのダナハーの技術論です。(個人的興味の偏りでダナハーの家族やデススクワットの崩壊、変な動画ばかり取り上げてしまっていました。)以下は「柔術という格闘技が何を目指しているのか」、といういわば根源的問いに対するダナハーの考察です。

 

原文

Clarity of purpose: I truly believe that one of the great reasons why classical Brazilian Jiu Jitsu is so successful as a martial art is it’s incredibly simple and clear basic directive. You can explain it to a total neophyte in two minutes and it’ll make intuitive sense to him. In fact it’s so clear that I believe if you took two completely untrained people with no fighting experience of similar size and strength and explained the basic directive of Jiu jitsu to one of them but not the other, the one who had been taught that basic directive would have a considerably higher chance of victory if they fought each other, not because he has gained any skill - he hasn’t - but just because he now has an effective and proven SENSE OF DIRECTION while the other only has his instincts. When one person has a sense of direction and purpose in a crises and the other doesn’t - I’ll put my money on the fellow with a sense of direction and purpose every time. What is this basic directive of Jiu jitsu? It can be stated in a single sentence. WORK YOUR WAY TO THE MOUNTED POSITION OR REAR MOUNTED POSITION AND FINISH YOUR OPPONENT. It doesn’t matter whether it’s grappling or fighting. If you follow that simple directive and have the skills to do it against the resistance of your opponent - you’ll be a very difficult challenge indeed. Remember always that every rule, point allocation, recommendation, technique and tactic of Jiu jitsu Bia just a means to satisfying this basic directive. Never lose sight of its clarity and you’ll always know what to do and how to train and prepare. 

 

 

和訳

目的の明快さ:私は古典的なブラジリアン柔術が格闘技として大成した大きな理由の一つは、その基本的方針の驚くべき簡潔さ、明快さであると真に信じています。あなたはその方針を完全な初心者に対して2分で説明できるでしょうし、そしてその方針は直感的に理解されるでしょう。実際に、もし全く同じサイズ、力でファイティングの経験がない全くのトレーニング未経験者二人がいたとして、一方だけに柔術の基本的方針を説明して戦わせた場合-技術の有無ではなく-相手は自分の本能だけしか有していないのに対して、方針を教わった方はその時には効果的で証明された方針の感覚を有しているため-基本的方針を教わった方が確実に勝利への確率が高いだろうと信じていることはとても明快です。もしある人が方針の感覚と危機に際しての目的を有しており、もう一方の人が有していないのなら、私は方針と目的の感覚を有している方に毎回お金を賭けるでしょう。柔術の基本的指針とは何でしょうか?それはこのような一説から始まるでしょう。マウントポジションないしはリアマウントポジションに向かって動き、そして相手をフィニッシュせよ。グラップリングであるか、ファイティングであるかは関係ありません。もしあなたがこの簡潔な指針に従い、あなたの相手の抵抗に対してそれを行うための技術をもっていたなら—あなたは非常に困難な挑戦者となるでしょう。ルール、ポイント振り分け、勧告、柔術のテクニックと戦術すべてはただ、この基本的指針を満たすためのものであるということを覚えていて下さい。これらの明快さを決して見失わないでください。そうすればあなたは何をすべきか、そしてどのようにトレーニングし、準備すべきかをつねに知ることができるでしょう。 



感想

僭越ながら橋下選手のダナハー評がとても核心を突いていると感じましたので引用させていただきます。

 

 

ダナハーの柔術は非常に「王道」的だと思います。

ダナハーの代表的技術体系の一つである足関節などは当時の柔術のセオリーからは大きく外れたものでしたし、このような意見には違和感を感じられるかもしれません。

しかしながらダナハーの教則などを見ての感想なのですが、ダナハーの教えは柔術のセオリーといいますか、柔術の力学に対して非常に忠実な印象を受けます。(この柔術の力学のようなものを抽出する能力が卓越しているのもダナハーのダナハーたる所以であると感じます。)


足関節に対する対処やカウンターが一般化されてきた現在において、一周回って上半身のサブミッションが見直されている現状があります。

そのような現代グラップリングにおいてダナハーらが未だにグラップリング界隈のトップであり続けているのは、ダナハーが従来の柔術に対して正確で的確な理解があったからであろう、と今回の投稿を読んで深く感じました。